★阿修羅♪ > 経世済民88 > 667.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第81回 ECBのマイナス金利政策(週刊実話)
http://www.asyura2.com/14/hasan88/msg/667.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 6 月 24 日 16:02:45: igsppGRN/E9PQ
 

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第81回 ECBのマイナス金利政策
http://wjn.jp/article/detail/0631611/
週刊実話 2014年7月3日 特大号


 欧州中央銀行(ECB)が、ユーロ域内の銀行が自行(ECB)に余剰資金を預ける際の金利を「マイナス」にするという、いわゆるマイナス金利政策の実施を決断した。

 ECBの「金融的実験」は、日本の今後を考える際にも極めて参考になりうるので、本連載でも取り上げておきたい。

 ドイツ人ビジネスジャーナリストであるウォルフガング・ムンチャウ氏が、英紙フィナンシャルタイムズにおいて、イタリア経済について論評し、
 「レンツィ首相がいくら成果を上げようとも、ユーロ圏のインフレ率が直近の平均値2%から1%まで低下すれば、イタリアは債務不履行(デフォルト)の道をたどることになるだろう。同国では、日本のような債務水準と経済成長率、インフレ率の組み合わせや、ユーロ圏周縁国のような金利水準に耐える余裕はない('14年4月7日 [FT]緊縮策に抵抗する仏伊新首相の険しい道)」
 と、書いていた。

 現在のイタリアの失業率は、直近で12.6%と、極めて高水準である。ギリシャやスペインと比べると「良く」見えてしまうが、12.6%の失業率とは、過去の日本人が一度も経験したことがないレベルの雇用環境の悪化になる。

 もっとも、イタリアの長期金利は2.76%と、一年前(4.6%)と比べてむしろ「低下」している。すなわち、国債が買い込まれているのだ。

 さらに、消費者物価レベルのインフレ率は4月が0.5%、3月が0.3%、2月が0.4%と、超低迷状態にある。

 長期金利の低下と、インフレ率の低迷。要するに、現在のイタリアはデフレ化しつつあるのだ。

 また、「ユーロ圏の直近のインフレ率」は、すでに2%どころか、1%を切っている。少なくとも、昨年10月以降のユーロ圏のインフレ率は、毎月1%を下回っているのだ(4月は0.7%)。

 ムンチャウ氏の主張は、恐らく下記の主旨だと思う。
 「インフレ率が低迷し、名目GDPが伸びなくなると、イタリア政府の税収が減り、財政赤字が拡大し、政府の負債対GDP比率が悪化し、国債金利が急騰してデフォルトする」
 イタリアはユーロ加盟国であるため、日銀やFRB、イングランド銀行のように「中央銀行の国債買入」で金利を引き下げることは不可能だ。少なくとも、イタリア政府の勝手にはできない。

 ムンチャウ氏の主張のポイントは、例により「国債金利が急騰して」の部分になる。

 国債金利が上昇するためには、金融市場に「お金の借り手」が十分に存在しなければならない。民間企業や家計の資金需要が乏しく、反対側で国民が預金ばかりを増やすとなると、日本同様に銀行の貸出先が「国債」に偏り、国債金利は上昇しない。
 と言うより、現状のイタリアの国債金利の劇的な低下(何しろ、一年間で半分近く落ちた)は、民間の資金需要が国内に十分には存在しない、ということを示唆しているのではないか。

 結局のところ、ムンチャウ氏にしても「セイの法則(供給はそれ自身の需要を創造する、という古典派経済学の仮設)」や「民間には常に十分な資金需要がある」ことを前提にしており、現在の環境に対応できていないように思う。

 イタリアのみならず、現在はユーロ加盟国の多くはインフレ率が低迷している。結果、ユーロ圏の中央銀行であるECB(欧州中央銀行)は定例理事会において、ユーロ高とデフレ化を阻止するために、ついにマイナス金利導入を決定したのである。

 ECBは現在、ユーロ域内の企業向け融資を増やすことを公約した銀行に対し、最長4年満期の低利資金を供給している。とはいえ、不良債権化を恐れるユーロ域内の銀行が、ECBが供給したお金を、再び「ECBの当座預金」に預けてしまうと、物価には何の影響も与えない。

 日本も同様だが、ユーロ圏もまた、中央銀行が金融政策を拡大しても、銀行から民間にお金が貸し出されず、物価が低迷するという問題を抱えているのだ。

 というわけで、ECBは域内の銀行が「ECBの当座預金」に余剰資金を預けた場合、金利を「徴収する」決断を下した。お金を預けた方が、金利を支払わなければならないという話で、まさにマイナス金利政策である。

 今後、ユーロ域内の銀行は、資金をECBで眠らせておくと、金利を「支払う」ことになるため、民間への貸し出しは伸びる“はず”だ。

 怖いのは、ここまでやってもユーロ域内で銀行から民間への貸し出しが増えないケースである。

 銀行側に融資の意思があったとしても、果たして借り手(企業、家計)側に資金需要が存在するのか。民間に資金需要がない場合、銀行は余剰資金で国債を購入し、各国の国債金利は更に低下するだろう(まさに「日本化」だ)。

 さらに、銀行から民間にお金が貸し出されたとしても、それが果たして「所得」を生み出すよう使われるのか、という問題もある。

 民間が借り入れたお金でモノやサービスを購入せず、株式や土地への「投機」に回してしまうと、物価には直接的には影響を与えない。モノやサービスが買われない以上、国民の所得もほとんど創出されない。所得とは、国民が働き、生産したモノ、サービスに誰かが支出をしない限り生まれないのだ。

 ECBのマイナス金利政策は、
 「銀行に強制的にお金を貸し出させれば、融資を受けた民間がモノやサービスの購入に回し、国民経済が成長する(=所得が増える)“はず”」
 という前提に基づいているのである。

 リーマンショック以降の世界(日本は橋本龍太郎政権以降)において、「民間に資金需要がある」前提の政策が巧くいったケースは、筆者が記憶する限り存在しない。

 現在の欧州が日本と全く同じ問題(お金が銀行から貸し出されない)を抱えている以上、今回のECBの「マイナス金利」効果については、大いに注目する必要があると思うのだ。

三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2014年6月24日 18:47:15 : nJF6kGWndY

>リーマンショック以降の世界(日本は橋本龍太郎政権以降)において、「民間に資金需要がある」前提の政策が巧くいったケースは、筆者が記憶する限り存在しない

いつでも民間には資金需要はある

ただし緊縮政策や経済危機で公的&民間需要は大幅に減るし

デフレ不況期の日本のように、多少の量的緩和くらいでは、需要低迷には追いつかないということだろう


02. 2014年7月01日 10:19:52 : nJF6kGWndY

ただし、三橋みたいな意見は日本に限らず多い

http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303844704579655233379838524#printMode 
欧州でアベノミクス研究必要論―欧州経済の日本化 By MARCUS WALKER 2014 年 6 月 30 日 10:20 JST 
 【ベルリン】欧州が次の日本になる方向に傾いているとするならば、それは欧州版アベノミクスが必要という意味なのだろうか。
 安倍晋三首相は先週、低迷する経済成長を加速するための新しい措置を発表したが、欧州では、ユーロ圏は日本と同様の長期的な停滞局面入りしているのではないかとの議論が活発になっている。
 ユーロ圏の回復のもたつきと、その他地域での政府支出依存度の高まりは、世界経済の成長にとって懸念材料だ。ユーロ圏18カ国は総額13兆ドルの経済圏で、極めて規模が大きく、その不振が他の諸国に影響を及ぼさないはずはない。
 しかし、過去20年間にわたって年間1%程度の成長率にとどまっていた日本との比較がどの程度意味があるだろうか。そして問題と潜在的な治療法は、日本の場合とどの程度似ているのだろうか。よく知られているように、日本は1990年代に執拗なデフレ局面に陥り、物価の下落で消費者と企業は支出を先送りし、その結果、成長が弱いままだった。
 ユーロ圏がそうした悪循環の瀬戸際にあるわけではない。欧州では、将来の物価に対する2つの重要な決定要因、つまり賃金とインフレ期待(予想)は、1990年代の日本よりも安定的だ。
 だが、それはユーロ圏のインフレがすべて順調と言っているのではない。それは先月、年率0.5%に鈍化し、欧州中央銀行(ECB)の目標である2%近辺を大きく下回った。ユーロ圏のサブパー(基準以下の)インフレになると、ギリシャ、スペイン、イタリアといった低迷するユーロ圏参加国は、価格や企業コストをドイツよりも大きく低下させることが一層困難になる。

日本化に向かっている欧州と日本の主要指標
 日本がデフレに苦しむようになったのは1998年ごろで、下降局面が始まって約7年経過してからだった。一方、世界的な金融危機がユーロ圏の成長を打ちのめしてから6年経過した。一部のエコノミストは、もう一つ別の打撃、例えば1997年のアジア金融危機のような打撃が加われば、欧州はバランスを崩してしまうかもしれないとみている。
 例えばオランダの銀行INGのユーロ圏エコノミスト、Martin van Vliet氏は「われわれはもう一つの衝撃(つまり、あと一押し)で実際のデフレに陥るかもしれない」と述べた。
 日本の2つの「失われた10年」と、欧州の危機後の落ち込みを比較したvan Vliet氏の最近のデータ調査によれば、ユーロ圏は別の意味で日本よりも一段と打撃を受けている。経済的な産出と雇用の落ち込みは、ユーロ圏のほうがはるかに深刻なのだ。
 日本では経済活動は鈍化したが、成長し続けた。デフレ調整後の国民1人当たり国内総生産(GDP)は、特に2000年代にはちゃんとしたペースで増加すらした。また日本の雇用率は近年の欧州基準ないし米国基準で高い水準のままだった。
 一方、欧州では人口動態上の問題はそれほど劇的でなく、若干の希望がもたらされるはずだ。ユーロ圏の労働年齢人口は縮小し始めており、それは消費需要、投資にとって悪く、年金生活者や公共債務の負担が重くなる。しかし国連の予測によれば、日本の労働力は1990年代に急激な長期衰退局面に入ったのに対し、欧州の労働力の縮小は今後何十年間も漸進的にとどまるだろう。ハーバード大学のケン・ロゴフ教授(経済学)は「人口動態はそれほど悪くない。欧州はまた日本よりも移民にオープンだ」と述べた。
 最も説得力のある日欧比較は、政治的なマヒ状態かもしれない。日本の政府と中央銀行は10年間にわたって決定的な行動を起こすことができず、銀行問題を悪化するまま放置し、デフレをまん延させた。最終的に日本の社会は、この病が永続すると予想し、その予想がこの病を一層深刻にした。
 日銀の黒田東彦現総裁は、問題は単なるデフレではなく、「デフレ的なマインドセット(先入観)」であり、それが慎重な行動を永続化したと論じた。
 安倍首相の「三本の矢」についても、ユーロ圏内で議論が白熱している。 ユーロ圏の政策決定者たちは、破局回避に足るだけ行動するにとどまるのが通常で、その行動は、単一通貨ユーロがかつて付帯していた楽観論を復活するには余りに小規模で、余りに遅すぎた。
 日本の努力が持続可能か、あるいは効果的かを判断するのは時期尚早だ。しかし「(日本の3本の矢である)金融政策、財政政策、そして構造改革の3つを協調的に推進するのは、称賛すべきであり、欧州でも採用可能だ」と、アダム・ポーゼン氏(ワシントンのシンクタンク、ピーターソン国際経済研究所所長)は言う。
 ポーゼン氏は、ユーロ圏は現在、「政策アジェンダ(目標課題)の構成要素の間で、敵対的で疑心暗鬼の分離」に悩まされていると指摘した。
 しかし前出のロゴフ氏は、ユーロ圏の多くの参加国は高水準の公的債務を抱えており、その結果、大規模な投資のための余裕がほとんどなくなっていると述べた。
 欧州連合(EU)当局は、そして強力な債権国のドイツは、これまでユーロ圏全体にとって厳し過ぎる金融政策と財政政策を堅持してきた、と批判家たちは言う。それはユーロ圏の債務諸国に対し、市場の規制を撤廃させるよう圧力を掛けるためだった。
 しかしベルリン(ドイツ)では、公共事業投資を大胆に実施したり、ECBのマネー印刷を放置すれば、南欧諸国の政治家にミクロ経済上の改革の手を緩めさせるだけだとの懸念が根強い。
 こうした政治的リスクは確かに現実的だ。しかしユーロ圏が大量失業、病んだ小企業、そして投資欠如によって半身不髄のままであり続ける可能性のほうがもっと大きなリスクかもしれない、と懸念する向きもいる。そうなることでユーロ圏は長期的な潜在力、かつて羨望の目でみられた豊かさ、そして高水準の公的、私的債務を抱えたままでいられる能力を損なってしまいかねない、というのだ。
関連記事
• 安倍首相の新たな成長戦略も日本の大きな問題解決には不十分
• 安倍首相、新成長戦略を発表―法人税減税や規制緩和が柱
• アベノミクス2.0:目標大胆だが提案は控えめ
• 【社説】米国が日本の法人税引き下げ議論から学ぶべきこと
• 日本でもクラウドファンディングが少しずつ浸透


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)  recommend
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民88掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧