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なぜ近年、税収上振れ続く? 18年度以降には解消の公算 険しい20年度PB黒字化
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140724-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 7月24日(木)3時0分配信
近年、国の税収が上振れしている。当初予算との対比でみれば、2010〜13年度にかけて4年連続で上振れしており、平均上振れ額は2.5兆円にも上る。また、補正後予算との対比では09〜13年度にかけて5年連続で上振れしており、平均上振れ額は1.5兆円となっている。要因を探るべく、税収の項目ごとにそれぞれ上振れ額を計算してみると、法人税収が当初予算との対比では平均1.8兆円、補正後予算との対比では平均1.0兆円それぞれ上振れしていることがわかる。つまり、当初予算との対比では73%、補正後予算との対比では68%、法人税の税収上振れ分で説明できることになる。
確かに、10年度は名目GDP成長率も当初予算時点での見通し+0.4%から実績は+1.3%となったため、税収の上振れもうなずける。しかし、同年度の税収を見ると、当初予算時点で前年比▲3.5%だったのが、補正後予算で同+2.3%に上方修正されている。そして決算時点に至っては同+7.1%にまで上振れしている。
特に11、12年度のケースには多くの示唆がある。注目すべきは、両年度とも名目GDPはマイナス成長となっているが、税収はむしろ増加していることである。一般的に、税収弾性値は1.1とされていることからすると、少なくとも近年の税収は名目成長率以外の要因で増加してきたことになる。
これに対して、繰越欠損金 【編註:決算が赤字(=欠損金発生)となった場合、翌期以降の黒字(=課税所得)と相殺できる税務上のルール】の減少に伴う欠損法人割合の低下により、課税ベースが拡大したという指摘がある。実際、欠損法人割合は09年度にピークとなっており、10年度以降低下に転じている。しかし、欠損法人割合が明確に低下したのは12年度であり、11年度の税収の増加は欠損法人割合の低下のみでは説明できない状況にある。
背景には、繰越欠損金が残っていても欠損法人ではない企業もあり、欠損法人割合の低下だけでは説明できない税収の増加分がある。日本では最大9年の赤字繰越が可能な中、繰越期限を迎える企業が増えることで、欠損法人割合が低下しなくても税収が増えてきた。しかし、欠損法人割合の低下や繰越欠損金の減少にも限度がある。従って、足元で税収が上振れしているからといって、今後も税収の上振れが永遠に実現するとは言い切れない。
だからこそ、欠損法人割合や繰越欠損金がどの水準まで低下や減少することが可能かを知ることが重要となる。実際、欠損法人割合や繰越欠損金の時系列データを見ると、名目成長率と密接な関係にあることがわかる。そこで、今後の日本の潜在成長率を2%程度と仮定して欠損法人割合と繰越欠損金の理論的な水準を計算すると、欠損法人割合と繰越欠損金の理論的な水準がそれぞれ62%、52兆円程度になる。
以上を踏まえて、実際に欠損法人割合の低下に加えて、理論値からの上振れ分も含めて税収がどう変化するかを試算した。具体的には、12年度の欠損法人割合低下幅(▲2.0%)が欠損法人割合の理論的な水準に到達するまで続くとして、名目成長率が2%の場合の税収を試算した。結果は、名目2%成長であれば16〜17年度まで税収の上振れが期待できるという結果になる。
●20年度時点でもプライマリーバランス赤字か
一方、15年10月の消費税率10%への引き上げを前提とすると、国の税収は14年4.1兆円、2015年度8.2兆円、2016年度以降10.6兆円程度増加することになり、あくまで内閣府「中長期の経済財政に関する試算」をベンチマークとした試算であるが、20年時点でのプライマリーバランスの赤字幅は、平均名目2%成長を達成できれば20年度のプライマリーバランス赤字幅が6.2兆円まで縮小するという結果になり、14年度以降名目3%以上の成長率が前提となっている「経済再生ケース」の同11.9兆円を上回ることになる。
以上をまとめると、名目成長率の水準次第で目先1〜3年程度は欠損法人割合の低下が進むため、税収が上振れする可能性が高く、名目2%成長を実現できれば、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」の経済再生ケースを上回るプライマリーバランスの改善が期待できる。しかし、欠損法人割合が理論値まで到達する2〜4年後以降は、税収の上振れは期待できなくなり、名目2%成長の前提を置いた場合でも、20年度時点のプライマリーバランスは6.2兆円の赤字となる。
一方、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」によれば、基礎的財政収支対象経費は12年度の76.1兆円から20年度には経済再生ケースで84.0兆円、参考ケースでも81.5兆円となっている。あくまで推測だが、歳出拡大の最大の要因は社会保障費の膨張と考えられる。従って、20年度にプライマリーバランス黒字転換を達成するには、さらなる社会保障費の効率化で達成することが望ましいだろう。
永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト
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