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60すぎたら、どんどん捨てなさい【part6】面倒も見てもらわない 捨ててこそ、楽しい人生が始まる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39444
2014年06月13日(金) 週刊現代 :現代ビジネス
■面倒も見てもらわない
新居に移り住むことに決めた山崎さんのマンション選びのポイントは、3つだった。
「駅から徒歩5分圏内であること」、「自分か妻のどちらかが先に死んだら、すぐに売りに出せるような手頃な値段の物件であること」、「シンプルなつくりで、住む人を選ばない間取りであること」。
いざ引っ越しを決意すると、当然、荷物を減らさなければならない。次は「捨てるモノ」の選別が始まった。それは膨大な量にのぼる。たとえば―。
・3000冊以上の本
・30着以上のスーツ
・一度も使ったことのない食器類
・数十年使っているリュックやハンドバッグ
・賞味期限の切れた調味料、缶詰、レトルト食品
・子供部屋の勉強机
・なぜか取ってあったチャイルドシート
・ぶら下がり健康器
・友人からの旅行土産
まだまだ挙げればキリがないほどの不用品をすべてあわせれば、実に1tトラック3台分にも達することが分かった。
「もし引っ越しを決めるのが5年遅かったらと思うと、ゾッとしますよ。その頃にはいまより体力も衰えていて、不用品を捨てる気力が湧かなかったかもしれません」
こうして家とモノを捨てた山崎さんは、独身時代以来の身軽なマンション暮らしを始めてみて、次第に自分が次に送りたいと思い描く暮らしが見えてきたのだという。
山崎さんは、これから10年ほどいまの都心での生活を満喫したあとにマンションを売り払い、その資金を元に夫婦で有料老人ホームに入居する計画を立てている。平均寿命まで生きた場合にかかる生活費をシミュレーションし、それにあわせて持っているおカネを使い切る計算をしているのだという。
「資産を使い切るといっても、特に変わったことをするつもりもないんです。起きたい時間に起きて、寝たい時間に寝る。観たいテレビを心ゆくまで観て、出かけたいときに出かけるという生活を続けるだけなんですから。けれど、実はそれがもっともぜいたくな暮らしであることに気づきました。もう、やりたくないことはやらない。そう決めたのです」
そして最終的に残すおカネは、自分と妻の火葬代だけあればそれで十分だと語る。山崎さんはこう締めくくる。
「『子供のために』、『いざという時のために』といって死ぬまでカネを抱えこむ。そんな人生に、僕はあまり意味があるとは感じません。いま、この瞬間をどう生きるのか、どう楽しむのかが一番大事なことではないでしょうか。
『子孫のために美田を買わず』という言葉がありますが、本当にその通りです。その代わり、息子に『俺たちにもし何かあったら、面倒をみてくれよ』という気持ちもありません。息子には息子の人生を、私に左右されることなく、歩んでほしいと思っています」
山崎さんのようにキッパリと決断できるのは珍しいケースだと、消費生活アドバイザーの阿部絢子氏は言う。
「実は、団塊の世代は『捨てる』ことが苦手な方が多いんです。団塊世代は、日本がどんどん豊かになっていく様をその目で見て、直に体験してきました。モノが豊かであることの良さを知っているからこそ、その感覚から逃れられない。つい追いかけてしまう。結果としてモノを捨てられず、ますます身の回りにモノが溢れていくという悪循環に陥る人が大勢います。
そういう方に対しては、必要な分だけ残して、他はすべて捨ててしまうということでしか、生活は変えられないとアドバイスしています」
サラリーマンとして電機メーカーに38年間勤務した埼玉県在住の加藤勝さん(61歳・仮名)は自身の経験をこう振り返る。
「定年を機に、ふと息子に言ってみたんです。『お父さんのスーツ、もうこれから使わないから、お前が着るか』と。そうしたら、『いいよ。スーツくらい自分で買うから』と、少し気まずそうに言われてしまいました。息子のホンネとしては、『そんなの着るわけないじゃん』だったのかもしれません。
ショックだったけど、その一言で吹っ切れたものがありました。自分のモノを残す、その発想は、相手にとっては迷惑なことなのかもしれない。そして一方で、『カネならもらう』ともし息子が思っているとしたら、それはそれでムシが良すぎる。息子のためにカネを残すのは彼のためにもならないと、その時気づいたんです」
加藤さんは翌日、愛着のある20着ほどのスーツを、淡々とゴミ袋に詰めた。
「夜眠るときは少し名残惜しい気もしましたが、朝、ゴミ捨て場に出して、回収したゴミ収集車が走り去るのを見届けたとき、いまだかつてないような爽快感を味わったんです。ああ、せいせいした、と。
私はいま、どうやって自分のカネを自分で使い切ろうか、久しぶりに大型バイクにでも乗るかと、楽しく思案を巡らせているところです」
■無理をしても遊ぶ
前出の中村メイコ氏も、洋服類を徹底的に処分した時期があったという。
「モノを捨てると、物理的にモノが減るだけではなく、モノにこめられた想いも整理できて、心が軽くなるんです。そうすることで、改めて前向きに生きることができるようになります。
私は75歳から3年ちょっとの間で、持ち物を3分の1に減らしました。きっかけは、夫に『いろいろ人生の仕舞い支度をしているようだけど、あのバスケットに入っているパンストの山を何とかしてくれよ。お前が死んだとき、残されたじいさんがカラフルなパンストを整理するハメになるのは勘弁してくれ』と言われたこと(笑)。一度身につけたパンストは捨て、未開封のものもコーディネートに困らないよう12色プラス冠婚葬祭用を残し、他はすべてフリーマーケットやバザーで処分しました。1000足以上あったパンストを50~60足ほどに減らし、それを機に他の私物もどんどん捨てたんです」
※
作家の曽野綾子氏が、「捨てる」という生き方、考え方について総括する。
「一番大切なのは、年を受け入れながら、年に呑まれないことですね。病気とも丁寧には付き合ってやらない。無理をしても遊ぶ。家の中では言いたい放題のことを言う。社会がどう思うかなんて考えない。
中には勲章をもらうことを一生の目標にしておられる方もいて、それはそれでいいのかもしれませんけど、私の友人のタイプじゃありません。勲章は、英語で『デコレーション』か『メダル』です。どちらも人生で、本質的に要るものじゃありませんね」
自分が本当に求めているものとは何なのか―心の声に耳をすませば、「捨てるものが何か」も、おのずとわかるはずである。
「週刊現代」2014年3月1日号より
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