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人手不足経営:人手が集まらず賃金上昇という動きはアベノミクスにとって光明
http://www.asyura2.com/14/hasan88/msg/560.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 6 月 19 日 03:25:32: Mo7ApAlflbQ6s
 

※ 日経新聞の連載記事


[迫真]人手不足経営

(1)トヨタでさえ足りない

 「仕事は持久力がいりますが寮は無料。特別手当が10万円出ますし、社員への登用制度もあります」。トヨタ自動車が愛知県内で今月開いた期間従業員の選考会。担当者は20代の男性に待遇などを説いた。「繰り返し作業はつらいかも。でも給与は魅力的だ」。友人に誘われたという男性は満足げに会場を後にした。

 「現場ですぐに働ける社員を5人派遣していただきたい」。4月、愛知県の中堅部品会社にトヨタから手紙が届いた。自社とグループの工場で働く人の応援派遣要請だ。「採用で圧倒的に強いトヨタでさえ足りないのか。うちに出せる余裕はとてもない」(同社役員)と、5月の回答期限直前に断りの連絡を入れた。

 トヨタの部品会社への派遣要請は約10年ぶり。全体で2千人の人員確保の計画が示されていた。消費増税後の需要が想像以上に強いことが背景にある。4月の1日当たり国内生産は約1万2千台の年初計画に対し実績は1万3400台に上振れ。通常は期間従業員の増員や工場間の人の融通で対応するが、あるトヨタ幹部は「他産業との採用競争が激しく、人繰りは厳しい」と打ち明ける。
□   □
 物流需要の拡大にわくトラック業界は厚遇を競う。7月2日までの入職者限定、合計17万円支給――。いすゞ自動車の従業員募集サイトにこんな文字が躍る。月給ではない。仕事に就いてくれた人への手当てだ。3カ月の勤務で21万円の「慰労金」までつく。

 2009年度に106万台まで減ったトラック生産は13年度、133万台強に回復。だが一段の増産には人手が足りず、日野自動車は期間従業員の日給を6月から9500〜1万円と500円上げた。

 景気回復を映し、4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.08倍と17カ月連続で改善、06年7月以来の水準となった。中でも新規求人数(原数値)で製造業は前年同月比23.2%増と伸びが目立ち、人手不足の印象の強い建設業、飲食店の10%前後を上回る。

 「こんなに求職者は集まらない」。スタッフサービス・ホールディングス子会社で製造業務派遣のテクノ・サービス(東京・千代田)の担当者はこぼす。14年1〜3月期の求人数は前年同期比26%増。自動車から電機、住宅資材まで幅広く派遣要請が舞い込み「中小企業から再開の申し出も多い」。人手不足の玉突きがものづくりに広がり、上向いてきた企業活動の制約になりかねない。

 航空機産業では人材の確保・育成に企業の壁を越えて取り組む議論が始まった。三菱重工業や川崎重工業、富士重工業などが参加し名古屋市で2月25日開いた「航空機産業支援機能高度化委員会」。中部航空宇宙産業技術センター専務理事の松岡隆(64)は「各工程の基本技術だけでも統一できれば応用しやすい。人材の流動化につながるのでは」と議論の要点を説明する。
 各社は米ボーイング787の増産や国産小型ジェット機「MRJ」の実機生産を控え活況だが、集積する中部地区は「自動車産業などと比べ担い手を確保しにくい」(三菱重工)。委員会では各社で異なる基礎技能の標準化などについて意見を交換。繁閑に応じ人が企業を移りやすい仕組みづくりを視野にいれる。
□   □
 福島県新地町。金属研磨加工の相馬ブレードの仮設工場では、従業員が航空機エンジンに使う部品を黙々と削りこむ。IHIの相馬事業所(同県相馬市)向けだ。
 旅客機の需要増で受注量は震災前の2.5倍になり、22人だった従業員は37人に増えた。だがパート従業員の定着率は悪い。近隣のファミリーレストランの時給1200円に対し、同社は850円。会長の藤田修(67)は「せっかく技術を教えても積み木が崩れるように他へ簡単に流れてしまう」と嘆く。ものづくりの基盤が揺らぐ。

 大手牛丼チェーンの人手不足による店舗の一時閉鎖が注目を集めた外食では、完全閉店に踏み込む企業も出始めた。東京・秋葉原駅周辺。会社員らでにぎわった大手居酒屋が6月にかけ相次いで閉まる。「和民」秋葉原昭和通駅前店と「庄や」秋葉原東口店だ。
 1店当たり従業員を増やすためワタミは今年度60店の閉鎖を計画、秋葉原もその一つだ。ワタミ社長の桑原豊(56)は「働き手も集めにくい店舗が大量にあっても、成長できない」と話す。

 人手不足は地域や業種を超えて広がり始めた。何が起き、企業はどう対処しようとしているのか。
(敬称略)

[日経新聞6月10日朝刊P.2]


(2)時給1500円でも集まらない

 深夜は時給1500円――。


昼間で時給1200円という破格の条件も(東京・渋谷の吉野家)

 6月上旬の東京・渋谷。駅前のスクランブル交差点近くにある牛丼店「吉野家」が店頭に掲げたアルバイト募集は昼間も1200円と破格の数字が並ぶ。ライバルの「すき家」「松屋」も1100〜1375円だ。求人情報大手のリクルートジョブズがまとめた首都圏の外食店の平均時給971円を上回る。
 大手外食チェーンがひしめく渋谷駅周辺のアルバイト争奪戦は集客競争以上に厳しい。焼肉店の「牛角」は人の背丈を超える巨大な求人ポスターを張り出し、ビルの2階のファミリーレストラン「ガスト」は通りに面した階段の上り口にアルバイト募集の立て看板を置く。出店ラッシュのコンビニエンスストアとも学生を取り合うなか、「都市部ではこの1年で時給を50円前後上げた外食店もある」(リクルートジョブズ)。

 外食各社は時給の安いアルバイトを店舗運営の主力とし、人件費を抑えることで収益を上げてきた。そのビジネスモデルが景気の回復とともに揺らいでいる。学生とともに貴重な戦力だったフリーターには正社員への道が開け、時給を上げても日々の営業を切り盛りする人手が集まらない。
 店舗単位では限界と判断したすかいらーくは5月から順次、アルバイト採用を本部に集約している。勤務時間などの条件が合う店舗を紹介するといった手立ての効果もあって、「営業に支障が出るほどの影響はなかった」。社長の谷真(62)は胸をなで下ろすものの、「深夜時間帯の人集めは苦労が続く」。

 「やりたいことがすぐに見つかる」(都内の大学に通う女子学生)という売り手市場だ。同じ外食業界でも人手集めの難しさには濃淡がある。渋谷駅の周辺でもコーヒー店「エクセルシオールカフェ」は時給950円から。牛丼店や居酒屋より安い。居酒屋「響(ひびき)」などを展開するダイナックの社長、若杉和正(60)は「若者に人気があるのはカフェチェーン。イメージの良さにアルバイト探しが流されている」とこぼす。

 讃岐うどん店「丸亀製麺」を運営するトリドールは国内外1000店の達成に向け、郊外中心だった出店エリアを都心部にも広げる方針だ。しかし、社長の粟田貴也(52)は「東京の時給は高すぎる」とため息をつく。拡大したくても簡単にはできない現状がある。「少しでも賃料が安い物件を見つけないと、出店できない」。人手不足は外食チェーンの成長戦略の大きな障壁となりつつある。(敬称略)

[日経新聞6月11日朝刊P.2]


(3)苦渋のベア1万2000円

 「ミシンの音がもっと響くはずなんだ」。5月28日、福島県いわき市。自動車用シートなどを縫製するキャニオンワークス(浪江町)の社長、半谷正彦(35)は完成1カ月半の工場で不満げな表情を見せた。2本の生産ラインが動くが、間に大きな空間がある。人が足りず「もう1本」を増やせないのだ。倉庫には10台超のミシンが眠る。

 東日本大震災のあと群馬県に小さな工場を借り生き延びた。今春には三菱商事の支援金など5億円を投じ、震災前より売上高を倍増できる工場を完成させた。同業の多くが海外へ移転するなか、国内で幅広い商材を短納期で作る同社には注文が殺到する。ハローワークや知人のつてで集めた社員は42人。半谷は「あと20人足りない」とこぼす。
 4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.08倍と2006年7月以来の高い水準だ。06年は大都市と地方の差が大きく開いたが、今回は福島が1.39倍となるなど地方の倍率もおしなべて高い。人手不足は地域を超えて全国隅々にまで広がる。

 「アベノミクスへの賛同というよりやむにやまれぬ決断だ」。福井県坂井市に本社を置くドラッグストアのゲンキーは4日、総合職の基本給で1万2千円ものベースアップを実施すると発表。大卒初任給も1万2千円増やして20万8千円とした。その発表の席上、社長の藤永賢一(51)は苦笑いを浮かべた。
 本社があるのはJR福井駅から1時間かかる田園地帯。「面接に来るだけで入社を敬遠する人もいた」(執行役員の上田匡英=41)ため、5月には福井駅前のビルに採用オフィスを設けた。だが北陸地方の有効求人倍率は2番目に高く、積極出店を続ける東海地方は1番。藤永は「どう計算しても確実に人手が足りなくなる」と危機感を募らせ、異例の高額ベアを決めた。

 岡山市に本社がある介護大手のメッセージは高齢者を戦力にすることで不足に対処する。4月、約7200人の全社員を対象に65歳の定年制を廃止した。
 「自分の体力と気力が続く限りここで働きたい」。同社が岡山市で運営する有料老人ホームで62歳の介護福祉士、財津恵美子がほほ笑んだ。52歳で業界に入り、ケアマネジャーなどの介護資格を取得。還暦を超えた今も月4回の夜勤をこなす。
 地方の有効求人倍率が改善したのは若い人の流出が続き、都市より労働力の減り方が激しいからでもある。どうすれば働き手を確保できるのか、地方企業の模索が続く。
(敬称略)

[日経新聞6月12日朝刊P.2]


(4)外国人どこまで頼れるか

 「我々なら日本の技術者不足解決に役立ちます」。3月6日、ベトナムの首都ハノイを訪れた富士通社長の山本正已(60)に、同国IT(情報技術)最大手FPT会長のチュオン・ザー・ビン(58)はシステム開発での連携を訴えた。日立製作所、パナソニック、東芝、NTT、リクルート――。FPTは日本を代表する会社から次々とシステム開発を受託、ビンは昨年末から各社幹部と面会を重ね、発注増を働き掛けている。
 なぜベトナム企業なのか。「日本語の仕様書で開発を任せられ、勤勉で賃金も安い」。委託したある情報システム責任者は語る。FPTはハノイ郊外の自前の大学でITと日本語を教えるほか日本での研修も導入、「日本語がわかる技術者を5千人に倍増する」(ビン)計画だ。

 社会保障と税の共通番号(マイナンバー)導入に向けたシステム更新などIT業界は大規模案件が相次ぐ。技術者不足と考える企業は4年間で33ポイント増え82%。だが海外委託の8割を担ってきた中国は日中関係の冷え込みや賃金上昇でこれ以上頼りにくい。世界中からシステム開発で引く手あまたのインドは「わざわざ日本語を学ぶ人が少ない」(国内IT大手幹部)。その間隙をベトナム企業が突く。

 横浜市の私立学校の建設現場。朝8時、ベトナム人のホアン・タイ・ホック(22)はラジオ体操をしてコンクリートを流し込む型枠を作る作業に入る。外国人技能実習制度を使い昨年4月に来日、型枠業の協和工務店(横浜市)で働く。「日本で頑張ってお金をためたい。でも5年は長いから3年で十分」
 同制度を使い建設現場で働く外国人は約1万5千人。人手不足による工事遅れが相次ぎ、政府は2020年の東京五輪に向け実習期間を3年から5年に延ばし乗り切る構えだ。だがあてにする外国人も「日本語がわからず安全面で心配なケースもある。5年に延ばしても働き手を確保できるとは限らない」(中堅建設幹部)との声も漏れる。

 メロンなど農業生産が盛んな茨城県鉾田市。農協はこれまでの中国、タイなどの実習生に加え月内にも就労制限のない日系フィリピン人を迎える。わらにもすがる思いのJAアグリサービスほこた社長、菊池隆(55)は「金属加工などとの競争は厳しくどれだけ集まるか」と担い手確保に不安を隠さない。日本企業復活の要因となった円安も外国人の働き手には収入減につながる。どこまで外国人を頼れるのか模索が続く。
(敬称略)

[日経新聞6月13日朝刊P.2]


(5)専門職の奪い合い

 「来年3月に薬剤師試験に合格するような就職浪人を、うちに紹介してほしい」。薬剤師の派遣を手掛けるアポプラスステーション(東京・中央)の執行役員、石山知良(47)のもとに5月末、埼玉県内の薬局の社長から依頼があった。「予備校に通う授業料は我々が払うし、本人に毎月18万円の小遣いをあげるから」と社長は懇願した。


在宅医療の業務増などで薬剤師の不足感が一段と高まっている(東京都新宿区のアイン薬局)

 国内には5万5千店を超える薬局があり、今後も増える。最大手アインファーマシーズは今年度に120店、2位の日本調剤は50店を開業する。高齢者への医薬品の配達などにも力を入れるためだ。大手に薬剤師を囲い込まれた薬局の中には「年収800万円を出すから人を送ってほしい」(静岡県の中堅薬局)と平均の2倍近い金額を提示するところも現れた。それでもアポプラスの登録者をはるかに上回る人数の要請が相次ぎ、石山は多くを断らざるを得ない。

 大手も実は苦しい。4月3日にアインが札幌市で開いた入社式。251人の新人薬剤師を迎えた社長の大谷喜一(62)は一瞬、浮かない表情を見せた。姿を見せられなかった110人の入社内定者の顔が浮かんだ。
 数日前の3月末、薬局関係者の間で「6割ショック」と呼ばれる事態が起きた。薬剤師試験の合格率が昨年の8割から6割へ急落したのだ。食中毒と一酸化炭素中毒を見分けるなど、実務的な問題を増やしたためだ。同社も内定者の約3割が不合格となり、入社できなかった。

 「パイロット不足を解消しようと、副操縦士に機長並みの待遇を用意して引き抜く動きが止まらない」。国内中堅航空会社の幹部は格安航空会社(LCC)の行為に、いらだつ。「社員が浮足立っている」という。
 LCCは従来、2010年に経営破綻した日本航空を早期退職した数百人のパイロットを雇ってきた。しかし最近では「他の航空会社に行く人は、ゼロとは言わないが非常に少ない」(日航社長の植木義晴=61)。十分なパイロットを確保できない国内LCC4社は、そろって減便や運休に追い込まれている。
 中国系LCC、春秋航空日本の日本人役員は「中国のグループ会社からパイロットの派遣を受けることも検討している」と明かす。同社以外にも専門職の不足を解消するため海外の人材を求める声が、日本の産業界で広がり始めている。
(敬称略)

 大和田尚孝、黒井将人、新沼大、後藤宏光、大林広樹、西原幹喜が担当しました。

[日経新聞6月14日朝刊P.2]


 

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コメント
 
01. 2014年6月19日 06:56:07 : rAZs4KvhOE
まあ良い傾向なんじゃないかなあ。就職氷河期なんて言われてた時代に比べると。

02. 2014年6月19日 08:13:52 : dzkTuKqj2E
不自然な動きは必ず歪みを生み、やがて強烈な反動をともなう
今は突然潮が引いて、あらわになった干潟であちこちに散らばっている
魚などの海産物を歓声を上げながら広い集めている状態

03. 2014年6月19日 08:24:34 : nJF6kGWndY

>人手が集まらず賃金上昇という動きはアベノミクスにとって光明

安倍政権にとっては賃金上昇は追い風だが

アベノミクス(=安倍が言うように日本経済再生と定義するなら)にとっては光明ではない


04. 2014年6月19日 08:56:11 : 1YDITtet8w
アベノミクスに関係なく、団塊世代が定年退職することで労働人口が減少することは2007年問題で言われていたこと。

2007年が60歳ピークなので2014年の人口ピークは67歳になっており、1年ほど前から人手不足になっている実態に合致する。

25%もの円安による輸入物価の上昇は価格競争のために値上げを我慢している企業の限界を超えれば一斉に消費者物価に反映される。
合わせて増税分が加算されるので、給料が10%上がっても生活実感は向上しない。

5年前の為替と原油価格を参考にすれば、現在のGS価格は1リットルが180円になってもおかしくない。
上がらないのは低燃費と節約でGSが輸出するほど余っていているからで、調整が進めば一挙に急騰します。


05. 2014年6月19日 10:12:11 : KJBy4qbItE
「わたみ」を代表とする脱法的人員やりくりが、不払い残業と給与据え置きを支えてきたが、それらが処罰され規制されると、途端に人員不足だと!!
もともと人員不足だったわけだが、グレーゾーンだったということ。

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