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世界に先行するロボット、製造業復活の切り札に?異業種の大企業やベンチャーの参入続々
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140718-00010000-bjournal-bus_all#!bg9vyL
Business Journal 7月18日(金)3時0分配信
6月19日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は、「『ロボットはどうした?』。ソニーの株主総会で、ソフトバンクがヒト型ロボットを発表したのに、ソニーには対抗馬がないという不満の声が株主から上がった」と報じた。
ロボットは次世代産業として期待されている分野であり、米IT(情報技術)大手の参入が相次いでいる。そんな中、常に時代の先端を走ってきたソニーにロボット製品がないことが、創造性を失ったソニーを象徴しているとして、同紙は取り上げたのだ。
ソフトバンクは会話ができるヒト型ロボット「Pepper(ペッパー)」を開発した。ペッパーは人間の表情や声の調子から感情を推測する機能を搭載、相手の感情に即したおしゃべりをしたり、身ぶり手ぶりをしたりする。相手が大喜びするなど反応が大きかった会話や動作はインターネット経由で記録され、次の行動に生かす学習機能を備えている。高さ120cm、重さ28kgで、二足歩行ではなく車輪で移動。まず携帯電話販売店に設置して接客に利用し、2015年2月に一般向けに発売する。本体価格は19万8000円(税別)。
ソフトバンクは10年、高度な人工知能(AI)を持つ「脳型コンピュータ」を搭載したロボットを実用化する構想を明らかにしていた。その一環として12年にヒト型ロボット「NAO(ナオ)」を開発した仏ベンチャー、アルデバラン・ロボティクス社に出資した。ロボット事業に本格参入する第1号のペッパーはソフトバンクの自社開発で、生産を電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業グループに委託する。
ソフトバンクの孫正義社長はペッパーを公開する会見で「人を喜ばせるだけでなく、将来は自分の意思で災害救助などもできるようにしたい」と語っている。鴻海の郭台銘・董事長は東京都内で開かれたその会見場に駆けつけ、ペッパーの製造を請け負うことを表明した。
米IT業界ではグーグルが日本企業を含む複数のロボット関連ベンチャーを相次ぎ買収して、事業化に意欲を示している。4月24日、来日したオバマ米大統領がホンダの「ASIMO(アシモ)」とサッカーに興じた後で、米グーグルが買収した東京大学発ベンチャー企業、SCHAFT(シャフト)を視察し、ヒト型ロボットの開発者に性能や将来展望を熱心に質問していた。シャフトは東大工学部ロボット研究室の卒業生らが米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が開催する災害救援ロボット競技会に参加するため、12年5月に設立したベンチャー。16チームが参加した13年12月の予選で、シャフトのロボットがガレキ除去やはしご登りなど全8種目で高得点を記録、他を大きく引き離して1位となった。
米大統領が熱い視線を送るのは、日本が世界一のロボット大国だからだ。ロボットは日本が世界に誇れる最後の砦ともいわれている。産業用ロボットは日本では1960年代が黎明期で、70年代の実用化を経て、80年が普及元年だった。その後、急速に導入が進み、いまや日本は産業用ロボットの発祥の地である米国を抜いて世界一となった。
産業用ロボットは多関節ロボットと電子部品実装機に大別される。多関節ロボットはファナックと安川電機、ABB(スイス)、KUKA(ドイツ)が世界の4強だ。ファナックは溶接ロボットなど自動車向け多関節ロボットが主力。安川電機は液晶搬送用ロボット、医療用ロボットなどを開発。電子部品の実装機はパナソニックが大手で、同社は車いす付き介護ベッドを手掛ける。
●主戦場は生活支援ロボット
これからのロボットビジネスの主戦場となるのは、生活支援ロボットである。第一ラウンドは医療・介護用の支援ロボットだ。ホンダは「ASIMO」の技術を使い、介護を想定した歩行アシストロボを開発中だ。
05年の愛知万博を機に、トヨタ自動車もロボット開発を本格化した。寝たきりの人の移動を介助するロボットや家庭内で使うロボットなどを今後、実用化する。
大手企業が積極的にロボット事業に取り組む中、ベンチャー企業の動きも活発だ。14年3月26日、医療や介護などの分野での活用が期待されているロボットスーツ「HAL」を開発した大学発ベンチャー企業、CYBERDYNE(サイバーダイン)が東証マザーズに上場した。医療・福祉用ロボットメーカーの株式上場は日本では初めてだ。
サイバーダインのCEO(最高経営責任者)は山海嘉之・筑波大学大学院教授。山海は04年、ロボット工学の研究成果を活用することを目的にサイバーダインを設立し、治療に使う世界初のサイボーグ型ロボットであるHALを開発。HALは国際安全規格の認証を取得し、欧州で医療機器として認定されるなど本格的な市場展開への準備を進めてきた。日本では400体以上、欧州でも50体がすでに利用されている。同社は富士重工業から事業を引き継いだ清掃・搬送ロボの改良型を発表する。
医療・介護分野のロボット販売の隠れた大手が、大和ハウス工業だ。ロボット事業に進出するため、07年にサイバーダインへ出資した(持ち株比率は23.9%)。同社の上場後、出資分を回収するため持ち株の一部を売却したことで出資比率は19.9%に低下したが、第2位の大株主であることには変わりはない。大和ハウスはHALなどを、これまでに全国の医療・介護施設に販売してきた。
●政府の成長戦略も後押し
安倍政権は成長戦略の柱の一つとして、ロボットを世界に先駆けて普及させることを目指して「ロボット戦略」を打ち出し、以下の4分野を集中的に支援するとしている。
(1)介護(介護職員の負担を軽くするパワーアシストスーツ)
(2)農業(無人で農作業するトラクター)
(3)インフラ(災害現場で情報を集めるロボット)
(4)工場(複雑な工程も担えるヒト型ロボット)
これら4分野のロボットの市場規模を、12年の7000億円から20年には3倍超の2兆4000億円に拡大する方針だ。
ベンチャー企業に加え、続々と異業種からの参入が相次ぎ、盛り上がるロボットビジネスが、果たして日本製造業復活の切り札になるか。今後の動向に注目が集まっている。
編集部
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