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あべのハルカス、百貨店に早くも黄色信号?苦戦で社長更迭、「ただの通過点」の懸念も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140702-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 7月2日(水)3時0分配信
日本一の超高層ビル「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)が全面開業して約3カ月が経過した。近畿日本鉄道(以下、近鉄)が運営するあべのハルカスには、全面開業した3月7日から5月31日までの間で約1124万人が訪れた。年間来場者数4740万人という目標を1%程度上回る1日平均13万人の人出となり、まずまずの結果となった。
しかし、全面開業から3月31日までの25日間の来場者が1日当たり14万人強を集めていた当初の勢いは鈍化してきている。1000万人の達成は76日目で、東京スカイツリータウン(59日目)を下回るペースだった。
来場者数の内訳は、売り場面積が10万平方メートルと日本最大規模の百貨店「あべのハルカス近鉄本店」が974万人、展望台「ハルカス300」が70万人、レストランが人気の大阪マリオット都ホテルが19万人、あべのハルカス美術館が8万人など。展望台は週末を中心に当日券の購入待ちが1時間以上になる人気ぶりだ。
あべのハルカスは地下5階。地上60階建てで、高さ300メートル。「ハルカス」というネーミングは「心を晴れ晴れさせる」という意味の古語「晴るかす」に由来する。総事業費は1300億円で、10年1月に着工し、12年8月には横浜ランドマークタワー(296メートル)を抜き国内で最も高いビルとなった。13年6月に部分開業し、14年3月に全面開業の運びとなった。
あべのハルカスが立地する大阪の阿倍野・天王寺エリアは梅田や難波に比べて魅力的な商業施設がなかった。近鉄沿線の人口が減少するなか、オフィスも入る巨大駅ビルの建設で、近鉄は沿線の魅力アップを狙う。
●苦戦のあべのハルカス近鉄本店
しかし、こうした狙いとは裏腹に、百貨店であるあべのハルカス近鉄本店は苦戦を強いられている。全面開業から5月末までに974万人が訪れたが、15年2月期の年間来館者の目標は4500万人、1日当たり12万人なのに対して実績は同11万人で下振れした。ゴールデンウィーク期間中は5月4日に20万人が来館し、1日としては過去最高の入館者数を記録したが、開業時の目新しさが薄れるとともに消費増税の影響もあり、客足は伸びなかった。
近鉄が展開する近鉄百貨店全体の14年2月期連結決算の売上高は前期比2.3%増の2770億円、本業のもうけを示す営業利益は11.7%減の30億円だったが、13年6月に先行開業したあべのハルカス近鉄本店の苦戦が原因だ。部分開業後の13年10月、同店の14年2月期の通期売上高(専門店部分を含む)の目標を1040億円から1000億円に下方修正したが、実績は1000億円をさらに8%下回る916億円だった。全面開業した3月は消費増税前の駆け込み需要で宝飾品などの売れ行きが伸び、売上高は前年同月の2倍だった。その反動で4月の売上高は同5割増にとどまった。
開業効果が薄れるにつれて、来客数は今後さらに落ち込むとみられているが、親会社の近鉄は売上目標を達成できなかった近鉄百貨店の飯田圭児社長を更迭し、5月22日付けで高松啓二副社長を社長に昇格させた。新経営トップの喫緊の課題は、ハルカス本店のテコ入れだ。同店の売上高は近鉄百貨店全体の売り上げの約33%を占めるだけに影響は大きい。
ハルカス本店の15年2月期の売り上げ目標は当初、1450億円と12年3月期(790億円)の2倍近くに引き上げる予定だったが、大幅に見直さざるを得なくなった。目標を前期比37%増の1262億円に引き下げた。この目標の必達が新社長の使命となる。
天王寺・阿倍野地区の1日の乗降客数は77万人で梅田地区の220万人の3分の1、難波・心斎橋地区の110万人にも大きく水をあけられている。大阪ではここ数年、百貨店がひしめき合う梅田地区で三越伊勢丹やグランフロントが開業し、商業施設の一極集中が加速している。開業効果が薄れれば、阿倍野はこれまでのように「通過点になってしまう」(百貨店業界関係者)との指摘もある。
●第2の志摩スペイン村との懸念も
近鉄は神社・仏閣を抱える奈良と伊勢へのアクセス向上を目的に設立された企業で、「観光鉄道」の名残は今もある。近鉄の14年3月期の連結決算は純利益が前期比23%増の245億円と過去最高を更新した。伊勢神宮の20年に1度の式年遷宮の効果で、観光特急「しまかぜ」の予約が取れないほどの人気となり、22年ぶりに旅客人員が前年度実績を上回ったことが収益を押し上げた。
その近鉄が運営する志摩スペイン村は、総合保養施設整備法(通称・リゾート法)の施行に合わせて策定された三重サンベルトゾーン構想に基づき、大阪難波、大阪阿倍野橋を起点とする電車の終点にあたる志摩に、複合リゾート施設として1994年4月に建設された。テーマパーク、ホテル、温泉で構成される。開業にあたり志摩線の複線化、志摩磯部駅および鵜方駅の改良、新型特急「伊勢志摩ライナー」などに合計480億円を近鉄は投じており、志摩スペイン村の初期投資と合わせて1280億円を投下した。
開業1年目には426万人の入園があったが、その後は減少の一途をたどり赤字経営が続いた。そのため近鉄は06年、志摩スペイン村の資産を買い上げて減損処理を行い、旧会社と新会社に分離する支援策を実施。新たに設立された運営会社の志摩スペイン村が、近鉄グループのレジャー事業を担当する近鉄レジャーサービスから営業を全面委託される形態に移行している。これにより志摩スペイン村の業績が近鉄本体の決算に直接、影響しないかたちになった。
志摩スペイン村は、近鉄には喉に刺さった骨のようなものだ。期せずして、スペイン村への投資額と、あべのハルカスへのそれがほぼ同額なこともあり、市場関係者の間では「あべのハルカスは第2の志摩スペイン村になる」との懸念も広がっている。
編集部
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