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長野にいる豊田章男社長の「先生」
伊那食品会長、塚越寛氏の経営論
佐藤 浩実
2014年7月7日(月)
「色々な形で勉強させてもらっています」。トヨタ自動車の豊田章男社長がインタビューの中で、こう紹介した企業経営者がいた。「かんてんぱぱ」で知られる伊那食品工業(長野県伊那市)の塚越寛会長だ。トヨタの社長が学ぶ塚越氏の経営とはどんなものなのか。伊那を訪ねた。
タクシーを降りて、「場所を間違えたかな」と心配になった。目の前に広がっていたのは、会社というよりも、広大な緑地公園のような景色だったからだ。案内図には、蕎麦屋やカフェ、絵画作品の展示場が記してある。ところどころに花壇があり、観光客の姿も見える。「やっぱり、間違えたな」。そう思った時に、案内図の右のほうに、伊那食品工業・本社と載っているのを見つけた。公園に見えた一帯は紛れもなく、「かんてんぱぱ」など寒天製品を製造・販売する伊那食品工業(長野県伊那市)の敷地だった。
伊那食品工業の塚越寛会長
「それはね、私の挑戦ですよ」。応接室に現れた伊那食品の塚越寛会長に「公園みたいですね」と驚きを伝えると、そんな返事が返ってきた。そして、塚越氏はこう続けた。「社員を大事にする、環境を大事にする、地域を大事にする。それでもちゃんと経営ができるんだっていうのを証明するのが私の挑戦。売り上げをいくらにするとか、利益をいくらにするとかじゃないんだよ。日本全国がここみたいになればいいって、私は思っているの」。
塚越氏の発言を聞いた時、いくつかの記者会見の光景がフラッシュバックした。筆者は普段は自動車産業の取材をしている。そう、塚越氏の言葉は、トヨタ自動車の豊田章男社長が会見で語る内容と共通する点が多いのだ。それもそのはず。先日、日経ビジネスオンラインに掲載したインタビュー「危機で生まれ変わり、素直になれた」で「中小企業の方々に学ぶべき点が多い」と話す豊田氏は、伊那食品・塚越氏の経営についても「勉強させてもらっている」と語っていた。確かに、豊田社長が最近よく使う「年輪を1つずつ重ねる」という表現は、塚越氏の著書「リストラなしの『年輪経営』」(光文社)に通じる。トヨタの社長が学ぶ塚越氏の経営方針とはどんなものなのか。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140704/268090/?P=1
いい会社をつくりましょう
それは伊那食品の社是に集約されていた。
伊那食品の社是は「いい会社をつくりましょう」
「いい会社をつくりましょう」。塚越氏は1980年代に勤め先の木材会社の関連企業だった伊那食品の経営再建を任されてから、この社是を出発点に経営のすべてを考えてきた。いい会社とは「単に経営上の数字が良いというだけでなく、会社をとりまくすべての人々が日常会話の中で『いい会社だね』と言ってくれるような会社」を指す。その考えに立てば、「成長も利益も目的ではなく、手段に過ぎない」(塚越氏)という。
話を聞いていて、尊いと感じると同時に、そうは言っても理想論だと指摘する人も多いだろうと感じた。伊那食品は未上場だが、上場企業であれば投資家のウケは良くないかもしれない。なぜ、「いい会社をつくりましょう」という経営を志すのか。
それには塚越氏の原体験が大きく影響している。
塚越氏は17歳の頃、肺結核を患った。友人たちが青春を謳歌するなかで1人、命がけの闘病生活を続けた。「貴重な人生を生きることができるなら、どう生きるか」。二宮尊徳や渋沢栄一の本を読み、色々な人の話を聞いて学び、あるべき生き方を深く追求するようになった。「経営のスキルを習得するんじゃなくて、哲学的なことを学んだんだよ」と塚越氏は振り返る。塚越氏の挑戦は「いい生き方」を会社経営において実践していくことだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140704/268090/?P=2
オンリーワンの商品を作る
もっとも、思いだけではいい会社はつくれない。すべての人を幸せにするつもりで行動しても、例えば、仕入れ先を大事にしすぎて価格競争で負けてしまったら、結果的に皆を不幸にする。そうならないために、塚越氏が重視するのが「オンリーワン」の商品だ。直に競合する製品がなければ、価格競争にも陥りにくい。実際、伊那食品の直営店を訪ねてみると、寒天入りのスナック菓子や、寒天を入れて垂れにくくした蜂蜜など面白い商品が並んでいる。研究開発に熱心な社員たちが考えたものだという。
「現在の用途へ向かって価格競争で売り込んでも疲弊するだけ。新しい用途を考えれば、正しい価格で売れる。アイデア競争が本当の競争だよ」と塚越氏は言う。塚越氏は「結果にすぎない」と一蹴するが、寒天という小さな業界で約半世紀にわたって増収増益基調を続けているのは、独自性へのこだわりがあるからに他ならない。
ただ、この点こそ、多くの企業が志向しつつも、成果を出し切れていないのが事実だ。仮に特徴のある商品を出しても、市場成長が著しい産業であればあるほど、すぐに追随が起こる。塚越氏もオンリーワン商品を出すうえで「(市場が成熟している)寒天業界というのは、少し恵まれていたかもしれない」と話す。
翻って、自動車産業は世界的にはまだまだ成長のさなかにある。それゆえに、日本や海外を見渡しても、「オンリーワン」を守り続けているクルマを挙げるのは簡単ではない。豊田氏は「先生」が重視するオンリーワンのクルマを、これからどのように生み出していくのだろう。自動車産業を取材する一記者として、心待ちにしている。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140704/268090/?P=3
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