05. 2014年6月13日 10:55:48
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ちなみに日本のトップグローバル企業のトヨタも高付加価値ブランドビジネスでは苦戦しているhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40939 JBpress>海外>The Economist [The Economist] 日本の高級車:インフィニティの限界 2014年06月13日(Fri) The Economist (英エコノミスト誌 2014年6月7日号) 日本の高級車ブランドは、ドイツのライバル車にまだ大きく水をあけられている。高級車ブランドを抱える日本の大手自動車メーカーは、大きな潜在的利益を取り逃がしている。 1989年、レクサスが米国で発売される1カ月前、トヨタ自動車は、丘の上のお城で賑やかなパーティーを開くドイツ貴族が出てくるテレビ広告を流すことを検討していた。ドイツ人は60年近くにわたって高級・高性能車市場を独占してきたが、「それを楽しめるのもあと30日だけ」というナレーションを入れていた。 そのCMがテレビで流れることはなかったが、それはかえって好都合だった。メルセデス、BMW、フォルクスワーゲン(VW)グループのアウディというドイツの3ブランドは、新興国市場の成長によって世界的な高級車需要が膨らむにつれ、ますます支配的になったからだ。 一方、日本の3大自動車メーカー、トヨタ、ホンダ、日産自動車が1980年代に生み出した高級車ブランドのレクサス、アキュラ、インフィニティは取り残された(図参照)。
現在、ドイツのトリオが合計で、スピードが出て高額かつ豪華な自動車市場の7割を占めているのに対し、日本勢のシェアはたった1割だ。 そして日本勢は、英国企業の(ただし、インド人が保有する)ジャガー・ランドローバー(JLR)に追い抜かれている。JLRの昨年の販売台数は50万台に迫り、レクサスのすぐ後ろにつけた。 日本勢はドイツ車との差を縮めるために新たな取り組みを実施している。インフィニティは先月、新型の「Q50」を皮切りに、もっと「情熱的な」ラテンの雰囲気を持たせるようデザインを刷新し、「冷たく、感情のない」ドイツ車との差別化を図ると発表した。 レクサスは間もなく、成功を収めているJLRの「レンジローバー・イヴォーク」やアウディとBMWの類似車に対抗して、小型SUV(スポーツ用多目的車)「NX」を市場へ送り出す。アキュラは流線形で全体的に長いデザインのセダン「RLX」の新モデルに望みを託している。 利益率の高い高級車事業 トヨタ、ホンダ、日産にとって、高級車事業はちょっとした副業よりもずっと大きなものだ。少なくとも、そうであるべきだ。競争が熾烈な大衆車市場の利益はゼロに等しいほど小さいことがあるが、高級モデルの利益は1台当たり数千ドルにも上る。従って、自動車メーカーの高級車販売が多少でも改善されれば、会社全体の業績に、台数とは不釣り合いなほど大きな影響を与える。 日産の役員のアンディ・パーマー氏が言うように、高級車は自動車産業全体の「販売台数の12%、利益の50%」を占めるのだ。 日本の自動車メーカーの高級ブランドは当初、主に米国市場に照準を合わせており、幸先の良いスタートを切っていた。 日本の自動車メーカーの大衆車はありとあらゆる日本製品に信頼性の評判を授けていた。新たに発売された高級車は、デトロイト勢の高級車の「リンカーン」や「キャデラック」と比べ技術的に進んでおり、ドイツ製の競合車よりも安かった。2000年になると、レクサスは米国で最も売れる高級車ブランドになっており、10年以上その地位を保った。 しかし、多少の木と革で主流モデルを豪華にしたような高級車は、スタイリングよりも価値を重視する米国のドライバーを感心させたかもしれないが、イメージを大事にする欧州の顧客を感心させることはできなかった。アキュラは、恐らくその仕事の無益さを感じ取り、欧州市場をまるごと避けた。 高級車ブランドがグローバル化することに失敗したことから、日本の自動車メーカーは競争についていくための経営資源を同事業に与えるのを渋った。 猛反撃に出たドイツ勢 米国におけるレクサスの当初の成功はドイツ勢を激しい反撃に駆り立て、各社は、その見事な技術がドライバーの財布の紐を緩めるような車両の設計と、考え得るすべてのニッチ市場を埋めるためのラインアップ拡充に莫大な費用を注ぎ込んだ。ドイツ企業は比較的小型の高級車の需要拡大を成功裏に利用したが、日本の自動車メーカーはついていけなかった。 レクサスとインフィニティが生産する車種はほんの一握りで、アキュラはそれ以上に少ない。BMW、アウディ、メルセデスのモデルは数十に上り、驚くほどの速さで新車を投入している。メルセデスは2020年まで、4半期ごとにほぼ1つの新型車を出していく予定だ。 高級ブランドの構築により高い優先順位をつける必要があるという教訓を得る代わりに、日本の自動車メーカー大手は概して高級車を「付け足し」として扱い、経営幹部は一番安心して生産、販売できる大衆車に注意を傾けてきた。日産のカルロス・ゴーン社長は一時、インフィニティを完全に廃止することを検討していた。 高級車を重視しなかった結果、日本の自動車メーカーは間もなく世界最大の高級車市場となる中国で苦戦することになった。ドイツの高級車ブランドは実に見事に、「自分は成功した」と宣言する一番良い方法は自社モデルを乗り回すことだと中国の新興富裕層を説得した。BMWは現在、利益の3割を中国で稼いでいる。 日中両国の政治的緊張を考えると、日本の高級車は出だしからハンディキャップを背負っている。さらに、豊田章男社長が最近、トヨタ自身のレクサスについて認めたように、日本の高級車には「歴史とストーリー」がない。そして実は、裕福な中国のドライバーは欧州の人々と同じくらいこれを重視していた。 JLRの高級車には歴史がそれこそたくさんあり、特にレンジローバーと英国王室との関係が際立つ。JLRは昨年中国で、レクサスを追い越し、4番目に売れている高級車ブランドになった。 欧州のライバル企業と違い、日本の自動車大手3社は中国人の好みに高級車の車種を合わせる努力をほとんどしていない。また、インフィニティとアキュラは中国での組み立てを計画しているものの、現在はどこも中国で組み立てを行っていない。このため日本勢は、中国メーカーとの合弁会社を持つドイツ企業が払う必要がない25%の輸入関税を課せられている。 また、調査会社IHSオートモーティブの林淮浜氏が指摘している通り、アウディは中国本土に350のディーラー網を持っているが、レクサスは120店舗しかない。 もっと情熱を、もっと自由を 本社はようやく真剣に取り組み始めている。豊田社長は、インフィニティと同じく、レクサスのスタイリングにもっと「情熱」が必要だと認め、個人的にレクサス事業の責任を負っている。日産は、VWがアウディに自由裁量を与えているように、インフィニティ事業の独立性を高めている(アウディがVWの利益のほぼ半分を担っているのは偶然の一致ではない)。 インフィニティの本社は、日本から香港へ移転し、ブランドを磨くためにアウディ出身者をトップに迎えた。インフィニティはロンドン、サンディエゴ、北京にデザインスタジオを最近開設した。 こうした取り組みは、いずれ日本の高級車を助けるかもしれないが、市場が込み合う時期と重なった。韓国の起亜自動車と現代自動車は、魅力的な価格の高級車を市場に出している。イタリアのアルファロメオとマセラティも復活を遂げている。そしてフォード・モーターやプジョーなどの大衆車メーカーも、利益を伸ばすために、一部車種を「高級化」しようとしている。 3つの日本の高級車ブランドがしっかり競争していくためには、何年にもわたる大規模な投資と経営トップからの関心が必要になる。レクサスは、競争し続けるだけの販売台数と有望な新型車がある。それに比べると、アキュラとインフィニティの未来は確実性に乏しいように思われる。高級車事業においては、ドイツ勢が常に少しばかり速く動いているようだ。 |