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"人口4300万人"ああニッポン30年後の現実【第2部】それはアッという間の出来事だった。これからの30年で「消える仕事」「なくなる職業」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39659
2014年06月27日(金) 週刊現代 :現代ビジネス
■何もかもなくなる
「たとえば人口が3分の2に減少すれば、市場は同様に3分の2にスケールダウンする。そうなれば、人口減少に比例して日本の企業が次々に消えていくのは当然のことです」
富士通総研上席主任研究員の米山秀隆氏は、そう警鐘を鳴らす。
人口減少社会のなかで、仕事が消えてなくなる―。それには大別して2つのパターンがある。ひとつは働く人間がいなくなり、会社や組織が消えてしまうパターン。もうひとつは客がいなくなり、市場そのものが消滅してしまうパターンだ。これからの日本は、その双方の危機と否応なしに直面することになる。
すでに目先の問題として顕在化しているのは、前者のパターン、つまり人手不足の問題だ。
今年3月、大手外食チェーンのワタミが、従業員の手当てができず「和民」や「わたみん家」の60店舗を閉店することを発表したのは記憶に新しい。同様に、第1章でも触れたように、牛丼チェーンの「すき家」も人手不足が原因で休業が相次いでいる。これらの外食産業にとって、人口減少は避けがたい課題として重くのしかかることになるだろう。前出の米山氏はこう語る。
「これらの業種は、デフレ経済のもと、低賃金で労働力を確保することで成長してきました。そのやり方自体に限界がきている今、ただでさえ少なくなる働き手が、あえてその職を選ぶとは考えにくいですね」
デフレ経済下で安価な商品を提供することで成長してきた企業は数多い。「すき家」「吉野家」など牛丼チェーン以外にも、たとえば「100円マック」で一世を風靡したマクドナルドは、低価格競争からどう脱却していくかが課題となっている。
そして外食産業のみにとどまらず、デフレ競争の勝者とも言うべき存在のユニクロ(ファーストリテイリング)なども、これまでの低賃金を前提にした薄利多売商法では、早晩、行き詰まるおそれが出てきた。
また、人手不足が加速すれば、宅配をはじめとした運送サービスも存続の危機を迎えることになる。現在、運送業界でも労働力の不足は深刻な問題だ。宅配サービスの主な担い手はトラック運転手だが、全日本トラック協会によれば現時点でもドライバーの約7割が40歳以上。30年後、ドライバーは超高齢化し、激減することは容易に想像できる。人口問題に詳しい明治大学政治経済学部の加藤久和教授はこう語る。
「このまま人口減少が加速すれば、配達などの輸送サービスは間違いなくマヒすることになります。宅配を頼んでも運ぶ人がいないので、『そんなところまでは行けません』と言われてしまうケースも出てくるでしょう」
運送業が機能しなくなれば、今は成長産業に見えているネット通販も壊滅する。商品を受注しても、それを届ける人がいなくなるからだ。近い将来、日本の物流は回復不能に陥ってしまう。
危機はさらに、宅配のみならず、あらゆるサービスに波及していく。たとえばゴミ収集車などの稼働率はグンと下がり、家の前にはゴミ袋が山積みにされる。街全体が「ゴミ箱」と化してしまうのだ。緊急事態が起きても救急車や消防車が出動できないということにもなりかねない。そして、いざ病院にたどり着いても肝心の医者や看護師がおらず、治療を受けられずに取り返しのつかないことになるケースが増えていく。
道路や橋などのインフラを整備する人もいなくなり、街は荒廃の一途を辿ることになるだろう。やがて人生の最期を迎えたとき、近所には寺もなく、僧侶も葬儀業者もいないという状況に陥る。もはや人手不足でまともな葬式すらできない、そんな時代がやってくるのだ。
つまり、人手不足は社会の基礎を支える人材がいなくなるということを意味している。それを補う劇的な進歩、自動化、オートメーション化などの技術革新でもない限り、将来の日本は、日常生活を送ることすらままならない社会となってしまうのだ。
■どこにも逃げられない
働く人間がいなくなることで既存の職業がなくなってしまう一方、客もいなくなるため、市場ごと消滅するケースも頻発する。たとえば、スーパーや百貨店などの小売業は、人口減少による内需不振で苦境が深まる。今後主な購買層となるのが、若者に比べて消費活動が少ない高齢者であるからだ。いまや私たちの生活に欠かせない社会インフラになったコンビニですら淘汰されていくだろう。前出の加藤氏がこう語る。
「近年、国内の大型百貨店やスーパーは次々と閉鎖されています。一時期、自治体は競いあうように大型ショッピングモールを誘致しましたが、もうそんなことをしてもお客さんは来ません。また、小売業自体が衰退すれば、生活用品を買うために店に足を運んでも、モノ自体がないという事態になってしまう」
各自治体の人口が減れば、鉄道やバスなど公共交通機関を利用する人も激減する。そうなれば、各社は採算を合わせるために運行本数を減らさざるを得なくなってしまう。地方の路線は乗る客も、動かす運転手もいなくなり、軒並み廃線と化すだろう。ヘタをすれば、JRですら危ない。JR北海道をはじめ、ただでさえ赤字体質の地方JR各社が未来永劫生き残っている保証は、どこにもない。最終的には、誰も使わなくなった線路が放置され、忘れられたように荒廃していく風景が日本中に溢れることになる。
交通機関の問題は、地方のみに起こるものではない。3~5分間隔で運転されている東京の山手線ですら、将来的に人口が3分の1になれば15分に1本で十分になる。また、都内の地下鉄も今の数は必要なくなり、多くが廃線に追い込まれる。さらには地方に人がいなくなるWパンチで、ビジネス利用が多くを占める新幹線の本数も会社が激減するにつれて1時間に3本程度まで減るだろう。
「人口減少が解消されなければ、日本中のいたる地域で鉄道やバスの本数が減ります。一日に5本だったものが3本になり、1本になり、運行停止してしまう。このままでは買い物のために交通機関を利用したくても、移動すらできなくなります」(加藤氏)
また、少子化が進行するなかで、大学経営はいままで以上に苦境に立たされることになる。'09年に大学への入学希望総数が入学定員数を下回る「大学全入時代」に突入したが、国立大学の民営化が叫ばれる中、このままでは旧帝大として名を馳せる九州大学や東北大学など地方の名門大学が生き残るのは至難の業。もちろん、私立大学はほぼ全滅し、立教大学、明治大学などの六大学の一角を占める大学まで同じ状況に陥ってしまう。早稲田大学、慶応大学などは生き残るかもしれないが、競争相手の絶対数が少なくなるため、学力の低下は避けられない。東大でさえ、さほど勉強ができなくても入れる時代がやって来るだろう。
さらに人口減少は、保険産業にも暗い影を落とす。前出の米山氏は、こう語る。
「人がいなくなる社会では、保険加入者は当然減る一方です。生命保険も、加入者が減れば業務を縮小せざるを得なくなるでしょう。人口に占める高齢者の割合が増えれば死亡保険金や医療保険の支払いが急激に増える。一部の企業はそれを見越して株式会社化し、市場から集めた資金で海外企業を買収していますが、他の保険会社は目立った手をまだ打っていない。このまま人口減少がすすめば、いずれ生命保険会社も淘汰されるところが出てくるでしょう」
国によって強固に守られ、安泰と思われている大手金融機関すら存続が怪しいということだ。預けられたおカネを運用し、利ザヤを稼いでいる銀行も、預金者がいなくなれば手数料も入らず、途端に経営の危機を迎えることになる。
結局、経済とは人口の規模によって大きく左右される。人がいなくなれば、どんな産業、業種も壊滅的打撃を受けるほかないのだ。
「たとえば音楽などのコンテンツビジネスも、売り上げの大半を占めるJポップは若者が対象なので、顧客が減少する一方で、衰退は避けられません。演歌にしても、あまりに『日本的』であるがゆえに、海外展開はほぼ不可能ですし、ビジネスとして生き残ることは難しいでしょう」(米山氏)
すでに視聴率低迷に苦しんでいるテレビ局も、危機的な状況を迎える。民放各社は人口減少により広告料収入が激減し、番組制作が立ち行かなくなってしまう。行き着く先では、民放はおろかNHKすら消滅する日がやってくる。先月、NHKの'13年度受信料収入が42億円減だったことが発表されたが、これから迎える人口減少社会の中、NHKも、それとは比較にならない深いダメージを受ける。広告費もない、受信料もないでは、まともに番組も作れない。日本からテレビ局がなくなる日も近い。
人もモノも、すべてが目の前から消え去り、どこにも逃げ場がなくなる。これから日本が迎えるのは、未曽有の「不毛社会」なのだ。
「週刊現代」2014年6月21日号より
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