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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第84回 実質消費の8%下落の衝撃
http://wjn.jp/article/detail/0079736/
週刊実話 2014年7月24日 特大号
'14年5月の日本の家計の実質消費が、対前年比で大幅な減少となってしまった。
総務省が6月27日に発表した5月家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は、実質値で対前年比8%減となってしまったのである。
実質消費が前年同月比で下落となったのは、'14年4月に引き続き2カ月連続だ。しかも、対前年比マイナス8%という下落率は、東日本大震災があった'11年3月(8.2%減)以来の水準になる。
5月の前月、すなわち'14年4月の実質消費が、対前年比でマイナスになった理由は明確だ。もちろん、3月までの「増税前の駆け込み消費」の反動である。
4月の実質消費は、対前年比4.6%のマイナスに終わったが、5月は前月をも上回る落ち込みになってしまった。衝撃を受けた。
5月の指標は、実質消費以外の数値もよろしくない。住宅着工件数は4月の3.3%減少から、5月は15%の減少。マイナス幅が大きく膨らんだ。
筆者が本連載で繰り返し取り上げている実質賃金は、4月の3.4%減(確報値)から、5月は3.6%の減少(速報値)。こちらもまた、下落率が拡大。
実質消費の大幅な落ち込みを受け、総務省は「想定の範囲内」と説明している。
「想定の範囲内」というフレーズには、極めて問題がある。何しろ、想定の範囲が何を意味しているのか、具体的な数値は説明されていない。この手の抽象語で指標の下落の話を終わらせるのは、本当にやめて欲しい。
消費(民間最終消費支出)とは、支出面GDPにおける最大の需要項目なのだ。日本のGDPを支出面で見ると、約6割が民間最終消費支出になる。金額でいえば、おおよそ300兆円だ。
無論、5月の実質消費の落ち込みは単月の話だが、同様の下落が1年間継続すると、実に24兆円規模の需要が我が国の国民経済から消滅することになる。
万が一そうなった日には、我が国は間違いなくデフレに逆戻りしてしまう。
前回('97年)の消費税増税後の5月を見ると、実質消費は2.1%減であった(消費税導入時の'89年5月は2.9%減)。今回は、増税後2カ月目に'97年時よりも大幅に消費が減少してしまっているのだ。
実質消費が'97年時と比較して大きく落ち込んだ最大の理由は、
「前回は実質賃金が上昇('96年)している状況での消費税増税だったのに対し、今回は実質賃金が下落('13年)している環境下での増税」
以外に考えられない。
当たり前だが、実質賃金が下落している最中の消費税増税は、更なる実質賃金の低下を招く。
実質賃金とは「賃金上昇率」から「物価上昇率」を差し引いて求められる。消費税は「強制的な物価の上昇」になるため、消費税増税分(2%弱)を上回る賃金上昇がない限り、実質賃金は下がる。
しかも、今回はただでさえ実質賃金が低下している状況で、増税で強制的に物価を引き上げた。
結果的に、国民が消費を絞り込んだという話なのだろうが、問題は、
「所得とは、誰かがモノやサービスに支出をしなければ創出されない」
ことになる。
実質賃金の下落が、消費の縮小を招き、消費の縮小が更なる実質賃金の引き下げをもたらす悪循環に突入した可能性はないのか。すなわち、物価と実質賃金が共に下がる形の「デフレ再来」だ。
現在の日本は、政府が補正予算を組まなければならない局面だと確信する。
ところが、国会は早々に閉幕してしまった。
最近の政府(官庁含む)は、消費税増税後の急激な消費の落ち込み等について「想定内」という言葉で説明することが増えている(説明になっていないが)。
現状が「想定内」ということであれば、果たして何が「想定外」に該当するのだろうか。「想定内」というフレーズを用いるならば、政府は具体的なレッドラインを示すべきだろう。
例えば、'97年時や'89年時の消費税増税後(導入後)と同程度の消費の落ち込みをとらえて「想定内」と主張するのであれば、まだしも根拠が理解できる。とはいえ、現実の'14年5月の実質消費の落ち込みは、対前年比%が'97年時、'89年時の3倍規模なのである。
何と言うか、国内の猛烈な反発を押し切り、消費税増税を強行した政府が、
「想定以上に悲惨な状況になっていることを認められない」
ため、単に「想定内。想定の範囲内」と繰り返しているようにしか思えない。
上記が正しいとなると、実にまずいことになる。
これでは、今後の我が国において、消費税増税の悪影響が甚大になったとしても、「間違いを認められない」政府や官庁は、問題を問題として捉えることができないということになってしまう。
「問題が発生している」
と、認めれば、対策を打てる。
ところが、問題が発生しているにもかかわらず、それを認められない状況に至ると、当たり前だが対策は打たれない。
とにかく、問題が「発生していない」以上、対策など打つ必要がないことになってしまうのだ。
何となく、大東亜戦争時のミッドウェー以降の「大本営発表」を思わせる現在の政府の「想定内」に、筆者は戦慄せざるを得ない。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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