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アメリカ一極体制の戦後レジームへの反発からBRICS開発銀行を設立した習近平
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39914
2014年07月21日(月) 北京のランダム・ウォーカー 近藤 大介 現代ビジネス
全世界が熱狂したワールドカップが終わっても、中国のブラジル・フィーバーは終わらない。習近平主席が、ブラジルで開かれたBRICS(振興5ヵ国)首脳会談に出席したからだ。
今回の習近平主席の外遊は、7月15日と16日が、ブラジルのフォルタレザでのBRICS首脳会談及び中南米各国大統領との首脳会談。その後、17日から23日までが、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、キューバの4ヵ国訪問だ。その隠れた最大の目的は、「アメリカのお膝元で、アメリカにプレッシャーをかけること」である。
■「アジアの盟主」から「ラテンアメリカの盟主」へ?
習近平主席は7月16日、ブラジル国会で、以下のような講演を行った。
〈 いまから200年前に、初めて中国茶がブラジルに渡り、茶葉が植えられた。それらが実って、1873年のウイーン万博では、ブラジル産の茶葉が絶賛を浴びたのだ。
その後、1974年8月15日に、中国とブラジルは国交を結んだ。孔子は「四十にして惑わず」と述べたが、40年後のいまや、両国の関係は飛躍的に発展した。ブラジルは中国と戦略的パートナーシップを結んだ初めての発展途上国であり、初めてのラテンアメリカ国家だ。また、ブラジルにとって中国は5年連続で最大の貿易相手国であり、2013年の両国の貿易額は900億ドルを超えた。
中国とラテンアメリカの関係は古く、16世紀後半に、シルクと陶器を積んだ「中国船」が福建省や広東省からラテンアメリカに渡ったのが交流の始まりだ。その後、中国では1980年代に、ブラジルのテレビドラマ『女奴隷』が大ヒットし、主人公イサラの自由と愛を求めるドラマに、何億人の中国人が共感を覚えたことか。ブラジルにはすでにラテンアメリカ最大の7ヵ所の孔子学院、2ヵ所の孔子課堂が建っている。 〉
新華社通信の報道によれば、中国のラテンアメリカへの投資は年々増加していて、2013年末までに800億元を超え、中国の対外投資額の13%を占めるという。また、ラテンアメリカ最大のブラジル銀行は、上海にラテンアメリカの銀行として初めて支店を開いた。中国の輸入原油の2割、輸入大豆の6割は、ラテンアメリカから来ているという。
習近平主席は7月16日にブラジルで、エクアドルのカレイア大統領、ボリビアのモラレス大統領、チリのバチェレト大統領、コスタリカのソリス大統領、ペルーのウマラ大統領とも、個別に会談した。新華社が配信したそれぞれの国の大統領とのツーショット写真を見ると、習主席は、まるで「アジアの盟主」から「ラテンアメリカの盟主」に様変わりしたかのような貫禄だ。
■アメリカ主導の先進国グループへの反発
さて、BRICS首脳会談は、今年が6回目となった。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの国家元首が一堂に会したが、やはり目立ったのは中国の存在である。この5ヵ国で世界人口の42%、世界の貿易量の17%を占めるそうだが、経済力で言えば中国が残り4ヵ国の合計よりも上だからだ。世界企業500強のうち118社が含まれるが、そのほとんどが中国の国有企業だという。国有企業ということは、「習近平の意のままになる企業」ということだ。
また、2009年の1回目のサンクトペテルブルクの会合では、共同声明の項目が16にすぎなかったが、今回は72項目に達した。かなり長文の共同声明全文を読むと、「2015年は第2次世界大戦が終了して70周年」(第24項)などと明記していながら、アメリカ一極体制の象徴とも言われるIMF(国際通貨基金)に対しては、「改革の不十分さと遅さに失望した」と痛烈に批判している(第18項)。
その結果として、BRICS開発銀行を設立することにしたという(第11項、12項など)。設立に際して、各国が500億ドルずつの資本金を持つとのことである。また、1,000億ドルの外貨準備基金を集め、中国が410億ドル、ロシア、インド、ブラジルが180億ドル、南アフリカが50億ドルを出資するという。
中国にとって絶対条件だったのは、本部を上海に置くことだ。その代わり、初代の理事長はロシア人、会長はブラジル人、頭取はインド人が就任することになった(理事長、会長、頭取の違いはどこにあるのだろう?)。
この銀行設立は、かねてから中国の悲願だった。2008年のリーマンショック以降、中国は世界経済の主導権を握り、IMF改革を進めようとした。そして2009年5月には、朱民・元中国人民銀行総裁を、IMF副専務理事に送り込むことに成功した。
だが、IMFにおける先進国の牙城はいかんともしがたかった。そこでついに「第2のIMF」を目指してBRICS開発銀行の設立を決めたというわけだ。
もう一つの先進国の牙城である世界銀行に対しても、中国は昨年10月以降、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立構想をブチ上げ、アジアの20数ヵ国を巻き込もうとした。だが、アメリカの強硬な反発に遭って、いまだ設立に至っていない。この銀行も、世界銀行−アジア開発銀行(歴代総裁は日本人)というアメリカ主導の先進国グループへの反発に他ならない。
■中国経済は依然として先行き不透明
こうした動きを見ると、中国は日本の安倍政権の右傾化に対して、「戦後70年の国際秩序に挑戦するものだ」と喧しいが、実際に戦後レジームに挑戦しているのは、中国なのである。
1945年当時、アメリカがブレトンウッズ体制によって戦後レジームを構築することができたのは、アメリカ一国で世界のGDPの過半数を占めるという一国寡占状態にあったからに他ならない。いまの中国経済は、そうした能力を有しているのだろうか?
中国は確かに、世界第2位の経済大国には成長したが、1940年代、50年代のアメリカに較べれば、まだまだ心もとない。
7月16日に、国家統計局が、2014年上半期の主要経済統計を発表した。それによれば、上半期のGDPの伸びは、7.5%だったという。第1四半期が7.4%で、第2四半期が7.5%である。この上半期7.5%の内訳は、消費が4.0%、投資が3.6%、そして輸出がマイナス0.2%である。すなわち、4.0+3.6−0.2≒7.5%というわけだ。
固定資産投資は、21兆2,770億元で、名義上の成長は17.3%と、成長の度合いはやや鈍化したものの、依然として高い。社会消費品の販売総額は12兆4,199億元で、名義上の成長は12.1%。やや持ち直したものの、十分な数値とは言えない。また、輸出は6兆5,113億元で、0.9%の伸びに過ぎない。輸出入は、12兆3,919億元で、1.2%の伸びである。
ちなみに、「真のGDP」に最も近いと言われる電力消費量は、上半期は2兆6163億キロワット時で、5.8%の伸びだった。
全体的に見て、飛行機にたとえれば、乱気流はひとまず通過しつつありそうだが、依然として先行きは不透明という感じだ。
下半期の注目点は、何と言っても不動産バブルがどうなるのかである。上半期の住宅新開工面積は、5億6674万平方メートルで、実に前年同期比マイナス19.8%。不動産バブルの崩壊が、ひたひたと忍び寄っていると言えなくもない。少なくとも、習近平主席が地球の裏側で王様気取りをしている場合ではないはずだ。
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