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2014.07.08 「日本」の解き方
1998年から2001年まで筆者は米プリンストン大学にいたが、知的刺激にあふれた時期だった。米FRB(連邦準備制度理事会)前議長のバーナンキ教授、08年にノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授らが、毎週のセミナーで日本を題材に非伝統的金融政策について侃々諤々(かんかんがくがく)議論していたのは面白かった。結論を一言で言えば、「お金を大量に刷れば、デフレから脱却できる」ということだった。
01年に帰国後、経済財政諮問会議を手伝うことになったが、当時の日本のアカデミズムに驚いた。一部のマイナーな人たち(今では「リフレ派」と呼ばれる)を除き、主流派の人は「クルーグマンらの言うことは信じてはいけない」と公言していた。
例えば、諮問会議の民間議員だった東大の吉川洋教授から、「高橋さん、貨幣数量説(貨幣=マネーの数量で物価水準が決まるという学説)を信じているの?」と言われたこともある。
それに対して、「“マネー”を“マネタリーベース(中央銀行が供給する通貨)”にすれば、通貨発行益があるので、長期的には成立すると思います」と答えたが、吉川教授は否定的だった。
こうした学会を変えるように運動すべきだという人もいたが、筆者には、頑迷固陋(がんめいころう)な学者を説得するには、実社会で証明することが近道と考えていた。もちろん、米国アカデミズムの賢人たちと同じ考えだから失敗はないという確信があった。
幸いなことに、小泉純一郎政権で、竹中平蔵大臣や中川秀直自民党政調会長には、筆者の説明を納得してもらった。03年3月の日銀人事で、福井俊彦氏が総裁になったが、デフレ脱却を約束したため、量的緩和政策がすぐ実現した。
ところが、「ゼロ金利になるとどんな金融政策も無効になる」という主張が出てきて量的緩和の足を引っ張る動きになった。一橋大の齊藤誠教授のブラックホール論だ。モデルの数式もあるので日本のアカデミズムで受け入れられていた。
しかし、その論文には経済学の大学院生にはわからないが数学科の学生なら簡単にわかる誤りがあった。筆者はそれを経済雑誌に書いた。齊藤教授は、びっくりしたのだろうが、筆者の指摘に再反論はなかった。日本のアカデミズムでは、筆者のような行動はありえないことで、なかったことになっているらしい。
小泉政権での量的緩和は不徹底だったが、データ分析すれば日本経済に好影響を与えたことがわかる。だが、それすら日本のアカデミズムの主流派は怠った(例外は関西大の本多佑三教授)。
そして今回再び、政治主導で金融政策の威力が証明された。筆者は11年前に齊藤教授の批判論文を書き、今回も『徹底分析 アベノミクス−成果と課題』(中央経済社、原田泰・齊藤誠編集)の中で、金融政策に効果があったとし、齊藤教授の見解を否定している。前回も今回も齊藤教授からは反論がない。ということは、長年にわたる日本における論争が、リフレ派の勝利に終わったことを意味する。それにしても、2度も政治に先を越された日本のアカデミズムは情けない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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