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<日銀短観に見える希望>日本経済は、この機をとらえ今度こそ安定した経済環境を取り戻すべき
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140711-00010000-jindepth-bus_all#!bcuVpV
Japan In-Depth 7月11日(金)1時52分配信
6月調査の日銀短観が公表された。今回の短観で注目されていたのは、企業の景況感を示す業況判断DI(景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値)が、消費税増税の影響でどう動くかということである。
景気循環を一番先取りすると言われている大企業の製造業は、確かに3月に比べると悪化している。しかし3カ月程度の先行きついては改善をみている。つまり大企業は、消費税増税によるマイナスの影響は一時的と判断しているということだ。
最近、労働需給の逼迫が成長を制約するということがよく議論されている。短観における雇用状況の判断に関するDIをみると、6月は3月に比べ若干不足感が薄れている。これも消費税増税の影響だろう。それでも、全体としては引き続き「不足」とする企業の割合が「過剰」とする企業のそれを上回っている。さらに先行きはいっそう不足感が強まると予想されている。
この短観とは「企業短期経済観測調査」の略であり、1957年以来、60年近く続いている統計だ。大企業から中小企業まで、約1万社を対象とし、「自社の業況はどうか」、「設備や雇用は足りているか」といった感覚的判断にかかる質問と、売上、利益、設備投資等が前年度に比べ何パーセント変化するかという具体的計数の両方を聞いているのが1つの特徴だ。
その企業の判断を問う指標は、DI(デフュージョン・インデックス)と呼ばれるかたちで集約される。例えば業況判断DIで言えば、まず自社の業況について、「良い」、「さほど良くない」、「悪い」の3択から選んでもらう。それを集計して、それぞれの百分比を出し、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いて算出するのがDIである。
難しい数式の世界ではなく、算数の世界だ。単にこれだけなのだが、結果として出てくる数字は、ほぼ滑らかに動くサイン・カーブ状となり、景気の循環を実に良くフォローする。
今回の6月短観からは、久方振りにかつての成長パターンが戻ってくる可能性をみてとることができる。確かに労働需給はタイト化しているが、それは必ずしも成長を制約するとは限らない。
そうした状況では、企業は効率化のための投資を行い、それが労働生産性を改善し、供給の天井を引き上げ、需要が供給を引っ張るかたちで成長率が高まっていく。それがかつての日本経済がたどった成長パターンだ。
実際、今回の短観で大企業・製造業の2014年度の設備投資額をみると、3カ月前よりも約5%上乗せされ、前年度に比べ10%を超える伸びが見込まれている。それだけの設備投資を支える収益性が確保できるかどうかについても、2014年度の売上高経常利益率は、前年度に引き続き、バブル期のピークを超え、リーマン・ショック前のピークに並ぶ高水準が見込まれている。
もっともまだ楽観は禁物だ。日本経済は、この機をとらえ、今度こそ安定した経済環境を取り戻さなくてはならない。そうしないと、社会保障制度改革を中心とした高齢化社会に向けた対応がなかなか円滑に進まないからだ。高齢化のスピードは加速しており、残された時間的余裕はほとんどない。
ようやく見え始めた良い方向への動きをリードしていくのはやはり企業部門だろう。より収益性の高い分野への積極的な投資、生産性上昇に見合った賃上げ。そういった前向きな企業行動なしには、安定成長は実現しない。
政府の成長戦略にある企業統治(コーポレート・ガバナンス)にかかる施策も、詰まるところそうした企業行動を促すことを意図したものだろう。
神津多可思(リコー経済社会研究所 主席研究員)
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