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苦戦・食品スーパー業界、イオン主導の首都圏連合が再編の起爆剤となるか?懸念材料も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140707-00010004-bjournal-bus_all
Business Journal 7月7日(月)3時0分配信
流通業界では1年ほど前から、「イオンが食品スーパー業界の再編に動き出すのではないか」という観測が流れていたが、それが現実のものとなりそうだ。
5月19日、イオンは、丸紅、マルエツ、カスミの4社による「首都圏におけるスーパーマーケット連合」(以下、首都圏連合)の創設を目指し、マルエツ、カスミ、イオン子会社のマックスバリュ関東の3社が持ち株会社を設立し、食品スーパー3社の経営を統合すると発表した。
また、イオンは丸紅と共同出資する特別目的会社を通じて3社の持ち株会社を子会社化し、規模のメリットを追求するという。経営統合により誕生する持ち株会社の売上高は3社単純合算で約5900億円(14年2月期)となり、食品スーパー最大手のライフコーポレーションの売上高約5300億円を抜き一躍、食品スーパー首位に浮上する。さらに持ち株会社は、20年をメドに売上高1兆円、1000店体制(14年2月期の3社計約450店)を目指すとしている。
首都圏連合は、果たして食品スーパー業界再編の起爆剤になるのだろうか。
食品スーパー業界の再編は、岡田元也イオン社長の悲願といわれている。19日の記者会見で岡田氏は「食品スーパーは全国に約1000社あるが、上位5社のシェアは27%にとどまっている。例えば英国では上位5社が76%を占めている。これと比べると、わが国では細分化された状態で同質化競争に明け暮れている。こんな状態で食品スーパーが今後も生き残るのは極めて難しい」と述べ、首都圏連合の創設で「新しい食品スーパーの時代をつくる」と強調した。
業界再編を目指す岡田氏の念頭にあるのは、流通市場における食品スーパーの著しい地位低下だ。過去10年間、食品スーパー業界の売り上げ規模が約20%縮小したのに対し、コンビニエンスストア業界のそれは約30%拡大している。加えて、近年は食品販売を拡大しているインターネット通販やドラッグストアなど異業種との競争も激化、食品スーパー市場は先細り傾向を強めている。
●イオンの危機感
さらに、首都圏連合創設の裏にはイオン自身の危機感もあるようだ。イオン傘下の食品スーパーは子会社と関連会社含め35社あるが、これまで商品の共通化など統一的な取り組みはあまり進んでいない。
例えば、イオンのPB(自主企画商品)「トップバリュ」は、14年2月期の通期売り上げ目標1兆円に対し7410億円と大幅な未達に終わっている。関連会社であるマルエツとカスミも以前からトップバリュを販売しているが、全体の売上高に占める比率はマルエツがわずか0.3%、カスミも3.6%にすぎず、マックスバリュの15%前後に比べると扱いが非常に小さい。
また、イオンは売上高こそ6兆3951億円(14年2月期、以下同)と流通業界トップだが、「食品スーパー事業」の売上高は1兆5539億円。これに対して、ライバルのセブン&アイ・ホールディングスの「食品売上高」は総合スーパー、イトーヨーカ堂とコンビニ、セブン-イレブンの合計だけで3兆1531億円。食品事業に関してはセブン&アイに倍以上の差をつけられている。これは売り上げ規模の大きい首都圏で、緻密な店舗網を持つイトーヨーカ堂とセブン-イレブンの食品販売力に差をつけられているからだ。
そこで、セブン&アイと食品売り上げの差を縮めるためには「首都圏攻勢」がイオンの最優先課題となる。そのためイオンは、13年春にJ.フロントリテイリング傘下の食品スーパー、ピーコックストア(現イオンマーケット)を買収。その後も首都圏に店舗が多いダイエーを子会社化した。首都圏で展開するミニスーパー、まいばすけっとも500店体制となった。だが、ダイエーの業績は低迷続きでいまだに経営再建の目途が立たず、まいばすけっとも、ミニスーパーゆえの品揃えの薄さが足枷となり、売り上げは頭打ちの状態。
一方、約270店と首都圏で食品スーパー最大規模の店舗網を持つマルエツも、苦戦が続いている。ここ5年で店舗数を約1割増やしたにもかかわらず、売上高は微減。営業利益率は1%未満と低迷している。競合が激化するコンビニなどへの有効な対抗策を打ち出せず、競合先に客足を奪われ続けているのが現状。単独での収益向上策には限界が見え始めている。
マルエツに比べ業績が比較的好調なカスミも、半数以上の店舗を構える本拠地・茨城県の人口減少に頭を抱えている。郊外を中心にディスカウントショップとの競合が厳しく、ここ数年は隣接の千葉県や埼玉県にも店舗網を広げているものの、中長期的な成長戦略は描きにくくなっているのが現状だ。
そこで、首都圏連合の創設により、首都圏の食品スーパー事業の規模のメリット追求と経営資源の共有化を図り、ついでにトップバリュの販売も拡大させるというのがイオンの狙いだ。換言すれば首都圏攻勢の手詰まり打開策ともいえる。
●首都圏連合がもたらすインパクト
首都圏連合について、証券アナリストは「2つの意味でインパクトがある」と、次のように分析している。
1つ目は、イオンが従来の資本参加型グループ会社方式から持ち株会社方式による業界再編に方向転換したことで、業界再編に対するイオンの主導力が強まったこと。2つ目は、イオンが売り上げ1兆円を今後の食品スーパー生き残り基準に設定したこと。そして「この2つのインパクトで、首都圏の業界再編は進むだろう。セブン&アイの戦略にも影響を及ぼす可能性がある」と評価している。
だが、事情に明るい流通業界関係者の間では、「こんな状況で、首都圏連合が食品スーパー業界再編の起爆剤になるのか」との見方が支配的だ。
これまでイオンは、買収した企業の独立性を尊重する「連邦経営」でグループの一体化を目指してきた。首都圏連合を共同持ち株会社のスキームにしたのも「各社の独立性を担保するため」(マルエツ関係者)といわれている。しかし「マルエツとカスミの社風は水と油。経営統合はできても、事業統合はできない」(業界関係者)との声がある。
さらに、イオンや丸紅と資本関係のない食品スーパーはいうに及ばず、イオン関連会社のいなげやとベルク、丸紅関連会社の東武ストアと相鉄ローゼンなども今回の連合創設には参加していない。「グループ内でさえ参加はたったの3社。首都圏連合と大風呂敷を広げた割には、中身が貧弱すぎる」(同)と、辛辣に評されるのも無理がない。
加えて、首都圏食品スーパーの経営者にはライフコーポレーションの清水信次会長、ヤオコーの川野幸夫会長、オオゼキの石原坂寿美江会長などを筆頭に、独自の経営哲学を持ったアクの強い人物が多く、「業界再編の必要性で意見が一致しても、方法論では議論百出」(同)の背景もある。
流通業界担当の証券アナリストは「成否は、3社の経営統合の成果をいかに早く出せるかにかかっている。成果が上がれば、様子見をしているイオングループ内外の食品スーパーが連合参加を求めてくるだろう。その時点で、業界全体の再編気運が出てくる可能性はある」と分析している。
果たして今後、食品スーパー業界はイオンを中心として再編が加速していくのか、その動向から目が離せない。
福井晋/フリーライター
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