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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 儲かれば何をやってもいいのか
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週刊実話 2014年7月17日 特大号
カジノ法案が閉幕直前の国会に提出され、継続審議となった。おそらく秋の臨時国会で成立することになるだろう。早ければ東京オリンピックの開催前に、戦後初めて民営の賭博場が開設されることになるだろう。
経済効果は7兆円とも言われ、巨額のカネが動くことは間違いない。カジノ税で財政も潤うだろうが、一番の問題は、低所得者たちが身ぐるみ剥がれて、格差が拡大することだ。ただ、政府は、金儲けのチャンスを目の前にして、そんなことはまったく意に介していないようだ。
6月21日、政府・自民党内でパチンコやパチスロの換金時に徴税する「パチンコ税」の創設が浮上していることが明らかになったのだ。1%で2000億円の財源が生まれるとの試算もあり、法人税減税の財源として期待されているという。しかし、パチンコ税を創設するためには、パチンコをギャンブルとして正式に認めなければならない。
現在、パチンコは法的にはギャンブルではない。だから、一旦景品に換えて、それを買い取ってもらうという「換金システム」が採られているのだ。つまり、自民党の構想は、カジノのみならずパチンコ・パチスロを含めて、一気にギャンブルの市場を広げようということになるのだ。
もし、それが実現したとすると、競輪や競馬などの公営ギャンブルも含めて、日本のギャンブル市場は30兆円に達することになる。世界最大であるマカオのカジノの市場規模は2兆円。ラスベガスのカジノの市場規模は約6000億円、アメリカ全体でもギャンブル市場は8兆円程度だ。つまり、このまま行くと日本は世界で突出したギャンブル大国になってしまうのだ。
安倍政権はそれを明らかに目指している。安倍総理自身が、超党派の国会議員で作る国際観光産業振興議員連盟の最高顧問を務めているからだ。この議員連盟の目標は、パチンコの換金とカジノの合法化だから、総理自らギャンブル拡大に陣頭指揮を執っていることになるのだ。
しかも、安倍総理のギャンブル推進は、パチンコやカジノに限らない。6月6日には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産運用見直しを前倒しするよう田村憲久厚生労働大臣に指示していたことが明らかになった。これまで国債を中心に運用されてきた公的年金の積立金を株式などのリスク資産に重心を移せと、安倍総理は指示したのだ。ハイリスクを取ればハイリターンが期待できる。そうなれば、年金破たんを先送りできる。しかし、もし失敗すれば、我々の年金が大きくカットされることにつながるのだ。
私はラスベガスに一度だけ行ったことがある。それは夢のような世界だった。しかし、楽しいからこそ、一度はまりこんだ時の被害は、大きい。だから、いくら経済効果があるといっても国民をそこにどっぷり浸けるというのは、いかがなものか。ましてや、安定した給付が求められる年金に関して、その原資をギャンブルに投ずるというのは、もっとまずいのではないか。
安倍政権には、原発輸出や武器輸出まで解禁するなど、「儲かれば何をやっても構わない」という姿勢が見え隠れする。いま一番必要な姿勢は、真面目に働くということではないのか。
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