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マクロ統計はいずれにしろ個別供給主体の総和であり、そのデータはいつでも個別企業の変化が反映したものである。
「5月の貿易統計は、輸出額が前年同月比2.7%減と15カ月ぶりの前年割れになった」最大の要因は、対前年比での円安傾向の終焉であろう。(昨年の5月までは急速な円安が続いたが、以降はそれほど下がっていない)
ホンダの生産拠点シフトが一つの要因であることは間違いないが、円安は、他の諸企業の輸出競争力上昇や円ベースでの手取額増加に寄与するわけだから、差し引き計算でプラスになってもおかしくない。
12年秋からの円安傾向は、円ベースでの手取額増加には貢献したが、輸出競争力の強化にはつながらなかったと大まかに総括できる。
(それを良く言えば、価格を下げて輸出量を増やすのではなく、利益を大きくする政策をとっているということになる)
輸出が低迷している構造的問題は、国際競争や先進国市場状況が変化するなかで、従来的製品構成での輸出を続けていることであろう。
自動車や家電などのコモディティ製品の生産が、現地や需要地に近い国に移っていくのは仕方がない。そして、それは、生産拠点を移した先の購買力を高めることにつながるから、悪いことではない。
日本は、敗戦後、政府の支援を受けつつ米国を中心とした超先進国から技術を導入した企業が、能力は同等もしくはより高い労働者を相対的に低い労賃で雇うことで競争力を高め、米国など先進国への輸出を増大させてきた。
日本の輸出低迷さらには経済全体の低迷は、自身が超先進国になりながら、遅れた先進国的産業政策を採り続けていることも要因として指摘できる。
日本は、普及品の家電製品や自動車を生産して先進国中心に輸出するという従来的構造からの脱却を迫られている。
コモディティ製品の生産は中国や東南アジア諸国などの新興国に委ね、日本国内は、高機能製品・素材や中核部品・生産設備などの生産に注力しなければならない。そして、輸出先は、間接的には欧米先進国の比率が高くとも、直接的には新興国の比率が高まるようにならなければならない。
そして、国民経済をサポートする政府は、新興国に産業政策を“輸出”するくらいのビジョンを持って経済外交を行う必要がある。
先進国の需要はどうあがいても飽和状態である。
日本経済がこれからも成長を続けるためには、新興国や後進国の経済成長を支援し需要を増大させる手立てを講じなければならない。
ドイツや米国と並んで世界で破格の産業力・技術力・資本力を有する日本にはそれが可能である。
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「ホンダ」に揺れる貿易統計 輸出減の底流を読む
2014/6/18 16:30
1カ所で起きる動きが全体を動かすことがある。眠い目をこすりながら早起きしてサッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会をテレビ観戦していると、感じることだ。ある選手がドリブルを始めると他の10人が動き、ゴールまで1本の線がつながる。チーム全員のゴールというより、1人のゴールだ。
日本の貿易も、特定のプレーヤーが動かしている。
財務省が18日発表した5月の貿易統計は、輸出額が前年同月比2.7%減と15カ月ぶりの前年割れになった。主要な地域別で見ると前年より輸出が増えたのは欧州連合(EU)向けだけ。中国と並ぶ二大輸出先である米国向けが前年同月比2.8%減と、こちらは17カ月ぶりに減少となったことが全体の不振につながった。
米国経済は寒波の影響で1〜3月の成長率が大きく下がったものの、雇用統計の結果などは比較的しっかりしている。政府は5月の月例経済報告で米経済を「景気は緩やかに回復している」としていた。にもかかわらず、5月は米向け輸出は全体の23%を占める自動車が前年比23.6%減と急減した。これだけ見ると、米経済の先行きが不透明になっているように思えてくる。
しかし、この大幅減は「ホンダ」の動きが大きく影響した可能性がある。ホンダは今年初め、メキシコで乗用車を生産する新工場を稼働した。新工場では小型車「フィット」を生産し、米国にも供給している。これまで米国で売るフィットは日本で生産して輸出していたが、メキシコ工場の稼働とともにフィットの米向け輸出はなくなった。
ホンダが公表している最新の輸出実績は4月分だ。北米向けの輸出台数は前年比83.4%減のわずか1499台。昨年4月と比べると、7520台減った。4月の日本全体の米向け輸出台数は約13万6000台。ホンダの生産移転だけで、日本から米国への自動車輸出は5%も減ったことになる。
自動車各社はメキシコでの生産を拡大している。マツダも2月からメキシコで新工場を動かし、主力乗用車の「マツダ3」(日本名アクセラ)をメキシコから米国に輸出し始めた。同社はこれまで、米市場で販売するアクセラは日本から輸出していた。これからはメキシコ生産を伸ばしていくと見られ、米市場で販売が伸びても日本からの輸出はこれまでほどは伸びにくくなる。
23.6%も減った5月の米国向けの自動車輸出はホンダとマツダの生産移転だけが原因ではないだろう。しかし、7.9%減だった4月はホンダのメキシコ生産が最も大きな理由と言えそうだ。円安にもかかかわらず日本の輸出が伸びないのは、やはり底流に大手メーカーを中心とする海外生産の拡大がある。
消費増税後、駆け込み需要の反動減で落ち込んだ個人消費はまだ勢いを十分に取り戻してはいない。景気の下支えを輸出に期待する声は多いが、世界での競争に勝ち抜くための前向きな企業戦略は、今年も輸出のアタマを抑えそうだ。少なくともホンダが日本からメキシコに生産を移したことが前年比で見た日本の輸出減につながる効果がなくなるのは、まだ1年近く先のことだ。
一方でホンダは4月の世界生産と海外生産、アジア生産が4月としては過去最高の台数だった。世界経済と日本の輸出のつながりは、これからもどんどん薄くなりそうだ。
(加藤修平)
http://www.nikkei.com/markets/features/13.aspx?g=DGXNASFS18018_18062014000000
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