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いつまで働けばいいの? 40代シングル女性のつぶやき〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140616-00000013-sasahi-soci
AERA 2014年6月23日号
平均寿命まで生きるとして、まだあと40年。年金だって、支給されるのか、あやふやだ。
そんな将来の不安を抱えて生きている40代、独身の女性たちのつぶやき。
「いつまで働いたらいいの」の声に迫ってみた。(ライター・樋田敦子)
男女雇用機会均等法の第1世代は、現在46歳から50歳。今なお働き続けるアラフォーシングル女性たちは、責任を背負わされ、超多忙な日々を送る。彼女たちの頭をよぎるのは「いつまで働かなければいけないの」という疑問だ。働かなければ生活していけないのは分かっているのだが……。
「パートナーでもいれば心強くていいのでしょうが、1人だと先行きが不安で怖い。毎日のように、いつまでこんな生活を続けるのだろうかと考えます」
こう話すのは、航空系の会社に総合職として入社し、40歳を機に退職、その後、美容関連の商品を扱う会社を起業した池田和子さん(49歳、仮名)だ。池田さんはバツイチ。都内の高層マンションに70代の母親と2人で暮らしている。
前の会社もそれなりにやりがいはあったが、マネジャーとして役員との報告会議に出席すると、発言の機会を与えてくれなかった。
「女性は私一人。顧客と直接対峙する私は、発言したいことが山ほどあるのに遮られて。この会社の限界を感じて辞めました」
●原因は極度のストレス
起こした会社は、通販などで年々売り上げを伸ばし、パートも含め4人の社員を抱えるまでに成長した。“成功”を手にしたはずの彼女だが、不安になるのにはいくつかの理由がある。まずは仕事がこのままあるのかということ。
そして最近加わったのは健康面の不安だ。池田さんは4月に呼吸不全で緊急入院し、検査したところ肺炎、気管支炎、胃潰瘍、逆流性食道炎であることが判明。原因は極度のストレスだと医師から説明された。
「サラリーマンだって会社が倒産することもあるし、仕事の心配は取り越し苦労なのですが、それも健康でいられれば、という条件つき。家のローンもあるし、母もいる。毎日の仕事で精いっぱいで、せいぜい考えられるのは、1週間先のことくらい。5年先、10年先を見据えられないことも不安を助長させるのでしょうね」
ビジネスチャンスもあり、自分が一生付き合っていける仕事だと始めたはずなのに、溜まっていくストレス。池田さんの心の隙間を埋めてくれるのは愛犬だという。
地元の大学を卒業して上京し、これまで派遣や契約社員を経て、4年前に正社員になった横田真由美さん(40歳、仮名)は、午前8時半から午後11時ごろまで働いている。週に2日ある休みも1日は出勤することが多い。
もう正社員になる機会はないだろうと思っていたので、入社のときはとても嬉しかった。しかし正社員は責任も重く、入社当初より仕事量は2倍以上に増え、サービス残業も多い。
「性格上、突き詰めてやるほうなので、疲れ切って家に帰ると“何やっているんだろう”と思います」
30代半ば過ぎまでは、公私ともに充実した日々だった。仕事も楽しく、同じ境遇の仲間たちとよく遊びに出かけた。当時は恋人もいたが、相手には妻がいて結婚できなかった。それでもいいと思って交際していたが、入社を機にピリオドを打った。
●迫る妊娠リミット
若い頃、漠然と「結婚して子どももいるだろう」と考えていた年齢になった。一緒に遊んでいた友人たちは結婚し、横田さんと数人が残った。スーパーで買い物をするとき、大好きなアーティストのコンサートに行くときに「独りの寂しさ」を感じる。
会社では、子どものいる社員は時短もあり、残業も“子どもがいるので”と一区切りをつけてさっさと帰宅していく。
「そんな姿を見ていると、いいなあと思います。今は猛烈に結婚したい。自分の精神の安定を得るためにも、東北にいる母親を安心させるためにも──。そうなるとせっかくなった正社員ですが、働き方を変えなければいけなくなりますね」
妊娠リミットも迫った現在、今年中に相手を見つけて来年は結婚、妊娠する計画だというが、「こんな状態だと婚活イベントにも参加できません」と横田さんは笑った。
「すみません、仕事が終わらなくて」と、待ち合わせ場所に小走りで現れた小川洋子さん(45歳、仮名)。4月に国際協力関係の会社で期限付き職員として働きだしたばかりとあって、仕事を覚えるのに必死で、午後6時の定時での退社はほとんどできない。
小川さんは大学卒業後、総合職で大手旅行会社に就職。9年働いた後に、菓子職人になると決意して会社を辞めた。しばらくは専門学校に通い、料理教室で講師をしていたが賃金の安さなど待遇面で満足できなかった。以前のように海外とつながる会社がいいと転職を考えた。
ところが、折からの就職氷河期で正社員になるのは難しかった。実家を出ての一人暮らし。生活していくためにやむを得ず、派遣、契約社員と渡り歩いた。努力家の小川さんは、与えられた場所でそれなりに仕事をしてきたが、雇用には期限がある。そのたびに新たに就活をしなければならなかった。現在の職場に決まるまでの就活は約半年を要し、5社ほど落ちたという。
●50歳になっても就活
「国際関係の今の仕事にはやりがいもあるし、働くこと自体はいいのです。けれども契約が切れるたびに、また就活をしなければならないことを考えると、これが耐えられない。次の就活は3年後なら48歳。5年後なら50歳です。その頃は、年齢的にも難しいだろうし、いつまでこんな状態が続くのかと思ってしまいます」
父親からは、
「そんな思いをするくらいなら、最初の会社を辞めなければよかったのに」
と苦言を呈されることもあるというが、「自分で選んだ道だから」と後悔はしていない。
これまで縁談もあったが、結婚には結びつかなかった。今はあまり結婚願望がないと言う。
「不安を抱えながら生きていくより、パートナーがいたほうがいいのでしょうが、いまさら生活のために結婚しようとは思っていません。この人以外に結婚相手はいないという確信があればするでしょうが……。それより今は新しい仕事を覚えるほうが先です」
小川さんがいちばん心を痛めているのは、今年1月に脳内出血で倒れ半身不随になった母親のこと。リハビリなどの介護は、父親任せになっている。
「平日は実家に帰る時間がなく、やっと休日に訪ねる程度しか関われません。父には申し訳ない気持ちでいっぱいです」
小川さんだけではない。アラフォー世代にとって、介護の問題が働き方にも大きな影響を与えそうだ。
●次は私もリストラに
鈴木めぐみさん(43歳、仮名)は、総合職として人材関連の会社に入社して、20年。会社は吸収合併を繰り返しながら名前や形態を変えてきたが、ずっとクリエーティブディレクターとして仕事をしてきた。
いまや4人のチームを束ねるグループリーダーで、管理職になった。業界全体では仕事の単価は低くなったため、その分、量をこなす必要もあって、ノー残業デー以外は、ほとんど終電で帰宅する。
「大げさに言えば、24時間ずっと仕事のことを考えているという感じです。でも最近、このままずっと働かなければいけないのかって、思い悩むことも多くなりました」
それはある騒動がきっかけだった。同じポジションにいた55歳の先輩社員が辞職に追い込まれ、会社を去っていったからだ。実質的なリストラで、鈴木さんも遅かれ早かれ、同じ目に遭うのではないか、と不安が付きまとう。
「経営陣が変わり、コスパばかり考えて、ものづくりに対する理解がなくなってしまったのです。明日は我が身。55歳でリストラされるよりも、早いうちに転職したほうがいいかな、と考えます」
一方で、給料は少し下がったとはいえ、鈴木さん一人が生活していけるだけの金額は十分あり、仕事も次から次へと入ってきてやりがいがあるので「辞められない」とも。
この業界は常に人手不足で、中途採用をしているが、年齢差別や男女差別は歴然としてある。女性だったら35歳くらいまでしか採らないし、子どもを産んで産休や育休を取る可能性のある女性や高学歴で優秀な仕事をしてきた人より、使いやすい若い男性を採る。実情が分かっているから転職を躊躇してしまう。
●仕事は人生そのもの
バリバリ働いていた3年前に、乳がんになった。会社を休んで手術をし、放射線治療にホルモン注射、抗がん剤治療。一時、働き方を緩めたが、そうも言っていられず、また元の多忙な生活に戻った。
今は飲み薬だけになったが、治療の影響で汗をかく、ボーッとするなど、更年期と同じような症状が出る。「しんどい、疲れる」と思うのは毎日だ。しかし病気のせいにはしたくない。「病気も私の個性なの」と社内では正直に話している。
「30歳のときから毎月5万円ずつ15年間保険料を払って、60歳で1千万円になる貯蓄型の保険に入っています。あと2年でそれが掛け終わるので、そうしたら仕事を辞めて、大好きなバリ島で仕事を見つけて移住したいなとも思います」
とはいえ、バリで仕事が見つかるかどうかも分からない。ホテルの社員の口はあるというが、あっても月に5万円程度の収入にしかならない。それで生活していけるのかどうか。
そして数カ月に1回の乳がんの定期検診もある。鈴木さん自身は、玄米菜食で体を気遣っているが、がんが再発しないとも限らない。さらには、今は健康だが、年金暮らしの70代の両親の介護の問題も迫っている。心配は尽きず、バリ行きも思案に暮れている。
「年を取ると、もっとお金持ちになって楽になり、何か良くなるものだと思っていたのですが、年々悩みは尽きないんだと分かりました。10年後ですか? 10年前も、結婚していたことを除けば何ひとつ変わっていません。だから、いつまで働けばいいの、と思いながら、同じように働いているのではないでしょうか(笑)」
彼女たちに共通するのは働くことはけっして嫌ではないということ。ただ働き始めて二十余年。環境や働き方、健康面の状況も大きく変化した。少し休んで、行く末を考えてみる時期に入ったのかもしれない。
それでも「夫も子どももいない私にとって、働くことは人生そのものです」(鈴木さん)
その言葉が心に響いた。
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