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自動車業界、深刻化する若手技術者不足 異例の8社共同研究、その本音と建前は?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140609-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 6月9日(月)3時0分配信
大募集をしてもアルバイト従業員などが集まらず、一時閉店せざる得ない居酒屋チェーン。パイロット不足で欠航が相次ぐ格安航空会社(LCC)。企業経営の屋台骨を揺るがしかねない人手不足の話題が後を絶たないが、日本経済を支える重要な基幹産業として確固たる地位を占める自動車業界でも決して例外ではない。
中でも技術開発を担う若手エンジニアの人材不足が深刻な問題として浮上しており、国内の自動車メーカー8社は、異例の呉越同舟ならぬ“呉越同車”で多くの大学や研究機関と連携を取りながら産学官の英知を結集し、次世代エンジンの共同研究と技術系の人材の育成に乗り出すことになった。
トヨタ自動車をはじめ、日産自動車、スズキ、マツダ、三菱自動車、富士重工業、ダイハツ工業、それに本田技研工業(ホンダ)の研究開発部門を担う子会社、本田技術研究所の8社と一般財団法人の日本自動車研究所は4月、自動車用内燃機関技術研究組合(通称:AICE) を結成。初代理事長には本田技術研究所の大津啓司常務執行役員が就任した。
2011年3月11日に発生した東日本大震災の直後には、サプライチェーンが寸断され大きな被害を受けた半導体大手、ルネサスエレクトロニクスなどに自動車メーカー各社が技術者を派遣して、オールジャパンで復旧作業を急いだことがあった。だが、こうした非常事態をのぞければ、日頃、新車販売や燃費競争などでしのぎを削るライバルが利害関係を度外視してスクラムを組むことは極めて異例のことである。
5月19日、都内で開かれたAICEの発足式には、本田技術研究所の山本芳春社長のほか、マツダの金井誠太副会長、日産の平井俊弘常務執行役員、トヨタの嵯峨宏英専務役員、自動車技術会の山下光彦会長(日産取締役)ら、各社の技術畑トップ級役員が勢ぞろいした。AICEによると、事業の目的は、内燃機関の排出ガス低減と燃費向上に向けて、後処理技術および燃焼技術の科学的な現象の解明と現象のモデル化の事業領域に関して共同で研究を推進し、その成果を各自動車会社で製品開発に反映して各社の競争力強化を図る、としている。
具体的な研究テーマとしてはエンジンの性能の向上がメイン。2020年までにディーゼルエンジンの二酸化炭素排出量を10年に比べて3割減らす低減技術を開発するほか、ガソリンエンジンの燃焼技術向上のための高度化研究にも取り込む計画だ。
●クリーンディーゼルで先行する欧州勢に対抗
国内では、環境対応のエコカーとしてトヨタが先行するハイブリッドカーの需要が拡大しているが、世界的な自動車市場をみると、今後もガソリンやディーゼルなどの内燃機関だけのパワートレーンが主流を占めることは間違いない。特に、ガソリンよりも廉価の軽油を燃料にするディーゼルは、排気量が同程度のガソリンエンジンより燃費効率に優れており、欧州の自動車メーカーでは早い段階から「クリーンディーゼル」と呼ばれるエコカーの開発に力を入れてきた。現在、欧州では新車台数の5割近くがディーゼル車となっているほどの人気ぶりだ。
一方の国内市場では、かつて石原慎太郎・東京都知事(当時)がディーゼル車から採集した黒煙に含まれる粒子状物質の入ったペットボトルを、会見で振りまわすという大胆なパフォーマンスを展開したことから、負のイメージが定着した。それ以降、ディーゼル車の販売量は激減するとともに、粒子状物質や窒素酸化物などを低減するクリーン化技術への研究開発にも大きく出遅れたという経緯がある。
このため、国内自動車メーカーが内燃機関の環境技術分野の研究で連携して競争力を強化し、遅ればせながらもクリーンディーゼルで先行する欧州勢に対抗するという狙いが背景にある。
●裏の狙いは人材育成
だが、「内燃機関の基礎・応用研究を共同で実施するというのは、あくまでも建前」(自動車メーカー関係者)と冷ややかな意見があることも事実。経済産業省からの補助金を含めて今年度の事業費10億円ではおのずと限界があるほか、次世代カー開発のカギを握る大手の自動車部品メーカーが1社も参加していないなど、腑に落ちないことも多い。
しかも、自動車メーカー各社が、エンジン開発などの分野で若手エンジニアの人材不足が深刻化しているという大きな悩みを抱えており、自動車メーカー8社が団結して研究組合を発足させた本当の理由は、実は「人材の育成」だとみられている。
「若者のクルマ離れ」が叫ばれて久しいが、毎年、就職情報関連の調査機関が実施する就職人気企業ランキングでも、理系男子が選ぶベスト20にかろうじてトヨタが顔のぞかせている以外は人気薄で、自動車メーカーを志望する学生は極端に減少している。
「大学ゼミの後輩たちを誘おうと声をかけても、ソッポを向かれた」(ホンダ幹部)という話は日常茶飯事。「現地現物」を経営方針とする自動車メーカーは、研究開発拠点を海外に置くケースも多くみられるが、「治安の悪化などを恐れて海外赴任が比較的少ない食品会社などを志望する、内向きの学生が増えている」(大学就職課)と指摘する声もあるほどだ。
次世代のエンジン開発などを担うエンジニア不足の深刻化が懸念されている中で、各社間では“金の卵”であるエンジニアの争奪戦も激化している。今後、新たに発足した研究組合が協調と競争のバランスをうまく取りながら、日本の自動車産業のパワーを底上げできるかどうか。内燃機関に限定した分野の共存共栄という発想を受け、「苦し紛れの見切り発進に終わってしまわないか」と危惧する関係者も少なくない。AICEの設立が、日本の自動車産業全体の技術向上に寄与することが期待される。
松原高雄/ジャーナリスト
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