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齋藤精一郎:米国株の高値追いと日本株の膠着はいつまで続く
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140715-00000001-fukkou-bus_all#!bfinQ4
nikkei BPnet 7月15日(火)13時43分配信
新しい四半期に入った7月初め、ニューヨーク株は史上最高値をつけましたが、日本株は依然、200日移動平均線をやや上回る水準で膠着状態が続いています。絶好調に近い米国株は今後とも高値を追い続けていくのでしょうか。一方、日本株は凪(なぎ)状態や膠着相場から抜け出すことができるでしょうか。
■米国株式市場の過熱感なき「モデレーション」
7月3日、ついにニューヨーク・ダウ平均株価は1万7000ドルの節目を突破し、市場には達成感が広がりました。しかし、意外にも“過熱感”はほとんど見られません。高値警戒感も少ないようです。
それはなぜかというと、株価変動率(ボラタリティ)が低く、S&P500のVIX指数(別名・恐怖指数=急落の恐怖の有無の度合い)で見ても、10〜12と歴史的な低水準にあるからです。そのため、株価の急落、暴落といったリスクが少ないと見られています。
また、長期金利(10年物国債利回り)を見ると、これまた2.4〜2.6%と低位で推移しています。2013年5月中旬、バーナンキ連邦制度理事会(FRB)議長(当時)の量的緩和縮小(テーパリング)発言で長期金利は上昇に転じ、同年末には3%台に乗せました。しかし、今年に入ってからは想定外の弱含みになっています。この長期金利の低位安定も、市場に安心感を与えています。
このように過熱感がなく、変動率も低い金融状況は、「モデレーション」(ほどよい安定)と呼ばれます。ただ、この状態の心地よさが、投資家をしてリスクテイク行動に駆り立てる可能性も否定できません。
過剰なリスクテイク行動は、1998年のアジア通貨危機、さらには2008年のリーマン危機の導因となりました。そのため、慎重派のなかには今回のモデレーションについても警戒感を抱いている人がいます。もっとも、そうした警戒論は現時点では少数派にとどまっています。
■せめぎ合う上方トレンドと下方トレンド
ではどうして、モデレーションが現出しているのでしょうか。それは、世界の経済・金融の中心である米国市場で、2つの相反するベクトルがせめぎ合い、相殺し合っているからです。その結果、一種の無風状態が生まれています。
1つめのベクトルは上方トレンドです。米国の非農業部門の雇用者が5カ月連続で20万人を上回るなど景気の着実な回復、FRBの出口戦略の着実な進行、一部新興経済の復調(インド、インドネシア、フィリピンなど)、さらに欧日経済の復調が上方トレンドとなっています。
もう1つのベクトルは下方トレンドです。米国景気回復の勢いの弱さ、新興経済に見られる構造的・循環的な調整問題(中国バブルや景気減速)、米国経済の構造的な成長制約の存在(サマーズの長期停滞仮説)、そして地政学リスクの存在(中東、ウクライナなど)が下方トレンドとなっています。
これら上方トレンドと下方トレンドがせめぎ合って、相殺し合っているため市場には無風に近い、モデレーションがもたらされているというわけです。
■イエレン発言による市場への「ダメ押し」効果
さらに最近のイエレンFRB議長による発言が、市場へのいわば「ダメ押し」効果をもたらしつつあります。
まず6月18日の記者会見で、イエレン氏は緩和姿勢の堅持を明快に打ち出し、株高を前向きに評価しました。7月3日には、国際通貨基金(IMF)で演説を行い、「金融安定化を目指して金利を操作すると、雇用や物価を不安定化する恐れがある。市場の過熱にはマクロプルーデンス政策(金融機関の監督強化や資本規制の拡充など)で対処すべきだ」と、金利引き上げ期待を打ち消しています。
この発言により、FRBの金利引き上げは先送りされ、緩和基調が長期化するとの重大なメッセージが市場に送られることになりました。長期金利の低位安定化→株高→資産効果による景気加速という好循環メカニズムを米国経済は当分の間、享受できるのではとの市場の強気派を勢いづかせています。
このイエレン発言によって、2つのベクトルのうち、上方トレンドに市場の軸足がやや傾きかけています。「1つの政策目標には1つの政策手段が対応」とのティンバーゲン・ルールにならえば、経済成長と経済安定(バブル阻止)の2つの目標には金融緩和策とプルーデンス策の2つの手段が不可欠なわけで、イエレン発言には従来のハト派の論理的弱点をカバーする説得力があります。現在、米国株の株価収益率(PER)は16倍前後ですが、企業業績に大きな落ち込みがなければ、今後も上方トレンドが緩やかながら続き、PER20〜25に向かって徐々に高値追いへと進んでいってもおかしくありません。むろん高値圏ゆえに一進一退の展開になるのは必然ではありますが。
■日本株膠着の3つの要因と高まるB&G期待
一方、日本株は現在、膠着状態が続いています。日本株は米国株の上方シフトに連動して、凪状態から脱することができるのでしょうか。この問題を考えるにあたっては、日本株の3つの決定要因をまず吟味しておきましょう。
1つめは円安です。2013年に日経平均が57%上昇した最大の要因は、25%の円安にありました。今後、25%の円安が起きることは不可能に近いと言えるでしょう。最近のドル円相場は1ドル=101円前後の極めて狭いレンジ圏で膠着を続けています。この点で、急激な円高というものも考えにくいのです。
2つめは成長戦略です。期待感が高まり、動き出した成長戦略はプラス要因となり得るはずです。しかしよく見ると、法人減税の中身(5年かけて6%前後引き下げ28〜29%へ)はインパクトが弱いですし、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化に3〜4年、女性活躍、農業改革、観光立国についても効果が出るまでには4〜5年は必要です。成長戦略は全体として株式市場にプラスですが、企業活力に顕著な効果が表れ、株価の上昇トレンドに反映されるようになるにはまだ時間がかかりそうです。
3つめは世界経済です。やはり、現在の世界経済には地政学リスクを含めて不確実性が色濃く居座っています。世界経済の不確実性が、株式市場の動きを制限している面があります。もっとも、世界金融危機のような最悪の事態が起こる可能性は低くなっています。
以上の3つの要因を踏まえると、日本株の環境は決して悪くもないが、だからと言って手放しの楽観はもとより、バラ色でもないというのが、現在の日本を取り巻く経済・金融状況です。
だから市場ではこの膠着を吹き飛ばし、株高の勢いを一気に取り戻そうとの機運が高まっています。その本命が日本銀行(BOJ)の追加緩和策と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の大規模な株購入策なのです。たしかにこのB&G効果の株価に対する即効性は強い。しかし中長期的にみれば、日本企業の成長力エンジンが備わらないかぎり、当局の価格維持・テコ入れ策(PKO)の効果は限定的に止まるでしょう。いわゆる「官製相場」で終わってしまうからです。
■「嵐の前の静けさ」より想定外の「長い踊り場」
さて、今後は米国株の高値追い、世界経済の復調などもあって、日本株への追い風が吹く可能性も十分に考えられます。しかし、その効果はゆっくりと出てくることになると思います。
その場合、日経平均の200日移動平均線が緩やかながら上昇トレンドを見せるという形で、ジワジワと上がっていくことになります。言い換えると、200日移動平均線が下値の強い抵抗線になりますが、だからと言って平均線から大きく上振れして上がるという局面は想像しがたいと言えます。
ところでここまで見てきたように、米国株も日本株もボラタリティが低く、株価の急変、暴落のリスクは小さくなっています。そこで、投資家がリスクオン行動に出やすい条件が整っていることから、「嵐の前の静けさ」論が徐々に高まってきています。
しかし、米国株のPERが危機ライン(25倍前後)に近づくまで、嵐はしばらく視界の外にあると見ていいでしょう。まして日本株は上値が重いだけに、嵐がやってくるというのは論外です。7月11日現在で、200日移動平均は、1万4855円ですが、この±5%のレンジ(当面は1万4100円〜1万5600円)で200日線は緩やかな右上がりスロープへの膠着を続けていく可能性が大です。
その結果、「嵐の前の静けさ」どころか、市場は想定外の「長い踊り場(緩やかな右上がりの200日線)」に居続けることになるでしょう。ただ、この「踊り場」を突き崩す突風が吹く可能性も排除することはできません。それは、ユーロや英ポンド、中国元、新興国通貨などの異変による「通貨波乱」で、その契機は地政学リスク、米中欧などの経済変調、そして金融動揺(南欧や南米など)と事欠きません。当面は地政学リスクを含め、「通貨波乱の夏」が要注意でしょう。
突風が吹けば、株の急落や金利上昇を引き起こします。もっとも、それは膠着化した株式市場に充満する「ガス抜き」であって、リーマンショックのような危機につながるものにはならないと思います。突風に気をつけながらもそれに慌てず、膠着相場と長くつき合っていく心構えが必要になりそうです。
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