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「内閣府 経済社会総合研究所HP」より
残業代ゼロルール、「長時間サービス残業が横行」という誤解 労働時間上限の量的制限
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140708-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 7月8日(火)3時0分配信
政府が現在見直しを進めている労働時間改革、「ホワイトカラー・エグゼンプション」(white collar exemption、以下「日本版WE」という)に対する評判が悪い。実際、最近も以下の報道があった。
「労働時間規制を外して残業代を支払わず、仕事の成果に賃金を払う『ホワイトカラー・エグゼンプション』に対し、『反対』『どちらかといえば反対』という人は計53%と過半数に達したことが、本社加盟の日本世論調査会が実施した雇用労働に関する世論調査で分かった。反対理由は、長時間労働の歯止めがなくなることへの不安が42%と最多だった。
政府はホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入を新たな成長戦略に盛り込んでいる。同制度に賛成理由は『ホワイトカラーの仕事は、労働時間ではなく仕事の成果で評価されるべきだ』が51%を占めた。賛成派に対象とすべき年収を尋ねると、『一千万円以上』が37%と最多だった。(略)
<ホワイトカラー・エグゼンプション> 一定の要件を満たす労働者に労働時間規制を適用しない制度。働く人の生産性を高めることが狙いで、残業代を支払わず仕事の成果に対して賃金を払う。政府は少なくとも年収1000万円以上で職務範囲が明確で高度な職業能力を持つ人を対象に制度を導入することを、新成長戦略に盛り込んだ。現行制度では管理職への残業代の支払い義務はなく、管理職は対象外となる」(6月29日付東京新聞記事『残業代ゼロ 反対53% 長時間労働拡大に不安』より)
このような不安が出てくる理由は、日本版WEに対する誤解がメディアで蔓延しているためと思われる。日本版WEを正当化する際、まずメディアでよく聞かれるのは、「日本版WEの対象となるのは、年収1000万円以上であり、職務範囲が明確で高度な職業能力を有する者である。国税庁の『民間給与実態統計調査結果』(2012年)によると、年収1000万円以上を稼ぐ者は国内の全会社員の約4%しかおらず、日本版WEの導入で残業代がゼロとなっても多くの国民には影響がない」といった説明である。
このような説明は、日本版WEの一面を伝えているのみで、誤解を招くものである。
そもそも、国民の多くが日本版WEに対して不安を抱いているのは、「年収1000万円以上という基準が引き下がり、年収600万円以上が対象になったら、自分も残業代ゼロで長時間労働を強いられるのではないか」といったシナリオだろう。
しかし、これは完全な誤解である。まず、日本版WEの適用には「本人の同意」等が必要であることはいうまでもないが、産業競争力会議「雇用・人材分科会」の長谷川閑史主査のプレゼン資料(http://goo.gl/ggEP4u)の4ページにも記載があるように、日本版WEの導入にあたっては、長時間・過重労働の防止を図る観点から、「(1)労働時間上限」や「(2)年休取得の下限」に関する量的制限の導入をセットで求めている。13年12月5日の規制改革会議では、年間104日の休日取得や長期連続休暇の義務化を含め、(1)と(2)のいずれか1つ、あるいは複数の組み合わせを要請している。
●労働時間上限等の量的制限の導入
実は、このような労働時間上限等の量的制限の導入こそが日本版WEのコアであり、現行制度のほうが労働者に厳しい。そして、さらに踏み込んでいうならば、経営者側は労働者側よりも交渉力が強いことから、経営側の都合で量的制限が骨抜きにならないよう、労働時間上限等の量的規制を法律で義務付けることが望ましい。というのは、あまり知られていないが、現行の労働基準法では労働時間の上限は存在せず、実質的に意味があるのは残業代規制のみで、日本の労働時間規制は緩いためである。
確かに、労働基準法で労働時間に制限(1日8時間、週40時間)はあるものの、いわゆる「三六協定」(同法36条の労使協定)により、残業代を支払えば労働時間は法的に上限なく延長可能となっている。これが、日本で長時間労働が多く、過労死が多い原因だ。
他方で、欧州では、EU指令で労働時間が厳格に規制されている(28加盟国で国内法化)。例えば、フランス等では、1週間の労働時間は時間外労働を含めて48時間と決められており、残業代を払おうが払うまいが、一部のエリート等を除き、労働時間は延長できない。
その結果、冒頭の図の通り、残業代を支払えば長時間労働の拡大が可能な日本と異なり、フランス等の欧州では週に50時間以上労働を行う就業者は少なく、仕事と子育てといった「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)が実現可能となっているのである。
小黒一正/法政大学経済学部准教授
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