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政府月例経済報告に異議あり!消費税増税の悪影響を認めたくない政府に騙される政治家とマスコミ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39916
2014年07月21日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
先週14日付の本コラムで「経済指標は軒並み「景気悪化」の兆候!」(→こちら)を書いた。民間消費に加えて、民間設備投資も悪かったからだ。
おさらいのために図だけ再掲しておく。
このように、筆者としては消費税増税の悪影響が出てきていると判断している。ところが、政府見解としては、景気は悪くなっていないと言うのだ。
政府見解は毎月の月例経済報告をみればわかる。先週17日、官邸で月例経済報告等に関する関係閣僚会議が開かれた。これは、毎月一回、経済閣僚、与党政策責任者、日銀総裁らが出席して、政府の景気判断を確定させるものだ(会議の様子は官邸ホームページ→こちら 本文は→こちら)。
17日の7月月例経済報告では、基調判断を「景気は、緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動も和らぎつつある 」としている。先の6月月例では「景気は、緩やかな回復基調が続いているが、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動により、このところ弱い動きもみられる 」とされており、「上方修正」になっている。マスコミもこれをそのまま報じている。
なぜ上方修正なのか。GDPの7割を占める民間消費と民間設備投資を見てみよう。消費では、7月月例は「一部に弱さが残るものの、持ち直しの動きがみられる」とされ、6月月例の「引き続き弱めとなっているが、一部に持ち直しの動きもみられる 」から、上方修正になっている。
設備投資については、7月月例は「増加傾向にあるものの、このところ弱い動きもみられる」と6月月例の「増加している」から、すなおに下方修正になっている。
ここで、政府が7月月例を上方修正した理由は、消費であることがわかる。
■対前年同月比で見れば実体経済の不調は隠せない
6月30日付の本コラムで書いた「過去33年でワースト2!」を政府はどうしても認めたくないらしい。もちろん、本コラムで書いた話は、政府から公表された統計データそのままであり、ウソでも誇張でもない。それをそのまま読めば、消費は上方修正ではなく、下方修正となるはずである。
では、政府はどのような理由で消費を上方修正するのであろうか。
7月月例では「需要側統計(「家計調査」等)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、5月は前月比 1.3%増となった」と書かれている。そして、「最近の動きをみると、「家計調査」(5月)では、実質消費支出は前月比 3.1%減となり、「除く住居等ベース」では同 0.6%増となった」とも書かれている。
要するに、本コラムで指摘した家計調査の数字は悪いが、鉱工業生産指数と併せて見れば、少なくとも前月よりは上がっている、というロジックだ。
この分析は不十分だ。14日付の本コラムで指摘しているが、対前月比で見ると、あまりに近視眼になる。大きく下がった後で少しばかり上がっても、前の水準に戻っていない場合があるからだ。対前月比は、過去のデータをすぐ忘れるマスコミを騙すことはできるが、実態経済の不調は隠せない。だから対前年同月比でも見る必要がある。
政府の言う「除く住居等ベース」では前月比0.6%増だが、対前年同月比でみると、やはり悪い。
上の図で、大きく下げて、ほんの少しだけ上がっているのを回復と言うのだろうか。
次に、供給側の鉱工業指数もチェックしておこう。鉱工業生産指数を対前年同月比でみると、これもよくない。ちなみに、過去2回の消費税増税と比較してみると、今回の増税ではやはり悪い数字になっている。
もっとも消費総合指数についてはひどいが、家計調査ほどでもない。過去の増税時と比較すればもちろん悪いが、家計調査よりはまだよく見える。下図は、17日の月例経済報告等に関する関係閣僚会議で配付された資料であるが、悪くなってから、ほんの少しだけ上がっていることを強調していて笑える。
■意図せざる在庫が増えている恐れ
需要側(家計調査)が悪くて、供給側(鉱工業出荷等)がそれよりいいというのは、通常の経済分析では黄色信号だ。というのは、需要が弱くて、生産が伸びているというのは、意図せざる在庫が増えている可能性があるからだ。
在庫循環の一般論を考えてみよう。典型的なパターンとしては、@景気回復の初期には、まず出荷の増加に伴ってそれまで積み上がっていた製品在庫が減少に転じる。A次に、在庫調整が進展して在庫が適正水準に近づくと生産の増加テンポが速まって在庫の減少が止まる。Bさらに、景気が成熟化して出荷の増勢が鈍化すると在庫が増加に転じる。C最後は、景気後退局面で、出荷が減少する中で、在庫が積み上がっていく。
この様子を概念的に描けば、右図のようになる。
2012年11月が景気の谷になっているので、現実のデータを当てはめれば、以下の通りだ。
本来であれば、Bの状態であっていいはずだ。それが消費税増税で、一足飛びにCのような状況になっている。これも、筆者が景気の先行きに懸念をもっている理由だ。
どうも、17日の月例経済報告等に関する関係閣僚会議やその前後では、一部の関係者から、月例経済報告が上方修正になっていることを疑問視する意見もあったように聞いている。まだ、まともな意見も政府・与党内にあるのだ。
しかし、結果としては、そうした良心的な意見はまったく無視されて、月例経済報告は書かれていた。
一つには、政治家は政策の細部を知らない。月例経済報告等に関する関係閣僚会議は、その場で発言しても、まず無視される。総理などにきちんと根回しをしてない。
マスコミも予定稿で原稿を書いている手前、そうした部内の意見はまったく取材しておらず、多くのマスコミは、政府の公表通りに何事もなかったかのように報道している。こうしたことを報道するのがマスコミなのに、情けないものだ。出てきた公表物をそのまま報じるのであれば、マスコミは不要だ。
なお、一部マスコミで、月例経済報告に懐疑的な論調もあるが、それらのマスコミはこれまでの金融政策による景気回復の時でも、金融政策は効果がないという真逆であったので、その理由はまったく信用できない。金融政策無効派の多くは、消費税増税賛成である。このため、月例経済報告に懐疑的であっても、その理由として消費税増税でなく、まったく無関係な理由を挙げ、トンチンカンになっている。
筆者がこれまで言ってきたことを繰り返しておこう。金融緩和は正しくアクセルの役目を果たし、これまでの景気回復の原動力になっていた。しかし、消費税増税はブレーキを踏むことになるので、経済政策としてはまずい。
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