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改革開放35年間の「ウミ」が溜まる中国で指摘され始めた自国経済への悲観論
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39546
2014年06月16日(月) 近藤 大介 北京のランダム・ウォーカー 現代ビジネス
■笑止千万な中国メディアの報道
6月11日、再び中国空軍の戦闘機が、東シナ海で日本の自衛隊機に30mまで異常接近し、小野寺五典防衛相が怒りのコメントを発表した。
ところが翌12日、中国国防部は、次のように発表した。
〈 昨日10時17分から28分にかけて、中国空軍航空兵部隊が東海の防空識別圏を巡視中、自衛隊のF15戦闘機2機がわが国の防空識別圏に侵入。そのまま追走してきて、30mの至近距離まで接近、わが機の飛行に著しく危険を及ぼした。そこでわが方の殲11戦闘機2機が緊急出動し、150mの距離を保ちながら、日本側の検証を行った。わが方のパイロットは専門的、規範的に自己コントロールし、日本側の危険な挑発に耐えた。
長く日本側が、わが方の安全を脅かしてきたことが、中日の海上及び上空の安全問題の根源である。それにもかかわらず、日本側は深く自身の過誤を反省しないどころか、無責任な嘘っぱちを流布している。これは中国を悪意を持って攻撃しているものであり、中国への虚偽性と二面性を示している。日本側が国際社会に事実をはっきりさせないのならば、中国側はさらに次の一歩を講じる権利を保留するものである 〉
日本からすれば笑止千万だが、中国メディアは大々的にこのように報じたのだ。そして14億人もの中国人がテレビニュースを見ながら、「日本は再び、わが国を侵略するつもりか」「それならば日本に思い知らせてやったらどうだ」などと会話しているのである。
■改革開放35年間の「ウミ」が溜まっている
先週、丹羽宇一郎前駐中国大使を取材した。その中で、丹羽大使は次のように語っていた。
「当事者である日中両国は、日中対立にすっかり慣れてしまって物怖じしないが、欧米を始めとする第三国は、日中対立をもっと深刻に捉えている。だから日本人は、第三国の立場に立って考えてみる必要がある」
丹羽大使の話を聞いていて、なるほどと思ったが、さらに付け加えて言うなら、前述のような「中国の立場」も知っておくべきだろう。中国人も日本人より、はるかに深刻に両国の対立を考えているように見える。そして中国政府もまた、日本政府よりはるかに戦略的に「日中関係の揺さぶり方」を考えているように思える。
極論を言うなら、私にはどうも、習近平主席が、どこか近隣諸国と局地戦争をやりたがっているように思えてならない。その相手はベトナムなのか、日本なのか、もしくは別の国なのか。
いまの中国を俯瞰してみると、改革開放35年間の「ウミ」が溜まっている。大気汚染を始めとする環境問題も然り、相次ぐテロも然りである。「ウミ」が溜まっているからこそ、習近平政権としては、そこから国民の目をそらすための「外敵」が必要というわけだ。
中国最大の「ウミ」は、経済失速だろう。中国国内では最近、自国の経済に対する危機を、専門家たちが指摘し始めている。そんな声を、3人紹介しよう。
■「生産過剰」が中国経済失速の要因
一人目は、著名な経済学者だ。5月21日、深圳で開かれた「湖南省エリートトップ会議」で、中欧国際工商学院の経済学教授である許小年氏が、「両会(3月に開催された国会)後の中国経済の政策と民営企業の発展」と題した講演を行った。
許教授は、恐るべき中国経済の悲観論を語ったのだった。少し長くなるが、以下はその大意だ。
〈 今年の第1四半期、中国経済は目に見えて悪化した。政府はGDPが7.4%成長したと発表したが、この数値が正しいと証明するのは困難だ。私はもう長らく、政府が発表するGDPの数値など見ていない。われわれの実感とあまりにかけ離れているからだ。
ではGDPを見ずして何を見るのか。李克強首相は、外国人に聞かれて、「私が見ているのはGDPではなく、発電量、鉄道輸送量、銀行の中長期貸付額の3つだけだ」と述べたが、私も同様だ。中国のGDP成長率は、昨年全体の7.7%から7.4%に失速したのではなく、低く見積もっても、実際には1%〜2%は失速しているはずだ。
なぜ経済失速が起こっているのか。理由は多々あろうが、大きな理由の一つが、生産過剰である。
中国の過去十数年の経済成長のエンジンは、固定資産投資にあった。固定資産投資が減れば経済は失速するのだ。
では昨今、なぜ固定資産投資が減ってきているのか。それは第一に、生産が過剰だからだ。投資が消費を上回り、投資分が市場で消化しきれない。どの業界も、特に伝統産業が生産過剰に陥っていて、企業は新たな設備投資には慎重だ。不動産がその典型だ。
第二に、消費の問題だ。投資に疲労が起これば、消費が経済の牽引役になるべきだ。だが人々が消費するには、収入が増えねばならない。だが過去十数年間、人々の収入はGDPの成長を大きく下回っているのだ。
第三に、世界経済の危機だ。アメリカ、中国、EU、日本の4大経済圏のうち、アメリカ経済だけが復活してきている。だから世界の投資家はアメリカに投資する。EUはまだ危機から抜け出していない。日本は「失われた20年」からいまだ抜け出しておらず、アベノミクスでは日本が抱える根本的な構造問題は解決できないと、私は個人的に見ている。そしていよいよ中国が下降し始めた。
そのような状況下で、中国経済は、短期的にV字回復はしない。つまり、これから一定期間にわたって、低成長時代を覚悟せねばならないのだ。
中国経済がV字回復しない理由の第一は、生産過剰のため、投資が増えないからだ。生産過剰を克服するには、市場が消費して消化しなければならない。それには、構造改革が必要だ。構造改革をやると、企業が倒産し、失業者が出る。
いまの中国の生産過剰は、5%、10%どころではない。20%、30%、深刻な産業では50%にも達する。こんな市場に、誰が投資するだろうか。
そうかといって、国民の収入がGDPの伸びを下回っていて、すぐには消費は喚起されない。2008年に政府は4兆元を緊急出動した。これは言ってみればドーピング効果で、長く続くものではない。すぐにまた落ち始め、2012年後半に、2度目の4兆元のドーピングをやった。これは報道されていないので、知る人ぞ知ることだ。このドーピング行為も長続きはせず、今年第1四半期にすでに、真の経済実態を示す発電量は落ち始めた。
中国は健全に経済成長しているのではなく、政府が無理やり内需を喚起しているだけなので、なかなかV字回復とはいかないのだ。
こうした状況を改善するには、全面的な減税を施すという手がある。そうして政府の収入を減らして、国民の収入を増やすのだ。だが政府はこのような調整はヤル気がないから、中国経済は比較的長期にわたって低成長が続くことになる。
■なぜ李克強総理は強い刺激策をとらないのか
インターネットで面白いことを言う人がいた。
「過去には、温総理が強い刺激策を行っていた。いまは(李克)強総理が温々した刺激策を行っている」(過去温総強刺激、現在強総温刺激)
なぜ李克強総理は強い刺激策を取らないのか。第一に、2008年の4億元の副作用を抱えている。大量の生産過剰、浪費、汚職、腐敗、突貫経営などだ。
第二に、政府にはもう4兆元はない。地方は多額の負債に喘いでいる。中央政府は、高速鉄道網敷設というインフラ整備への投資を増やしているが、高速鉄道への投資は回収できない。
そこで、国有部門を民間に開放したり、小さな政府を目指したりしている。そんなこんなで、いまの政権は強い経済刺激策は打てない。このことは、李克強総理も、中央銀行総裁も、財政部長も皆が表明している。だから企業は政府を当てにするのでなく、自力で立ち直らねばならない。
中国政府の改革の方向性は正しいのだ。例えば、混合所有制だ。市場と民間企業の活力を利用して国有企業を改革し、寡占状態を改めていく。中石化はガソリンスタンドを開放し、鉄道部は鉄道関連への投資を開放する。
だが、国有企業の寡占分野に民間が参入できるとして、それが何になるのだろう。国有企業のひと株株主になったら、株主の権利が保護されたり、経営に参加できたりするというのか。現実は、民間のカネは、中国国内を信用せずに、安全な海外に流出するばかりではないか。
例えば、上海自由貿易区は、何も実質的な変化が起こっていない。なぜかと言えば、既得権益の壁に阻まれるからだ。トップダウンで命令をしても、下部の既得権益の壁を取っ払うことは容易ではない。
上海自由貿易区で資本や貯蓄を開放するといっても、反対者は、拙速に開放すれば国家の安全が脅かされると言い出し、資本市場と対立する。こうした反対者の大部分は政府の官僚だ。いったん開放したら彼らの既得権益は消えてしまう。大銀行も、既得権益を侵されるので、実は反対だ。
こうした環境下で、民間企業はどうすればよいのか。
短期的には、現金を蓄えることだ。銀行からの融資はますます困難になるので、とにかく現金を回収することだ。
低コストで成長し、市場を一気に独占するような時代は終わった。大きいものより強いものを目指すべきだ 〉
以上である。
■2008年が構造改革実施の最良の時期だった
二人目は、中国で初めてネットビジネスを始めた実業家で、「美度」董事長の王文剛氏である。
5月28日、王董事長がブログで書いた以下の文章が、中国全土のネット愛好者たちに読まれて話題を呼んだ。
〈 克強同志が第三の道を選択した。だから皆さん、いまから3年間の緊張した日々を覚悟した方がよい。
中国経済の極端な調整期が始まった。これは能動的なものではなく受動的なものだ。アメリカの金融緩和がまもなく終わる。アメリカの実質利率は上がり始めた。アメリカがドルの大規模な回収を始めた。この影響で各国が利率を上げ、自国通貨を安くしようとする。
ところが中国は違う。そのため外資は中国から逃げていき、資産価格の崩壊を招く。このような混乱によって多くの投資家は現金を持とうとし、「銭荒」(資金不足)が蔓延する。中国政府は結局、経済の構造改革を余儀なくされる。言ってみれば危機が改革を促すのだ。
実際には、中国はもっと早く経済の構造改革をしておくべきだったのだ。5年前、外部の圧力によって、4兆元の刺激策を取った。去年の下半期に、再び4兆元の刺激策を取って構造改革の機会を逸した。
習近平新政権の運気がいいとは言えない。今や外部の状況も変化し、アメリカは構造改革を終え、量的緩和を終了しようとしている。アメリカの量的緩和の風がなければ、中国の量的緩和は効果がなくなる。それでも大量に人民元を刷って、人民元は徹底した崩壊局面を迎える。いずれ2度目の4兆元の刺激策が失敗し、長年先延ばししてきた構造改革を迫られることだろう。
なぜ構造改革を迫られるかと言えば、中国はクローズドな為替システムを取っているからだ。貨幣の発行はコントロールを失い、インフレ管理もできなくなり、実質上の長期にわたるマイナス利率が2桁水準になり、工業生産部門の利益はインフレを下回るようになる。それによって工業生産部門の資金が不動産に流れ、産業の先端化がされない中で停滞が起こってくる。
こうして中国経済は失速していく。そしてラテンアメリカ国家のようになるだろう。誤った貨幣政策はすでに災難をもたらしており、経済の構造改革が進まなければ、中国は21世紀に発展していくことはできなくなる。
アメリカは、2008年に構造改革を進めた。5年を経て、いまや基本的に回復し、強大な競争力を得た。EUもドイツの牽引力で、歴史的な構造改革に着手し始めた。いまは回復の途上だ。回復がのろい日本でさえ、着実に回復基調に向かっている。
2008年は構造改革を行うのに、どの国にとっても最良の時期だった。しかし、いろんな理由で、中国はまったく逆のことを行った。そしてそれから5年間、中国の生産性は下降した。競争力も落ち、産業は先端化しない前に失速してしまった。経済状況は楽観視できず、背水の陣に置かれているのだ。
■構造改革に向けた3つの選択
今年下半期は、中国経済の構造改革のカギになる時期だ。政府の政策によって、今後の中国は変わっていく。
一つ目の選択は、2度目の4兆元を延長し、もしくは3度目の4兆元を始める。長所は、地方債を継続して増やせること。不動産バブルは続き、高度経済成長も続き、雇用も確保できる。短所は、経済の構造改革が進まず、最先端技術は生まれず、非先端技術は外国へ移転し、工業化の道が閉ざされること。結果として、米欧日が構造改革を終えた後、中国経済は危機に陥り崩壊する。
二つ目の選択は、「万般の変化に不動で応じる」選択だ。流動性が極度になくなっても座視し、資産価格が大幅に下落するに任せる。長所は、すべての余計なバブル資産がはじけ、価格は合理的なレベルに落ち着き、各種資源は再分配され、経済の構造改革が始まること。
短所は、不動産バブルが崩壊し、金融システムは打撃を受け、地方財政は破綻し、経済が成長しないこと。雇用は悪化し、社会保障費が急増する。結論としては、国民経済は全面的に衰退し、政府転覆の危機に陥る。それでも国民経済が復活する可能性はある。
第三の選択は、選択的構造改革の道だ。先に税制を改革し、後で金融を改革する。財政金融を保障しながら、不動産投資は厳格にコントロールしていく。物価は調整しながら資産価格は保持するよう努める。長所は、負債の増大を封殺できる。バブルの膨張を防げる。
インフレを有効にコントロールできる。適切に物価調整ができる。資源を工業部門に回せる。産業の先端化が図れること。短所は、官僚たちがピンチになる。不動産業者が淘汰される。経済は低成長となる。雇用は理想的とはいかない。社会保障の圧力は増大すること。
結論としては、皆で苦労を分かち合いながら努力して構造改革を進め、経済の生産性と競争力を上げ、再度の高度経済成長を目指そうというものだ。
以上、3つの選択の中で、われわれは第三の選択を目指すべきだ。なぜなら、第一の選択は、今年下半期は小春日和となるが、それ以降は大恐慌となる。第二の選択は、下半期に早くも大恐慌がやってくる。それ以降も余波が続く。第三の選択は、今年下半期は落ち込み、それ以降も衰退が避けられないが、2017年以降は復活できる。
いずれにしても、いまや「現金こそ王なり」だ。投資をするなら、まずはドル資産に投資し、中国経済の復活を待って戻す。全国民が3年間耐えて、新たな局面を迎えようではないか 〉
この王文剛論文では3つの選択肢を挙げているが、どれを選択しても中国経済は大失速していくことが予見されている。
■不動産価格が下がる3つの理由
3人目に登場するのは、「中国の不動産王」こと、SOHO中国有限公司董事長の潘石屹である。5月23日、清華大学経営管理学院中国企業家フォーラムで、潘石屹董事長は、次のように述べた。
〈 私は住宅市場の将来を悲観している。中国の不動産は、たとえてみれば、まさにタイタニック号だ。もうまもなく前面の氷山に激突する。激突後は、不動産業界のリスクが起こるだけでなく、さらに大きな金融業界のリスクが勃発するだろう。残念ながら、日々、市場に関わっている者として、楽観的な言論に与することはできないのだ。
実は市場というのは、どんな経済理論よりも複雑怪奇なものだ。私は自分の目で市場を見つめ、市場と対峙して物事を判断する。さらに統計も重視する。私が言う統計とは、中国国家統計局が発表する類いの統計では、絶対にない。
不動産価格が下がっていく原因は3つある。第一に、不動産統一登記条例が施行されて以降、市場への供給量が増えたので、価格は下がる。そして不動産登記をしなければならないので、人々は持っている人民元を不動産に投資せず、ポンドやドルなどに替えるようになる。
第二に、不動産税の政策によるものだ。北京には、不動産を20ヵ所所有している人もいれば、100ヵ所所有している人もいる。かつそれらの家は、賃貸に出されていない。不動産税の政策が始まれば、こうした不動産は手放され、供給量が増えるから、価格は必然的に下がる。
第三に、「3中全会」(昨年11月の中国共産党の重要会議)の決定の中にあったが、農村の集団経営の建設用地と国有の土地を、同等、同権、同価格で市場化させるという。例えば、北京のCBD(中央商業地域)は4平方キロメートルで、北京の農村建設用地は1006平方キロメートル、CBDの250倍以上もの広さがある。そのため、土地の供給量は非常に大きい。
さらに、もしも不動産市場に問題が起これば、最も弱い部分は銀行の住宅ローンではなく、金融産品だ。信託、第三方理財、委託預金などだ。これらは利率が非常に高いが、質的にはひどい。それなのに不動産会社は、これらの怪しげなところから資金を引っ張ってくる。
実際、彼らの資金繰りはいつも綱渡りだ。もし今後、不動産価格が2割から3割落ちれば、こうした問題がすべて浮き彫りになってくるに違いない 〉
そういえば、丹羽大使は、こうも力説していた。
「中国の経済崩壊を期待している日本人がいるが、中国経済が崩壊して困るのは日本企業だということを忘れてはならない」
そういうことも含めて、今年下半期の中国経済を注視していくべきだろう。
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