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再エネ6900万kWの負担は38兆円! 太陽光のFIT認定は一時的に停止を
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140623-00010000-wedge-bus_all&p=1
Wedge 6月23日(月)8時20分配信
固定価格買取制度(FIT)の見直し等を議論する総合資源エネルギー調査会・新エネルギー小委員会(以下、新エネ小委)が6月17日から始まった。最も重要な論点の一つは、どのように太陽光発電(PV)の急増による賦課金の高騰を抑えるのか、である。PVによる賦課金急増に苦しんだドイツ等の欧州FIT先行国では、年間導入量もしくは買取総額に上限を設定しており、日本は前轍を避けるべきだとこれまで繰り返し筆者は指摘してきた(本誌2012年7月号、2013年4月号、2014年3月号)。
■国民一人当たり38万円の負担
しかし、もはや手遅れなのかもしれない。新エネ小委で示された資料によれば、3月末までに資源エネルギー庁に認定された再エネの設備は既に6900万kWに達している。今後の賦課金水準は、これら認定設備のうち実際に運転開始(運開)する設備量に依存するが、仮にこれが全て運転開始(運開)すると年間賦課金総額は1.9兆円である。買取期間は10〜20年間続くため総額38兆円の国民負担による売電収入を再エネ発電事業者に既に保証してしまったことを意味する(図1)。これは国民一人当たり38万円の負担である。
■非現実的な6900万kW
6900万kWという規模になると、送配電線に接続したとしても、出力を抑制しなければならないかもしれない。このようなリスクは、FITのもとでは、再エネ発電事業者ではなく、国民が負うことになる。国が設備認定をしているため、再エネ発電事業者には、電気を売る権利が発生している。仮に送配電網に接続できず誰も電気を使えなくても、電力会社は再エネの電気を買い取りつづけるか、あるいは、そうでなければ、国と電力会社が損害賠償をしなければなくなるだろう。
また、認定量の内訳をみると、10kW以上の非住宅用PVが92%を占めている。もちろんPVは温暖化対策にはなるが、日本のCO2を1%減らすために毎年1兆円を費やす計算になる。これは1トンのCO2を減らすのに10万円もかかる高価な対策である。
■なぜ非住宅用PVだけでバブル発生?
非住宅用PVのみバブル的な状況にあるのは、我が国の買取価格が高すぎることと、我が国独自の制度欠陥として、買取価格の適用時期がドイツ等のように運開時点ではなく、設備認定時点であることによる。前者の買取価格については、政府は、今年度の買取価格を32円/kWhまで下げているが、欧州のFIT先行国の買取価格に比べて、その高さは2倍以上となおも突出している。これでも事業者には十分な儲けがあり、認定設備容量はなおも増え続けるだろう。
また、後者の制度欠陥の状況を示しているのが、繰り返される年度末の駆け込み認定である(図2)。我が国ではFIT買取価格が適用される条件が、エネ庁による設備認定を当該年度中に終えることにあるため、12年2月と3月は各1ヶ月間で530万kWと770万kW、13年の2月と3月は770万kWと2650万kWの認定ラッシュが発生している。これはドイツなどFIT先行国でも前例をみない未曾有の規模の駆け込みである。
■問われる効率性の観点に立ち返った政治判断
懸念されるのが、空枠取りの横行による健全な事業者の締め出しである。空枠取りとは、買取価格の権利を先に獲得し、PVパネルの価格が安くなるまで意図的に運開を遅らせる、あるいは当初から発電事業は念頭になく買取価格の権利転売だけを目的としたブローカーを指す。空枠取りの横行は、健全な事業者の排除につながる。電力会社の電力系統への接続は申込順であるため、空枠取りは認定を受けると、買取価格だけでなく、系統接続の権利も獲得している。この結果、運開時点が早いか遅いかというプロジェクトの熟度が全く考慮されず、書類申請の申し込み順だけで、系統接続の優先順位が確定される。
こうした事態を受けて、エネ庁は、12年度に非住宅用PVとして認定された約5000件について、「空枠取り」等の不正がないか報告徴収(実態調査)を実施し、先日144件を取り消した。今後は、土地取得と設備発注の2点について書類提出が無ければ認定取消とする方針を打ち出したが、未だに認定後の運開期限は設定されていない。3月の2650万kWもの認定量は、これら2点の書類提出への対応は事業者にとって何ら制約にはなっていないことを示している。
■太陽光のFIT認定の一時的な緊急停止が必要
今や他国の経験から学ぶという段階ではなく、我が国独自の制度欠陥を早急に是正することが必要である。まずは、この異常事態を止めるため、PVに対するFITの認定を一時的に停止すべきである。さもなければ、今後も認定が急増し、今年度末までにはさらに数十兆円の国民負担が上乗せされかねない。これは到底看過できない。現状は大けがをした状態であり、まずは血を止めなければならない。その上で、制度の欠陥をよく点検し、修正を施した上で再開すべきである。
具体的には、既に認定された設備に対して、より一層の厳格な認定審査と取消の実施が不可欠である。同時に、PVの買取価格を大幅に切り下げるか、導入量に上限を設定し、買取価格の適用時期を現行の認定時点から、ドイツ等と同様に運転開始時点に変更すべきだ。
FITを規定する再エネ特措法(表1)にも、経産大臣は必要があれば半年に1度の価格改定(3条1項)がうたわれており、10月から買取価格を見直すことは可能である。また、賦課金の負担が需要家にとって過重とならないこと(3条4項)、そして、経済事情に著しい変動が生じるおそれがある場合は買取価格を改定できることが規定されている(3条8項)。
新エネ小委のオープニングにおいて、上田隆之・資源エネルギー庁長官は、「最小の国民負担による、最大限の再生可能エネルギーの導入」を明言された。FITは導入量と費用負担のバランスが重要である。出来るだけ少ない費用負担で、出来るだけ多くの再エネ供給を得る、効率性の観点に立ち返った政治判断が問われている。
朝野賢司 (電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)
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