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アマゾンの新スマホは、なぜ脅威なのか?一機能に秘められた「検索の王者」への野望
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140703-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 7月3日(木)3時0分配信
また新しいスマートフォン(スマホ)の発表か? そう思われた方も多いかもしれない。
6月18日、アマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾスCEOが、アマゾン初のスマホ「ファイアフォン」の発売を発表した。日本での発売は未定だが、アメリカでは7月25日から販売が開始されるという。AT&Tが独占販売し、価格はSIMフリー版が649ドル(約6万5000円)、2年契約の場合が199ドル。
発表後のさまざまな反応を見ると、この商品は割高な高機能スマホであり、あまり売れないのではないか、という推測記事が散見されるが、戦略コンサルタントの視点で見ると、競合商品にとってファイアフォンの脅威はすさまじいように思える。
この商品は、実に戦略的に考えられた、ある意図をもった商品なのだ。そしてその意図が成功した場合、世の中を劇的に変えてしまう大きな変化をもたらす。
それを理解するカギは、ファイアフォンに搭載される新機能「ファイアフライ」である。これは画像ないしは音声を手がかりに、元の商品を検索する機能だが、わざわざ本体側面に専用ボタンがついている。このボタンを押してファイアフライを起動すると、カメラやマイクで周囲の映像や音を認識することができる。例えば目の前の本の表紙をファイアフライに認識させれば、通販サイト「アマゾン」上の同商品の売り場にジャンプする。
本だけではない。アメリカにおけるアマゾンは、日本でいえば楽天のような同国最大のショッピングモールである。ファイアフライが認識した画像や音声に基づき、アマゾンで販売される約7000万点の商品の中から瞬時に検索され、販売ページが表示される。
この情報が発表されると、リアル店舗で見つけた商品をネットで購入するショールーミングが増加するとか、アマゾンへのオフラインtoオンライン(ユーザをリアル店舗からネットへ誘導すること)が強化されるといった反応がすぐに広がったが、影響はそれだけの範囲に収まらないところが着目すべき点である。
つまりファイアフォンを持っていれば、小売店でなくても、街中で「これが欲しい」と思った瞬間に検索できる。友人が履いている靴はいいなと思ったら、その場で検索。レストランで食事をした際のお皿のデザインがいいなと思ったら、その場で検索。友達の家に招かれて、そこで見かけた優れモノのグッズも、その場で検索。こうして、ショールーミングどころか、世の中全体が商品のショールームに変貌する。
ファイアフライではカメラに加えてマイクで音声を認識して検索できる仕様になっているのだが、それを用いれば街中で聞いたBGMも購入できる。待合室でちょっと見ていた番組が気になれば、それも検索できる。現状でも24万タイトルの映画やテレビ番組が特定できるそうなので、以前途中で見逃した番組でもオンデマンド視聴をすることができるようになる。
●「検索の王者」への道
ポイントは、そのような購買行動をする消費者層がどれくらい増えるのか? そしてそのように購買行動が変わると、消費額がどれくらい増えるのか? という点だ。
仮に、そのような消費者が多く、かつ消費額も大幅に増えることが証明されれば、ファイアフライは大化けする。なぜなら、そのことだけを証明できれば、あとはファイアフォンが売れなくても、ファイアフライをアプリとして普及させれば、アマゾンはグーグルの代わりに「検索の王者」になれるからだ。
実際、電子書籍のデファクトになりつつあるアマゾンのタブレット「キンドル」も、タブレットとしてのシェアは2%程度にすぎない。だが、アプリとしてのキンドルが普及しているおかげで、誰もが電子書籍といえばキンドルを使うようになっている。それと同じ構図を実現できれば、アマゾンにとっては成功といえる。
念のために強調しておくと、ECサイトとしての売り上げが増えるだけを出口と考える必要はない。ECサイトの売り上げも増えるが、他のECプレイヤーやオークション出品者に対して、グーグルのように送客課金をすることもアマゾンにはできるようになるわけだ。
●あえて高価格セグメントを選んだ理由
では、ファイアフライが消費者にとって有効かどうかを証明するには、どうすればいいのか?
そのためにまずは、消費好きで消費額が多い消費者セグメントに絞って、そこでファイアフライがどれほど使われるかを確認すればいい。高機能で高価格セグメントのスマホを販売すれば、逆説的に、あまり消費におカネをかけない、検証にはノイズとなる消費者層を足切りすることができる。そう。ここで戦略思考としては、割高で普通の人からは「売れるとは思えない」商品設計をした意図がなんだったのかという点に、思考ループが戻るのである。さすがはアマゾン、グーグルやアップルに対抗できる第三勢力のリーダーである。
ところで蛇足だが、「街中で気に入った女の子を見つけたら、フェイスブックで友達申請できるフェイスブックスマホが発売されればいいのに」と、筆者は今回のファイアフォン発売の記者発表を見て思ったことも付け加えておく。
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