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サムスン電子の連結業績
大前研一:「サムスン帝国」の行方、中国家電大手の曲がり角
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140723-00000001-fukkou-bus_all#!bj212p
nikkei BPnet 7月23日(水)8時15分配信
スマートフォンで絶好調だった韓国サムスン電子の業績が振るわない。その一方で、急成長を続け、サムスン電子を脅かす存在になってきた中国家電大手も曲がり角を迎えているようだ。
■スマホの低価格化などで9年ぶりの減収減益
サムスン電子が7月8日に発表した2014年4〜6月期の連結決算は、営業利益が7兆2000億ウォン(約7200億円)と前年同月比24%減少した。売り上げも減少し、9年ぶりの減収減益となった。
主力のスマホで先端部品の調達が滞り、競争力が低下したことや、需要が中低価格機にシフトする市場構造の変化などが影響したと見られる。
サムスン電子は李健煕(イ・ゴンヒ)会長によって大きく成長してきた企業だ。しかし5月10日に病に倒れて以来、李会長は完全には回復できていない。
そんな中、サムスン電子の業績は悪化している。まず、「サムスン電子の連結業績」をご覧いただきたい。
近年は右肩上がりの成長を続けてきたサムスン電子だが、最近になって利益の減少が目立つ。
■“快進撃”も一皮むけばかなり危うい事業構造
さらにセグメント別に見ていくと、サムスン電子が抱えている構造問題が明らかとなる。
「サムスンのセグメント別営業損益の推移」をご覧いただきたい。
現在のサムスン電子は、利益の大半がIT・モバイル機器、すなわちスマホによって占められている。サムスン電子といえども、家電製品ではほとんど利益を出せていない。
IT・モバイル機器に次いで稼いでいる半導体は、外販もしているが自社製スマホの部品としても使われているものがあり、この分野でもスマホ依存が強まっている。
表面上は絶好調に見えたサムスン電子だが、実態はスマホに頼り切った事業構造だった。本業である家電製品では稼ぎを生み出せない。日本の家電メーカーも低迷していたが、実はサムスン電子もまた家電とディスプレイでは利益を出せていない。スマホを除けば日本勢とあまり変わらない収益構造になっていたわけである。
その点、日本勢はPCやスマホでは敗退したが、住宅関連や自動車部品などで手堅く稼げる状態になっている。サムスン電子はそうした事業構築ができていないので“ポスト・スマホ”の目玉を見つける作業は「これから」ということになるだろう。
年間利益を2兆円以上出していた、という“快進撃”も一皮むけばかなり危ういものだったと言える。
■「アラブの春」に類似した「サムスンの春」の可能性も
今、世界的にスマホの需要は中低価格機にシフトしており、100ドルのスマホが中心になってきた。「100ドル・スマホ」時代に、サムスン電子がコスト競争力を失うのは必然と言える。現在、「100ドル・スマホ」を牽引しているのは、台湾のメディアテックに設計と半導体の製造までを委託し、中国で組み立てている低コストメーカーだ。
いろいろと綻びが出てきた時期に、ちょうど李会長が倒れてしまった。ただ、司令塔を失ったとはいえ、「サムスン帝国」は強大であり、そう簡単には傾かないだろう。
しかし、独裁者が去った「アラブの春」でその後の再建がうまくいっていない状況と類似した「サムスンの春」、となる可能性はある。李会長による“独裁体制”が崩壊したとき、サムスン電子は群雄割拠になってしまうかもしれない。
とくに、李会長の後継者となるであろう李在鎔(イ・ジェヨン)副会長(李会長の長男)が、収益悪化を理由に役員たちの高額な報酬にメスを入れるようなことがあれば、サムスン電子を去る幹部が次々に出てくるだろう。彼らは世界中で李会長のもとで輝かしい業績を上げてきた強者だけに、後継者が少しでも縛りを強めるなら、引退するか他社に移籍してしまうだろう。そうなれば、サムスン電子の快進撃は止まらざるを得ない。
また、サムスン電子は時価総額ベースで韓国の国内総生産(GDP)の20%に匹敵する大きさなだけに、その混乱は韓国経済にも大きな影響を及ぼすことになる。
他方、優秀な人材が流出することは長期的に見れば悪いことではない、という見方も成り立つ。フィンランド経済の最大の支柱であったノキアが衰退して新興企業などに優秀な人材が数多く転籍して、ヘルシンキは今ちょっとしたハイテク企業ブームとなっている。権威主義的な韓国の経済・社会事情を考えると、サムスン電子の場合にはそこまでの「正の循環」は期待できないのかもしれない。
■人件費の高騰などで中国の国内市場に陰り
一方、韓国メーカーを脅かす存在となってきた中国メーカーも、曲がり角を迎えているようだ。
7月12付の日本経済新聞は「中国家電ブレーキ」と題する記事を掲載した。中国の今年のテレビ販売が5年ぶりにマイナスに転じる見通しを紹介。大手の創維数碼控股(スカイワース)とTCL集団の1〜6月の販売台数が前年割れしたほか、海爾集団(ハイアール)もリストラに追われている。背景には、中国の住宅販売の低迷や人件費の高騰などにより、メーカー各社がインドなどにシフトしていることがあると指摘している。
インドが家電生産で中国を置き換えるレベルにまで達した、ということは今のところないので、中国国内の市場の陰りが直接影響しているものと解釈すべきだろう。
中国で人件費が高騰したのは、労働者の共感を得ようと焦っている共産党が強制的に賃上げを各社に要請しているからだ。生産性の向上や労働者の質の評価で賃金を決めていく、という資本主義社会では当たり前のプロセスをここ5年くらい認めていない。
一方的に「最低でも15%くらい上げろ!」と市当局が通達してくる。多くの企業はそうした共産党のやり方に辟易としているが、撤退コストやレイオフなどの費用も高騰しており、企業は前にも後ろにも進めないで困惑している。中国政府は「雇用が競争の結果もたらされる」という基本を理解していないので、民衆の人気取り政策をこのまま続けると思われる。
■中国企業もやがて工場を海外へ移転せざるを得ない
そうなれば、外資だけではなく中国企業も海外に工場を移さざるを得なくなるだろう。今のところ相対的に賃金が安い内陸部に移ったりしているが、やがて日本企業のように東南アジア、バングラデシュなどに移転せざるを得なくなるだろう。
100万人を雇用して中国最大のメーカーとなった台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業(フォックスコンが中国に生産拠点を展開)は広東省の深圳から四川省の成都に主力工場を移しているが、それでは間に合わない、ということでロボットへの切り替えを急いでいる。この状況が続けば、やがて中国から工場が次々に撤退するようになるだろう。
工場撤退で雇用が減れば、当然、消費も低迷する。家電製品が売れなくなり、さらに国内生産が停滞するという悪循環に中国は今入りつつある。
日本でも、国内で家電製品が売れなくなるということを経験したが、そのときの日本メーカーは海外へ進出することで乗り切ってきた。しかし、中国はTCL集団が世界最大のテレビメーカー、ハイアールが世界最大の白物家電メーカーとされているが、売り上げの大半は中国国内の市場でしかない。
■中国メーカーの動向にも目を向けるべき
中国の国内市場にブレーキがかかった今、中国メーカーは海外進出の必要に迫られているが、海外での経験が足りないので変化に対応するにはまだ時間がかかりそうだ。
日本メーカーが貿易摩擦や円高で米国での生産を始めて軌道に乗るまでには10年間はかかっている。途中でうまくいかないで撤退したケースも数多い。韓国メーカーはウォン高と言われてもなかなか米国生産ができないで、今のところ中国に逃避している。欧米での生産展開は自動車でも家電でも事ほど左様に難しいのだ。
中国では不動産バブルの崩壊が懸念されているけれども、実需の低迷と中国メーカーの行方(たとえば日本市場にダンピングするなど)にも目を向けるべきだろう。
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