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改正タクシー事業化特別措置法 市場経済無視した天下の悪法
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140616-00000012-pseven-soci
週刊ポスト 2014年6月27日号
タクシーの営業活動を規制する改正タクシー事業適正化・活性化特別措置法が1月から施行された。それに伴って、国土交通省によるタクシー運賃の監督は改正前よりさらに厳しくなった。
簡単にいえば、役所が運賃の下限を決め、従わないと運賃変更命令や車両の使用停止処分を出す。それでも抵抗すれば、事業許可を取り消すという内容だ。利用者とすれば嬉しい話ではないが、動いたのはタクシー会社のほうだった。
MKグループなど大阪の複数のタクシー会社が運賃変更命令などの差し止めを求めて大阪地裁に仮処分を申請した。地裁は5月23日、国交省が定めた狭い運賃幅が「裁量権の範囲を逸脱している」として差し止めを命じる決定を出している。
最終的な判決ではないものの、司法が「タクシー特措法による運賃の決め方に問題あり」という判断を下した形である。ところが、ここへ来て司法判断に逆行するように、役所の裁量によって一段と規制強化が進みかねない事態が水面下で進行している。
どういうことか。
今回のタクシー特措法では、供給過剰に陥りやすい大都市を想定して、国交省が新規参入や増車を禁止したり、強制力のある供給削減措置(免許取り消し)を発動する「特定地域」を指定できる仕組みになっている。問題はその指定基準だ。
いま役所が検討している案だと、運転手の賃金水準や車両の稼働効率、事業者の収支状況、地域の意向という4つの指標で特定地域に指定するかどうかを決めるという。
そもそも4つの指標だけで十分か、という問題がある。利用者の利便や安全運行の確保といった課題も重要であるからだ。
4つの指標に絞ってみても、判断基準が恣意(しい)的だ。国交省は、たとえば「賃金や車両の稼働効率が前回(2002年)の規制緩和直前の水準を下回ったかどうか」「地域の赤字事業者が2年連続50%超になったかどうか」といった状態を想定しているようだ。
それらの指標を現実にあてはめると、どれくらいのタクシーが規制対象になるか。事態を懸念した規制改革会議は役所の担当者を呼んでヒアリングした。すると少なくとも全国の約6割、もしくはそれ以上のタクシーが下限運賃の厳守を強いられそうな実態が明らかになった。
要するに、ほとんどの大都市では企業努力で運賃を引き下げようにも「役所が強権を発動して引き下げられない」という話である。新規参入を考える事業者だけでなく、利用者にとっても不都合なのは言うまでもない。
今回の改正タクシー特措法は増車の禁止や免許取り消し、違反者に対する刑罰適用にとどまらず、市場経済の原則を司る独占禁止法の適用除外まで盛り込んでいる。法律本体がそうなのに、法律の運用を担当する役所が局長通達のさじ加減一つでほとんどの大都市に適用できるとなると、これは規制改革どころか改悪といっていいだろう。
たとえば、運賃上限だけ決めて下限はできる限り競争に任せる。それで経営が成り立たなかったり、低賃金で運転手が集まらなかったりした会社には“退場”を迫る。そういう市場メカニズムを働かせるべきだ。
渋滞を考慮すると日本のタクシー料金はシンガポールやソウルはもちろん、パリやローマ、ニューヨークよりも高い。2020年の東京五輪で観光客の不評が心配になる。
(文中敬称略)
文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)。
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