01. 2014年7月24日 19:45:01
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焦点:輸出不振の出口見えず、政府・日銀見通しに狂いも 2014年 07月 24日 17:57 JST http://jp.reuters.com/news/pictures/articleslideshow?articleId=JPKBN0FT0VV20140724&channelName=topNews#a=1 1 of 1[Full Size] [東京 24日 ロイター] - 大方の予想に反して輸出不振が継続している。24日発表の7月貿易統計では「頼みの綱」と期待されていた米国向け輸出が2カ月連続で減少。最大の輸出品目である自動車が、海外生産移管の影響もあって、大幅な減少となっているのが響いた。政府・日銀は4─6月の消費増税に関する反動減は想定内とみているが、輸出の不振が継続するようなら7月以降の景気見通しに狂いが生じる恐れも出てきた。 <裏切られた輸出回復見込み> 6月は円安や米国景気回復を背景に輸出は持ち直すだろう──。民間エコノミストのこうしたシナリオは大きく崩れている。輸出金額は5月に続き6月も前年を下回った。 アジア向けは、米国向けもともに2カ月連続で減少し、輸出停滞の要因となった。輸出数量を示す実質輸出(日銀発表)でみると、4─6月は前期比1.1%減と回復どころか一段と減少している。 輸出金額でみると、アジア向けは、各国景気の動向とほぼ連動しており、想定されていた動きとも言える。 中国向け輸出は同国の景気減速に歯止めがかかり、前年比1.5%増とプラス幅は5月からは若干拡大した。それでも昨年までの2桁増には遠く及ばない。 アジア全体ではASEAN地域の景気が依然としてさえないことから、前年比2カ月連続の減少。タイでの政治・経済の混乱が、自動車部品や電気機器の輸出に影を落としている。 <影響出始めたメキシコ工場の本格稼働> 一方で、米国向けは、2カ月連続で減少した。米景気自体は第1・四半期の寒波の影響が去り、失業率も低下。回復基調を強めているが、日本からの輸出は最大の輸出品目である自動車が、はっきりと減少している。 米国の自動車市場自体は、6月に8年ぶりの高水準を記録し、好調さが目立つ。日本車もアナリスト予想を上回る売れ行きだ。 しかし、日本からの米国向け自動車輸出は、台数ベースで今年に入り減少傾向が続いており、6月も7.5%減少した。 背景にあると思われるのがホンダ(7267.T: 株価, ニュース, レポート)、マツダ(7261.T: 株価, ニュース, レポート)などのメキシコ工場稼だ。今年初めから北米向けを含めて輸出拠点となっている。「米国内の自動車販売は好調だが、日本企業は現地生産の拡大によって対応しているため、日本からの輸出につながっていない」 (ニッセイ基礎研経済調査室長・斉藤太郎氏)というわけだ。 国内の輸送機械の生産能力指数は、2010年を100としてほぼこれまで安定してきたが、今年1月から突然5%程度削減されている。メキシコなどへの海外生産移管が本格化していることから、もはや国内生産の回復は難しいとの見方も、エコノミストの一部から出ている。 一方で「米国景気の回復ペースの加速、円安の継続が後押しし、日本の輸出は増加基調を取り戻す」(野村証券)との予想も出ている。 ただ、輸出全体の4割を占める自動車関連輸出の減少傾向は、今後の大きな不安要因となりそうだ。 <6月日銀会合で生産移管の影響議論> 日銀は、4月展望リポートで輸出について「駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先する動きや、米国の寒波などの一時的な下押し要因がはく落するもとで、先進国の成長率が高まっていくことから、緩やかながらも増加に転じていくとみられる」と予想していた。だが、7月貿易統計の結果からは、輸出増勢の兆しはうかがえない。 黒田東彦総裁は7月の会見で「輸出の回復が若干後ずれしている」と発言。その理由としてアジア諸国の回復の遅れに加えて、生産移管にもついても言及した。 また、6月金融政策決定会合議事要旨では「わが国企業の競争力低下や海外への生産拠点の移管などの構造的な要因が、思った以上に影響している」との指摘が出ていたことが明らかになり、日銀内で海外生産移管などの要因が予想外に大きかったとの受け止めがあった点がうかがわれる。 輸出の停滞は、生産の停滞にもつながりかねない。消費増税の反動減の影響で、4─6月期の輸入が前期比で減少し、外需寄与度はプラスになるとみられていたが、予想を超える輸出の停滞は、そのプラス幅を圧縮させかねない。 そのことは、公共工事の前倒しと外需の回復で、国内経済活動の落ち込みをある程度緩和させようとしていた政府・日銀のシナリオに狂いを生じさせるリスクになりえる。 <7─9月が正念場> 問題は7─9月の動向だ。日本経済の回復力が試される時でもある。政府にとって、10%への消費税引き上げに向けて、経済状況を見極める時期となる。 日銀にとっても、増税を乗り越えて2%物価目標に向け、いったん伸び率が低下した物価上昇の勢いを取り戻せるかどうかという場面になる。 内需は反動減からの消費の反発力や、設備投資の回復などに期待が集まるが、その前提となる企業活動の高まりには、やはり輸出の回復が不可欠だとの声が、民間エコノミストの中では多い。 他方で「消費増税による悪影響を受ける中で、輸出停滞はやはり気がかりであるが、今後は増加に向かうと予想する」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)との見方もある。 米経済は着実に持ち直しが続き、中国経済も政府による小型景気対策の効果もあって成長鈍化にひとまず歯止めがかかっているとの見通しが、背景にある。 そうした回復シナリオの実現には、海外移管に伴う自動車輸出動向に加え、ASEAN向け輸出の行方がカギを握りそうだ。 中曽宏・日銀副総裁も23日の講演で「やや気になるのはアジアを中心とする新興国経済」だと指摘している。「NIES、ASEANでは、当面、成長に勢いを欠く状態が続く」との見立てを示した上で、「(これらの地域は)日本の輸出に占めるウエートが高いうえ、本邦企業の生産拠点も数多く存在しているため、先行きの景気展開については、国際金融資本市場の動向と合わせ注意深くみていきたい」と慎重な見方を示している。 もっとも、中曽副総裁が輸出の先行きについて「緩やかに増加していくとみて良い」と述べたように、現時点では先行きの輸出回復シナリオまで修正を迫られる可能性は低い。輸出が低迷している中でも国内設備投資は増加しており、内需中心の景気回復が続く中で、輸出回復に与えられた時間的余裕は確保されているともいえる。 ただ、日銀が描くシナリオの前提には、輸出が先行き回復に向かうことも組み込まれている。ウクライナやパレスチナの情勢といった地政学リスクが世界の貿易に与える影響など海外経済の先行きにも不透明感が強まりつつある。 輸出の先行きをどうみるか──。今後の金融政策決定会合などで議論の大きな焦点となることは確実で、輸出動向が先行きの金融政策運営を左右しかねない材料となりそうだ。 (中川泉 取材協力・伊藤純夫 編集:田巻一彦)
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