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イケア、年間来客数2000万人の秘密 地域特性に合わせた魅力ある店舗づくりの仕組み
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140617-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 6月17日(火)3時0分配信
北欧スウェーデンの世界観を伝える世界最大の家具販売チェーン・イケアの家具は、今や日本でもおなじみとなった。現在、国内で7つの大型店を展開しているが(7月17日に8店舗目の大型店が仙台に開業予定)、日本1号店が開業したのは2006年、船橋店(千葉県船橋市)だった。
その後、港北店(横浜市都筑区)、神戸店(神戸市中央区)、鶴浜店(大阪市大正区)、新三郷店(埼玉県三郷市)と各地に展開し、12年には福岡新宮店(福岡県糟屋郡)、そして今年4月に立川店(東京都立川市)がオープンしている。
集客は好調だ。全店舗の年間来場客数は、東京ディズニーリゾートにも匹敵する2000万人超。港北店は家具販売店として世界最大級の来店客数を誇る。新三郷店は、近くに競合店・ニトリがあり、商品を比較検討するお客も多い。
福岡新宮店は、開業前にIKEA FAMILYカードへの会員登録をした人が6万人を超え、開業日は「イケア各店のオープン日としては史上最も激しい横殴りの雨」(同社)にもかかわらず、オープン前から1300人が並び、この日だけで3万人が来店した。
東京で初の出店となる立川店は、多摩地区の中核であるJR立川駅から徒歩12分、東京都道43号線沿いにあり交通の便もよい。
イケアでの買い物方法は独特だ。店内に置いてある買い物袋と鉛筆、メモを手に取り、2階のショールームと呼ばれる家具売り場を回り、欲しい家具の番号を記入する。買い物袋に入る雑貨は直接商品を入れる。自分で持てない大型以外の家具はマーケットホールと呼ばれる1階で、巨大倉庫から持ってきてレジに並ぶ。これは、一度経験しないと戸惑ってしまうだろう。
家具は自分で組み立てるのが基本で(工賃別の組み立てサービスあり)、インターネットなどの通信販売はしていない。
店内は広く、さながら巨大迷路のようだが、それでも回遊性を楽しむ人は多い。買い物客は「いろんな驚きがあって楽しい」「雑貨が安かったので衝動買いしてしまった」などと話し、楽しんでいる様子がうかがえる。
しかし、中には「急遽、用事ができて外に出たいのに、出口がわからなかった」という声もあった。こうした不満の声には店側も応え、最近は途中で買い物順路を短縮できる「近道」も設けられ、フロアガイドでも紹介されている。
●イケア流に染めつつ、日本の消費者からも学ぶ
外資系企業が日本に進出する場合、本国や周辺国で成功した運営方法を、日本でもそのまま押しつけてしまいがちだ。これは多くの企業が失敗するパターンで、日本進出当初のイケアにも、そうした点が見受けられたが、同社は消費者からの声を受けて多くの点を改善した。
また、イケアでは社員もパート従業員も一様にコワーカーと呼称するが、彼らにも大きな裁量を委ねている。
例えば福岡新宮店では、コワーカーが店舗周辺の家を訪問して間取りなどを調べた。その結果、首都圏や近畿圏に比べて部屋数が多く、小さな部屋のある家も目立ったという。このような調査結果を店内の商品構成に反映している。
モデルルームと呼ぶ空間も変わった。以前は「55平方メートル」などと広さを記した展示スペースの中に家具が配置されていたが、最新の立川店では「2LDK 55平方メートル 持ち家 家族との暮らし」「7歳の娘がいる3人家族」など具体的な表記をし、ベッドルームの横に子ども向けデスクや回転チェアを置くなど、お客がよりイメージしやすいようにしている。
別の一角では物干し用ハンガーに子供用靴下を挟むなど、単に商品を配置するだけでなく、生活実感に訴えている。こうしたさまざまな提案はコワーカーによるものだ。
低価格による訴求も欠かさない。例えば「この部屋の家具、全部でなんと6万2000円以下」と札を掲げたスペースでは、2人掛け用ソファ(2万469円)、テーブル(8219円)、回転チェア(7190円)などが配置してあり、来店客からは「安い」という声が上がっていた。
イケアでは、それぞれの家具に名前がついている。例えば、本棚の「ビリー」、ひじかけイスの「ポエング」は世界各地でロングセラー商品となっている。ソファには都市、本棚には男の子、カーテンには女の子、布団カバーには橋の名前がつけられているという。
●フードエリアも集客装置の1つ
店内の一角にある「イケアレストラン」も人気で、「来店客の3割は飲食だけ」ともいわれるほどだ。ここではスウェーデン料理も提供される。その代表がスウェーデン・ミートボールだ。通常は5個で359円、10個で616円。ジャムとポテトが添えられる。カレーライスは249円とリーズナブルだ。家具と同じように低価格で提供するのは「腹が減っては買い物ができない」という企業方針による。設置したキッカケは、かつて欧州の店舗で昼食時に来店客が一斉に帰ってしまい、店内がガラガラになった教訓からだという。
もう1つの名物が「ビストロ」と呼ぶエリアで販売されているホットドッグ。1995年にスウェーデン国内の店舗において、1本5クローネ(約85円)で販売を始めて以来の伝統商品で、日本国内では100円、フリードリンク付きは150円だ。イケアのホットドッグは一商品の枠を超えて、お客を引き寄せる代名詞となっている。
こうして紹介すると前途洋々に思えるイケアだが、日本国内での将来性は必ずしも視界良好とはいえない。次回は、その部分を検証する。
高井尚之/経済ジャーナリスト
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