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3段階で進む「日本バブル」を乗り切れ!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39527
2014年06月12日(木) 原田 武夫「ジャパン・ラッシュへの道」 現代ビジネス
2012年12月から突如として始まったわが国政府・日銀による一連の金融・経済政策は一般に「アベノミクス」と呼ばれている。だが私はこれが始まる前の2012年10月に上梓した小著『ジャパン・シフト』(徳間書店)から一貫して、わが国における景気上昇局面のことを「日本バブル」と呼んできた。
それだけではない。「アベノミクス」とは普通、単にデフレ脱却のためにとられた一連の施策のことを指すと考えられている。これに対して私はそれを必然的にもたらした「日本バブル」の構造は、より普遍的なものであると指摘してきた。わが国が国際社会の中心へと躍り出し、やがてはわが国が発信源となる新しい世界秩序へと再編されていく。これが「日本の平和(パックス・ジャポニカ)」である。
■3回の資産バブルが起きる
このコラムはそこに至る道のりの一端を分かりやすく示すために書いているものだが、どうやら多くの読者の皆様にとっては「至極納得の展開」とはなっていないようだ。
先日、最新の小著『世界史を動かす日本---これからの5年を迎えるために本当に知るべきこと』(徳間書店)の刊行記念講演会を東京・大阪で開催した。まず私が驚いたのが、いつもより遥かに出席される方が多かったという点だ。「何かが起きる。特にマーケットでは日本株の急上昇が起きるのではないか」と来場者の方は思っていたのであろう。ただ「いま動こう」と決断するまでにはいたっていないようであった。
そこで私は次のように説明した。
「わが国はこれからの5年間で合計3回の資産バブルを経ることになる。『アベノミクス』はその第一段階を引き起すための仕掛けに過ぎない。そしてこれら3回の資産バブルは米欧における動きとは別に、わが国に固有の形で起きる。『日本バブル』と呼ぶのが適当だ」
第一段階の「日本バブル」は円安誘導による日本株の上昇局面を指す。もっともこれも局面だけを見ていたのでは物事の本質を見失う。わが国の「本当の中心」とそれを手伝う財務金融当局が画策しているのは、積み重なる国家債務を事実上のデフォルト(債務不履行)へと追いやり、なくすことである。無論、これを強行するためには踏むべき段階が2つある。その一つを「財政調整」、そしてもう一つを「債務交換」という。表向き説明がまったくなされないので知らない読者も多いだろうが、実はこれが国際金融における確立されたルールなのである。
この内、「財政調整」は2つの段階に分かれている。まずは「無駄な支出を減らす」という意味での事業仕分けを民主党政権時代に終えている。その次に行うべきなのが政府保有資産の売却なのである。ここで国有地と政府保有株を大量に放出することになる。そのためにマネーがわが国のマーケットを満たしている必要がある。金融・経済に疎いはずの安倍晋三首相が「何がなんでも」とアベノミクスに舵を切り、日銀に異次元緩和を強制したことの理由はここにある。
今の私たちは、この第一段階としての「日本バブル」の最終章とでもいうべきところにいる。第二次安倍政権は当初、事実上の「口先介入」によって盛んに為替マーケットを操作し、円安へと誘導した。これによって日本株マーケットは一気に陽転し、日本人皆の顔に笑顔がこぼれた。
■強烈な円高転換によって、「日本バブル」第一弾が終わる
だがこのやり方には明らかに限界があった。なぜならば円安誘導し始めたわが国の傍らで、特に近隣のアジア諸国はいずれも「通貨高」に陥り、ただでさえ不安定であった経済状況が一気に悪化し始めたからだ。当然、「日本憎し」といった論調が東アジアの中ではびこるようになり、それがやがて領土紛争の激化や外交上での衝突にまで至るようになってしまった。
こうなると安倍晋三政権としても円安誘導という「伝家の宝刀」は使えない。だがその一方で密かにわが国の「本当の中心」の意向を忖度し、事実上の“デフォルト(国家債務不履行)”処理へと導く措置を取り続けなければならない以上、歩みを止めるわけにはいかない。そのため今度は「禁断の果実」に手を出すことになる。すなわち「公的・準公的マネーの大量投入による官製バブルへの誘導」だ。
金融マーケットでは、近く、こうした公的・準公的マネーの総動員が始まるとささやかれ始めている。ハイエナのように世界中でマネーの匂いを嗅ぎまわっている米欧系の「越境する投資主体」たちがこうした策動に気付かないはずがない。先回りして、表向きは今年に入ってからこれ見よがしに日本株を大量に売却しつつ、その実、暴落の恐怖に怯えて虎の子の現物株を投げ売りし続けた私たち「個人」の日本株を底値で買い続けてきたのである。
こうした外資勢が大挙として到来した以上、これから日本株マーケットで何が起きていくのかは火を見るよりも明らかだ。わが国を含め、世界的に長期金利が低下しているという好条件の中、平均株価は19000円、いや20000円を目指して急騰することになる。
こうした状況を見て、臆病な私たち日本の「個人」もさすがに我慢していられなくなるのは目に見えている。こうした官製バブルが「7〜9月期の経済指標を見て消費増税10パーセントを判断する」という安倍晋三首相の公約を実現するためのものであることを知らずに、目先の株高局面に次々に乗ってしまうだろう。7月ともなれば誰しもが「株高!株高!」と叫び、昔の言葉で言えば「財テク」に走り始めているはずだ。久々に潤沢に支払われるボーナスを片手に、夏休み、にわか「個人投資家」になる人々が続出する中、日本株マーケットは永遠のバブルに見舞われたかのような状況になる。
だが、「上げは下げのため」というのがマーケットの鉄則なのである。逆に「下げは上げのため」でもあるこの鉄則を「復元力の原則」という。マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を日々ウォッチしている私の目から見ると明らかに9月半ば以降に炸裂するリスクが世界中にゴロゴロしている。しかも厄介なことにそれらの導火線は巧みにつなげられている。炸裂するときには複合的かつ同時多発的に炸裂する危険性が高いのである。
紙幅の都合上、ここではその結果生じる「強烈な円高転換」により、「日本バブル」の第1弾は終わる、とだけ書いておきたい。そしてその後、「円高基調だがなぜか日本株高」という第2弾、そして「事実上のデフォルト処理がなされるもののやはり日本株が選ばれる」という第3弾の「日本バブル」が続いていく。
■「何も見ない、何も考えない、何もしない」では乗り切れない
いずれにせよ大切なことはすでに始まっている「日本バブル」という大きな構造をまずは頭に入れ、考え続け、動き続けることである。これまでのように「何も見ない、何も考えない、何もしない」という“3ナイ主義”でやり過ごすわけにはいかない。金融マーケットを中心に国際社会、いや世界史全体が大きく揺さぶられ、ヴォラティリティに翻弄されることになるからだ。
マーケットの「谷」で毅然と動き、「山」では大欲を出さずに撤収する勇気を持ち、巧みに潮目を乗りこなすことが大切だ。これをこなせる日本人こそが「新しい日本人」となり、次の世界秩序を創る担い手として注目されるようになる。
「平均株価が上がった」だの、「円安にブレた」だの一喜一憂することは、まったくもって無意味なのである。大切なことは「5年後の自分」をイメージしながら前に進むこと。これしかない。その未来に至るための切符は実は私たち日本人の全員が手にしている。そしてその道のりは誰の目にも明らかな「株高」局面の中、公然と始まっている。
原田武夫(はらだ・たけお)
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役(CEO)
東京大学法学部在学中に外交官試験に合格、外務省に外務公務員T種職員として入省。12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に自主退職。在任中は、六ヶ国協議や日朝協議等に多数出席した。「すべての日本人に“情報リテラシー”を!」という想いの下、情報リテラシー教育を多方面に展開。自ら調査・分析レポートを執筆すると共に、国内大手企業等に対するグローバル人財研修事業を全国で展開する。 2014年5月に最新刊『世界史を動かす日本――これからの5年を迎えるために本当に知るべきこと』(徳間書店)を上梓。
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