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破綻の商工ローンSFCG、会長無罪確定の衝撃 検察が完敗した“スマートな”司法テロ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140627-00010005-bjournal-bus_all
Business Journal 6月27日(金)3時0分配信
商工ローン大手SFCG(旧商工ファンド)の元社長兼会長、大島健伸氏(66)は経営破綻前に資産を隠したとして起訴されていたが、4月30日、東京地裁は民事再生法違反(詐欺再生)と会社法違反(特別背任)について無罪を言い渡した。東京地検は5月14日、「東京地裁の判決を覆すのは困難」との理由で東京高裁への控訴を断念。これらの容疑については大島氏の無罪が確定した。
一方、大島氏の弁護側は14日、虚偽の債権譲渡登記をした電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪について懲役1年6月、執行猶予3年(求刑・8年)とした地裁判決を不服として東京高裁に控訴した。高裁で同罪についてのみ審理が続く。
大島氏はSFCGが民事再生手続きの開始決定を受ける約2カ月前の08年12月、SFCGが保有する簿価約418億円の不動産担保付貸付債権を無償で親族会社の白虎に譲渡し、SFCGと債権者に損害を与えたとして詐欺再生罪、特別背任罪で起訴された。
公判では、(1)SFCGに倒産の恐れがあり、それを被告が認識していたか、(2)債権が実質的に無償で譲渡されたか、の2点が争点となった。田村政喜裁判長は、法人税が延滞されていたことなどから、SFCGに倒産の恐れがあり、被告も認識していたと認定。一方で債権譲渡に伴い、SFCGが白虎から受け取るべき約75億円が、SFCGの関連会社に対する債権(計約97億円)と相殺されているとして「無償ではなかった」と判断し、資産隠しの成立を認めなかった。ただ、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪については、執行猶予付きの有罪とした。
史上空前の資産隠しと大騒ぎになったSFCG事件は、詐欺再生については無罪が確定した。法律の表にも裏にも精通した法律のプロである大島氏は、起訴されることを見越していた。大島被告の“裏技”に検察は完敗した格好となった。
●法律を使ったスマートな取り立て
“カネ貸しの帝王”として名をはせた大島氏は、いかにして法律の抜け穴に通じたプロになったのか。大島氏の半生を振り返ってみよう。
大島氏は1948年2月、大阪府生まれの団塊の世代である。70年、慶應義塾大学商学部を首席で卒業後に三井物産に入社。独立志向が強く77年に三井物産を退社し、大手企業が進出しない金融業に目をつけた。消費者金融(サラ金)や手形割引(マチ金)は群雄割拠状態だったため、すき間分野になっていた零細事業者向け金融の商工ローンを手掛けることにし、商工ローンで急成長していた京都の日栄(現・日本保証)で金融業のイロハを修業した。
金融業の生命線は貸付金の回収にある。当時、日栄は「腎臓1個300万円で売れ、目ん玉1個売れ」という恫喝的取り立てで、全国に悪名を轟かせた。だが、大島氏は日栄のそのような恫喝取り立ては見習わず、法律を使ったスマートな取り立てを目指した。
SFCGの回収の手法は、白紙委任状+公正証書+連帯保証人の3点セットである。最大の特徴は強制執行できる強制執行認諾条項付公正証書にしておくことだ。公正証書とは法務大臣から指名された公証人が作成する法律文書で、これがあれば、裁判所の判決がなくても財産の差し押さえや強制執行ができる。金銭消費貸借契約書の裏にカーボン紙を挟んだ委任状をセットし、融資契約にサインすると、自動的に複写されて委任状が出来上がる仕組みになっていた。委任状があれば債務者本人でなくても公証人に公正証書を作成してもらえる。こうしたやり方で、債務者・保証人の預金や給与を差し押さえ可能な強制執行認諾条項付公正証書を大量に作成した。
SFCGが年間に作成していた公正証書は4万件以上。これは全国の公証人が作成した金銭貸借関係の公正証書24万件の6分の1を占めた。公正証書を飛び道具にして、給与を差し押さえ、不動産を押さえていった。債務者には、借金すると同時に不動産に根抵当権設定仮登記が行われているという認識はなかった。強力な弁護団をバックに法律に疎い債務者や連帯保証人を法律でがんじがらめにして、法律を使って貸付金を回収していった。こうした手法は、法律を悪用した「司法テロ」と呼ばれた。
SFCGがわが世の春を謳歌できたのは、06年に改正貸資金業法が施行され、貸金業の規制が強化されるまでだった。利息制限法を超えた利息の返還を求める過払い金請求訴訟の敗訴が続き、経営を圧迫した。トドメとなったのが、08年に経営破綻した米投資銀行、リーマン・ブラサーズによる猛烈な貸し剥がしである。これでSFCGは新たな資金調達ができない状態になった。
SFCGは09年2月に、東京地裁に民事再生手続き開始を申し立てた。あまりの乱脈経営に地裁は09年3月に再生手続きを廃止、破産手続きに移行した。負債総額は3380億円に上った。
●財産隠しの実態
立件された418億円に上る資産隠しは、大島氏が倒産前に蓄財した資産のほんの一部にすぎなかった。SFCGの破産管財人に就いた瀬戸英雄弁護士は09年4月、「極めて悪質な財産隠し」であるとして、以下の実例を明らかにした。
「民事再生申し立て(09年2月)前の4カ月間に、不動産担保付貸付債権や株券など約2670億円のSFCGの資産を、大島元会長の親族会社7社に無償や格安で譲渡した。大島元会長が自宅にしている都内屈指の高級住宅街、東京・渋谷区松涛の建物(地上2階、地下2階)と空手道場は、妻が代表取締役を務める不動産会社の所有。SFCGは『ゲストハウス』として使うという名目で家賃を負担していた。1カ月当たり1525万円の家賃を08年10月からは3150万円に引き上げて、妻のカンパニーに払った。他の役員の報酬は月額30万円だったにもかかわらず、08年8月から大島元会長自身の役員報酬を月額2000万円から9700万円に増額した」
松涛にある“カネ貸し帝王”の王宮と呼ばれた堅牢な石造りの高塀に囲まれた超豪邸は、破産管財人に8800万円支払うことで話がまとまり、大島ファミリーが取り戻している。
法律の裏に精通した大島氏は、裁判所が有罪にできない手口を知り尽くしていた。東京地裁の判決に続く東京地検の控訴断念が、それを物語っている。
編集部
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