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高年齢者雇用安定助成金はほとんど使われていない
目標２千人→実績１人…厚労省、転職支援でずさん助成金
http://www.asahi.com/articles/ASG6G5FP3G6GULFA005.html
2014年6月15日15時37分 朝日新聞
定年を控えた高年齢者を雇った企業にお金を出す厚生労働省の助成金で、２０１３年度の実績が２千人の目標に対し、わずか１人だったことがわかった。関連事業も含め約７０億円の予算の９９％が余ったが、今年度は予算を８４億円に増やした。成長戦略で高齢者雇用に力を入れているためだが、過大な見積もりを前提とした「お手盛り」予算として批判を浴びそうだ。
事業は「高年齢者雇用安定助成金」。６５歳まで働ける場を増やそうと昨年度新設され、厚労省が独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構（ＪＥＥＤ）」にお金を出し、二つのコースを委託している。
定年を控えた転職者を、職業紹介会社を通じて１人雇うごとに企業が７０万円もらえるコースでは、２０２５人分の利用想定に対し、今年３月までの実績はわずか１人だった。
また、高年齢者が働きやすいように、負担を減らす設備を買ったお金などに最大３分の２を助成（上限５００万円）するコースも、９４５件の想定に対して実績は４８件で、見込みの約２０分の１に過ぎなかった。
結局、両コースで使われたのは総額約４千万円。約７０億円の予算のうち、９９％超が余った。事業を担当する厚労省高齢者雇用対策課は「類似の助成金を参考にして予算を組んだが、初年度ということもあり、ＰＲ不足だった」と説明する。
しかし、助成金の算定根拠は、過大な「需要」を前提にし、実態に即したものではなかった。
例えば、働きやすい設備の導入を企業に促す助成金は、従業員３０１人以上の企業で、そうした設備が整っていない企業すべてが助成金を利用することを前提にしていた。
厚労省は「余ったお金は国に返す」というが、１４年度はこの事業に、２割増の８４億円の予算をとった。転職者の想定を９１５人、設備投資は７７１件と「下方修正」するものの、設備投資に出すお金の上限額を５００万から１千万円に引き上げるためだ。９９％を余らせた初年度と異なり、「助成金の認知度が上がる」ため、増額が必要とする。
ただ、すでに省内には「今年も間違いなく余る」との声があがる。転職者を雇い入れた企業に対しては、他にも似たような助成金があるからだ。
その一つが、１４年度予算で前年度当初予算より約１５０倍の３０１億円が組まれた「労働移動支援助成金」だ。元々は従業員を転職させた企業にお金を出していたが、転職者を雇い入れた企業にも助成金を出すよう拡充した。
使い切れない助成金ができたことについて、厚労省職員は「政治に対する『見せ金』で、現場の実態を反映していない。役所内で無駄な仕事を増やしている」と明かす。
元厚労省官僚で、労働行政に詳しい神戸学院大の中野雅至教授（行政学）は、「使われることを想定して助成金をつくったのか疑問だ。誰のための制度かを明確にして根本的につくりかえないと、生きたお金の使い方にならない」と指摘する。（山本知弘、神山純一）
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