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日銀がこれ以上の円安を望まない理由
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20140708-00037189/
2014年7月8日 13時30分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
円安になれば、どれだけ日本経済にとっては恵の雨になることか!
かつては多くの人がそう考えたのです。特に、2010年以降の超円高の局面ではそうだったのです。
一番円高が進んだ局面では、1ドル=80円を切り、70円台に突入していた訳ですから。
そんな状況にあったので、例えば1ドルが90円台にとどまってくれればどんなに有難いことか、と感じていたのです。
では、今はどうなのでしょう?
もう結構長い間、1ドル=100円を上回る水準で推移しているのです。
これもみんなアベノミクスのお蔭と言うべきなのか、或いは異次元の緩和策のお蔭なのか? 否、そうではなくユーロ危機が収まったからなのか?
いずれにしても、かつてと比べれば相当の円安になっているのは事実なのです。そのことについては誰も異存はないと思います。
では、かつて財界人の多くが希望したような、否、それ以上の円安が現実のものとなっている今、その恩恵は如何ほどなのか?
確かに、円安のお蔭で輸出企業の円建ての売り上げ額が伸び、そして、そのために利益が増加したのも事実です。
では、数量ベースでの売り上げは伸びているのか? そしてまた、日本経済に明らかにプラスの効果をもたらしていると言えるのか?
実は、これだけの円安が実現しながら、数量ベースの輸出は殆ど伸びていないのです。
繰り返しになりますが、円建ての名目輸出額は増加してはいます。(厳密に言えば、4月まではそうでしたが、5月には前年同月比でマイナスになってしまいました) でも、それは、例えば1ドル=80円が、1ドル=100円になったからに他ならないのです。
例えば1万ドルの自動車を1台輸出すると、1ドル=80円のときには80万円の売り上げになりますが、1ドル=100円になると100万円の売り上げになるのです。
では、そのようにして売り上げが増えたことを大喜びすべきなのか?
確かに、自動車メーカーの決算だけを見るならば、取り敢えず歓迎してもいいように思えるのですが...しかし、国民全体としてみると...
例えば、原油や天然ガスを海外から輸入しなければならない日本としては、円安になった分、原油や天然ガスを輸入するために多くのお金(円建てで考えて)を支払わなければならないのです。
では、そうしたことの結果、円安にはプラスの効果とマイナスの効果があるが、仮にそれらが同じ程度であれば、それぞれ帳消しになるのでプラマイゼロと考えていいのか?
問題はそこなのです。
でも、我々日本人が必要とする原油や天然ガスの数量は、景気変動による影響を無視すれば、一応、為替相場の影響はそれほど受ける訳ではないのです。もちろん、円建てのそうしたエネルギー価格が上がれば、自然に需要が弱まる効果があるのは事実でしょうが、急にはそれほど変化することはないのです。
では、輸出の方はどうなのか? 海外向けの自動車の売り上げ台数は、円安によって大きく伸びることが期待できるのか?
円安が急速に進むのであれば、自動車メーカーとしては、ドル建ての販売価格を引き下げる余地が生じるので、ドル建ての販売価格を引き下げてでも売り上げを伸ばすことが考えられるでしょう。
しかし、ドル建ての販売価格を下げたところで、期待したほどは販売台数が伸びないのです。
となれば...先ほど日本全体にとって円安の効果はプラマイゼロと考えていいのか、と言いましたが、プラマイゼロではなく、どちらかと言えばマイナスの方が大きいようにも思えるのです。
では、日銀はそのような事実をどう理解しようとしてきたのか?
今から1年ほど前、黒田総裁は、それはJカーブ効果と言うやつで、いずれ輸出が回復してくるから、心配はないと言っていたのでした。
しかし、実際には黒田総裁の言うようにはならなかったのです。それどころか、今年に入った頃から、つまり円安局面に転換してから1年ほど経った頃から、政府関係者のなかにも円安が思ったほど輸出の回復に寄与していない...もっと言えば、輸出数量は回復していないとの見方が定着しだしたのです。
いいでしょうか?
日本の輸出メーカーはドル建ての販売価格を引き下げているのです。しかし、それにも拘わらず輸出数量は殆ど増えていないのです。
では、まだ円安の程度が小さすぎるからで、もっと円安になれば流石に輸出が回復して、日本経済にとっても大いに恵の雨になるのでしょうか?
しかし、そんな風に考える経済関係者は殆どいないのです。それどころか、これ以上の円安はむしろ悪影響を与える、と。
それに、こうして円安を原因としてエネルギー価格がさらに上がると、エネルギーを大量に使う運送業者や漁業関係者の経営が立ちいかなくなってしまうのです。
日銀の名古屋支店長さんが、「これ以上の円安は燃料コスト高を引き起こしかねないとの声もある」、 「現状程度の為替水準が心地良いとの声が圧倒的」、「さらに円安を望む声は聞かれない」なんて発言しているのです。
だとしたら、現在、日銀やっている異次元の緩和策とはどのような効果があるのかと言いたい。
デフレからの脱却のためにどうしても必要だというのか?
では、マイルドなインフレが起き、そのことが何か経済に良い効果をもたらしているのか?
確かに、アベノミクスがスタートして以降、マイルドなインフレが起きているとも言え、そして、その一方で長期金利は低位安定しているので、実質金利が低下し、お金を借りる立場にある企業は大いに楽になっているのです。
しかし、そのことは裏を返せば、1500兆円ほどの金融資産を保有する家計にとっては逆に実質金利収入が減っていることを意味し...つまり、その分個人の購買力が削がれているのです。
ということで、これ以上円安が進んでもそれが日本経済にとって恵の雨となることはないでしょう。
以上
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