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家計調査と雇用
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52610584.html
2014年06月27日 在野のアナリスト
総務省発表の5月消費者物価指数(CPI)が、前年同月比3.4%上昇となり、32年ぶりの高い伸びとなりました。2%が増税分とみられますが、エネルギーコストの上昇など、円安に伴うコストプッシュ型のインフレが厳しくなってきました。日銀のシナリオ通り、として追加緩和期待がさらに後退。むしろ早期引き締めが視野に入ったとして円高となり、株価は大きく調整しています。
同じく発表された家計調査で、消費支出は実質で前年同月比8.0%減。これが異例なのは、増税前の駆け込み需要の反動減、と説明されてきた消費減ですが、4月の4.6%減から大きく拡大した。住居関連の落ちこみも大きいですが、自動車などは増税前の駆け込み需要ではなく、円安修正に伴う海外メーカーの購入の減少が大きかったのでしょう。5月の小売業販売額が0.4%減と、前回増税時の5月より落ち込みは緩やか、としますが、CPIが3.4%上昇しているのですから、当然その分は販売額が上ぶれしています。つまり前回増税時とは状況が違うのですから、取り除かなければなりません。そもそも、勤労者世帯の実収入は4.6%減なのですから、消費マインドは確実に悪化しているにも関わらず、総務省の基調判断が「このところ持ち直している」は異常です。
メディアはこちらに大きく反応ました。厚労省発表の5月有効求人倍率が1.09倍と、約22年ぶりの高さ、というものです。しかし求職者が減って、求人数が増えた面もありますし、正社員の求人は少ない。そもそも22年前は正社員を求人していたのであり、数値だけ比較しても無意味です。総務省発表の完全失業率で、前月比0.1pt低下の3.5%となり、16年ぶりの低水準、と伝わります。しかし当時との比較で、男性雇用者数が97万人減、女性雇用者が278万人増となっており、この辺りが雇用のミスマッチにつながっている。つまり女性は事務職を希望し、現場作業や深夜作業には向かない。このため企業が求人をだしても、集まらないことが最近の傾向としてあります。
しかも正社員でなく、短期の労働力を増やしてきた企業は、急な経済環境の変化に弱くなってしまった面も影響しています。つまり契約の切り替え時、よりよい条件の職に移ってしまう。そのため同一条件で募集をかけても、人が集まらない。労働力の使い捨てが、いざというときに対応能力のなさ、を露呈してしまったのが、現在です。ただしこれが賃金上昇や、待遇改善にはつながりにくい。デフレモデルを引きずっており、今回の統計でも示された内容は、企業をより防衛的にさせるでしょう。それが『消費の蒸発』という恐ろしい事態です。
昨年の税収が1.6兆円上ぶれ、と伝わります。甘利経済担当相が「法人税減税の原資に」と述べていますが、単年度の要因で財政を考える、という短絡的発想です。そして最も警戒すべきは、昨年は円安駆け込み需要、増税駆け込む需要、とダブルの要因で消費が上ぶれた面が大きい。そして今年、両方が剥落するばかりか、実質の収入が大きく下がっているように、消費拡大は見込めない。益々、インフレ負担が重くなり、今年の『消費の蒸発』を促しかねない状況です。
発表される統計をみても、コストプッシュ型のインフレ傾向であることが鮮明です。これを「日銀のシナリオ」通りだとするなら、日銀は打つ手を失うのでしょう。つまり追加緩和しても、円安がすすめば消費が萎み、引き締めると円高となり、株価下落と金融資産の減少を招く。どちらに振れても芳しくありません。今日の株価下落は、週末要因と高値による益だし、との見方もありますが、そもそも半期のドレッシングを控えて、このタイミングで益だしすることが、今の水準の落ち着きどころのなさ、を示すのでしょう。経済指標から読み解ける、今年の消費の傾向。それはより投資家層を警戒させるに十分、ということになるのかもしれませんね。
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