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ゼロになって死にたい「0葬」のすすめ【第1部】骨まで燃やしてください 墓はいらない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39755
2014年07月07日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
お墓の前で、泣かないで。そこに私はいない―。大ヒットした『千の風になって』の歌詞に多くの人が涙し共感した。いま「千」ならぬ「ゼロ」になって逝きたいという人が急増している。
■誰のために残すの?
「ここ数年の間に、葬儀についての考え方は、急激に変わってきています」
宗教学者の島田裕巳氏は、こう断言する。
家族の死に際して、あるいは自分の死期を悟ったら、あなたはどんな「逝き方・葬られ方」を選ぶだろうか。
たとえば葬儀や墓については、遺族がなるべく多くの関係者を集めて葬儀を行い、遺骨(焼骨)は代々の墓に納める、というのが一般的なイメージだ。だが、そうした「固定観念」はいま、急速に崩壊しつつある。
そして墓を持たず、遺骨をダイヤモンドに作り替えたり、自然や宇宙に還したりする、新しい「逝き方」が次々と生まれている。
さらには、遺骨を完全に手元から離してしまう「0葬」も登場。島田氏がこれを紹介した著書『0葬―あっさり死ぬ』は、この年明けの出版からすでに5刷と静かなブームとなっており、多くの人の共感を呼んでいる。
いわゆる墓も、葬式もなくていいという、新しい「逝き方」の世界。0葬とはいったい何なのか。
「0葬とは、火葬したらそれで終わらせること。遺骨の処理は火葬場に任せ、一切引き取らない方法です。
多くの火葬場では遺骨の引き取りが原則とされていますが、場所によっては引き取らなくても構わないところがある。もともと西日本では部分収骨といって、遺族は遺骨の一部を引き取り、残りは火葬場で処分されるのが一般的です。処分方法はさまざまですが、契約した寺院の境内や墓地に埋めて供養しているところもあります」(島田氏)
だが、自分の存在が死後にまったく遺らない、あるいは大切な人の遺骨が手元にない、というのは、亡くなる人や遺族にとって、受け入れられることなのか。
「もちろん、私はそうあるべきだというのではなく、こういうやり方もあっていい、と考えるのです。
遺骨は霊魂の抜け殻であり、遺骨がないと故人を供養できないというものでもない。それは墓も同じです」
かつては、病気などで若くして亡くなる人も珍しくなかった。また戦争を経験し、身近な人を亡くした人も多かった。近所には寺院や墓地があり、家庭には仏壇があって、霊魂の存在を身近に感じていた。
「しかし現代人にとって、霊魂は『思い出』と変わらないレベルのものになっています。親が亡くなると、子はともかく孫の代には、霊魂、つまり思い出はすでにかなり希薄になっている」
墓や遺骨があるから、故人のことが思い出されるのではない。
やがて自分を思い出す人もいなくなり、会ったこともない子孫だけになったときにまで、自分の存在の跡を遺す必要はない―。
そうして、この世に未練を残さず、すっきりとお別れしてゼロになりたいと考える人が、いま確実に増えているのだ。
実際、「墓なんかいらない」という人たちのための供養の方法も数多く登場している。墓石を建てずに樹木の下などに遺骨を埋葬する「樹木葬」は、その代表例だ。樹木葬を行っている東京都立小平霊園には、数多くの応募が集まる。
「平成24('12)年から『樹林墓地』を整備し、募集を開始しました。平成25年度には1600体を募集し、競争率は9・9倍。従来型の墓地と比べても人気は高いです。平成26年度も1600体の募集を7月1日から行う予定です」(東京都公園緑地部霊園担当)
具体的にはどうするのか。小平霊園の場合、樹林墓地エリアには、コブシやモミジなど8本の落葉樹が植えられている。樹木の間には、深さ約2mの筒が27基埋められており、底は直接、土につながる。ここに遺骨を入れると、ゆっくりと土に還ることになる。最終的には約1万人の遺骨を共同で埋葬するという。
「樹林墓地エリアに立ち入りはできず、献花台からお参りしていただくようになります。樹木はまだ若木ですが、これから大きくなっていくでしょう。費用は13万1000円です」(同課)
日刊葬儀新聞社社主の朝日音然氏はこう語る。
「樹木葬は最近の流行と思われがちですが、実は日本古来の神道の発想に近いと思います。神式の葬儀は樹木を立てて行うのです。
私が拠点にしている茨城県では、出雲大社の分社が運営する『ふくはら霊園』が樹木葬を扱っています。合同区画なら費用は30万円程度。他所ではペットの樹木葬というものもあって、リンゴの樹を植え、実がなると飼い主に送ってくれたりします」
■何のための葬儀か
山や海に遺骨・遺灰をまく「散骨」を選ぶ人も増えている。墓所に納まり、とどまるよりも、大自然に還って逝きたい―。墓はいらない、というより、大自然を墓とする発想とも言えるだろう。コスモ葬祭の南雲真人氏は、その手順をこう説明する。
「流れとしては、まず通常通り火葬場でお骨にします。その後、お骨をパウダー状にして散骨するのです。
実は、骨の形が残っていないパウダー状にした場合、法的にはどこにまいても規制はありませんが、陸地なら山であれ川であれ所有者の許可が必要です。
一方、私どもが扱っているのは海での散骨。九十九里、横浜、横須賀、江の島の各港に船を所有する業者と提携し、沖合での散骨を委託しています」
この葬儀社では、同じ海への散骨でも2種類のサービスを提供している。
「ひとつは共同散骨といって、業者が遺骨を預かり、沖合に出て散骨をし、その様子を撮った写真と海図を遺族にお渡しするもの。費用は約5万円です。
もうひとつがチャーター散骨で、船をチャーターして遺族の方が立ち会うもの。お花やお酒をまいたりして、よりセレモニー的に行うことができます。費用は約20万円です」(南雲氏)
この散骨の考え方をさらにおし進めた、「宇宙葬」という方法も登場している。
宇宙産業の先進国・米国では、元NASAの技術者が起業し、アルミニウム製の容器に遺骨を封入し、ロケットで打ち上げるサービスを提供している。
国内には、身近な方法で宇宙葬を行う会社もある。「バルーン宇宙葬」を展開するバルーン工房代表の小野寺義博氏はこう語る。
「直径2・2mのバルーン(風船)に粉末状にした遺骨を詰め宇宙に飛ばすと、地上30~35kmの成層圏でバルーンが自然に破裂します。遺骨は偏西風やジェット気流に乗って、世界中に散骨されるというわけです」
もはや特定の山や海にさえ執着せず、一粒の塵となって世界を巡る。何ともすっきりとした旅立ちだ。
料金は遺骨の粉末化が1万2000円、基本料が18万8000円で、トータル約20万円。同社の所在は栃木県宇都宮市で、出張の場合は交通費・宿泊費等の実費が別途必要になるが、すでに仙台、名古屋、大阪、熊本などで150件以上の実施実績がある。
なぜ、いま「すっきりこの世と別れたい」と願う人が増えているのだろうか。前出の島田氏は死を取り巻く環境の変化を指摘する。
「昭和30~40年代には、日本の年間死者数は70万人程度でした。それがいまでは120万人超。火葬場や斎場はものすごく混んでいる。
先日、青森県の八戸市を訪れる機会があったのですが、そこでは斎場が混んでいるため、葬儀の平均時間が約20分だという。斎場での読経は10分ほどで、焼香は代表者だけが行う。あとの人は葬儀の終了後に、会場に残って焼香するしかないというのです」
島田氏は、戦後に整備された「逝き方」の法的・社会的な取り決めが時代に合わなくなってきたことが、こうした事態の一因と語る。
「1948年に成立した『墓地、埋葬等に関する法律』は、墓地以外の区域に遺骨を埋葬してはならない、として、墓を持つことを強制したような側面がある。
同法は火葬も、火葬場以外では行ってはいけない、と定めていますが、ほとんどの地方自治体が条例で土葬を禁止しているので、火葬も事実上、強制されている。現在では遺体の99・89%は火葬されています」
だが高齢者人口の増加にともなって、亡くなる人の数が急増。墓地や火葬場は予約でいっぱいとなり、先述の「20分葬儀」のような事態を引き起こしたのだ。
「さらに、高度経済成長期には、葬儀や墓の費用のインフレも起こりました。
日本消費者協会の'10年の調査では、葬儀費用の平均は約200万円。墓の費用(永代使用料と墓石代)の平均は、都道府県別でもっとも高い東京都で約278万円。葬儀や墓の費用をもろもろ合わせると500万円以上になる」(島田氏)
自分の死後、遺された家族にそれほどの負担をかけてまで、葬儀をしたり墓を建てたりする意味があるのだろうか―。
ましてや、少子化・核家族化で、墓を守り、受け継ぐ人もいないとなれば、墓を持つ意味は一層薄れる。
「昔ながらの葬儀をやって、墓に入る逝き方には、何か違和感がある」「骨も遺さずすっきり逝きたい」と感じる人が急増する背景には、「死の現実」と「送られ方」のミスマッチがある。
そもそも、広く世界に目を向ければ、イギリスなどの火葬(キリスト教では土葬が一般的だが、現在では火葬も普及している)では、形ある「遺骨」に執着しない。日本の火葬場より高い1200℃程度の炎で骨まで焼きつくし、「アッシュ」(遺灰)として、山野にまくなど思い思いの弔い方をすることが、広く社会的に認められている。風に乗って流れていくのも、世界的に見れば決して、非常識な逝き方ではない。
もちろん、本人が旧来型の葬儀や墓にこだわらなくとも、遺族の側が故人を思うよすがが欲しいと願うことはあるだろう。
そんな気持ちに応える新しいサービスも次々に登場している。一例は「遺骨ダイヤモンド」だ。いったいどういうものなのか。スイス企業の日本法人であるアルゴダンザ・ジャパンの山田容子氏はこう説明する。
「弊社では、遺骨から抽出した炭素だけを使って、合成ダイヤモンドを作っています。そのためには、全身の遺骨の5分の1から4分の1にあたる、300gの遺骨が必要になります。
お客さまの大半は女性です。ご主人、お子さまなどを亡くされて、いつまでも肌身離さず一緒にいたいと、ダイヤモンドにして指輪やネックレスとして身に着けられるのです」
0・5カラットのダイヤモンドにすると、費用は98万3000円。さらに上の写真の指輪を作る場合、プラチナ台を選ぶと15万8000円の加工代がかかる。さすがダイヤモンドといったところだが、同社代表の法月雅喜氏は、「富裕層だけでなく幅広い層からのニーズがあります」と話す。
新しい逝き方・送り方。古い形にとらわれない、自分なりの最期を迎える選択肢が、いま広がっている。
「週刊現代」2014年7月5日号より
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