http://www.asyura2.com/14/hasan88/msg/377.html
Tweet |
苦境マック、好調スタバ、何が明暗分けた?復活策を探る 価格を買う顧客を集めた副作用
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140609-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 6月9日(月)3時0分配信
5月9日にスターバックス コーヒー ジャパンの2014年3月期の決算が発表され、昨今のコーヒーブームを受けて増収増益となり、過去最高を記録する好決算となりました。
注目すべきは利益面で“外食産業の巨人”日本マクドナルドホールディングスを抜き去ったことでしょう。最終利益を比較すると、マクドナルドの51億円に対してスターバックスは60億円と、好調のスターバックスが不振に喘ぐマクドナルドを逆転したのです(マクドナルドの決算は13年12月期)。
今期に入ってもなかなか浮上のきっかけをつかめないマクドナルドに対して、スターバックスは好調を維持していますので、今のままではますますその差が開くことも予想されます。「デフレ時代の勝ち組」と称され、外食他社を寄せ付けなかったマクドナルドですが、今やスターバックスをはじめ、コンビニエンスストアなど異業種からの全方位的な攻勢に遭い、青息吐息の状況です。
なぜ、デフレ時代に破竹の勢いで快進撃を続けてきたマクドナルドは、景気が回復してきた今、苦戦しているのか? そして、どうすればかつての輝きを取り戻すことができるのか?
その不振の原因と復活のヒントは、コンビニ各社が最近力を入れている安くておいしい本格コーヒーに負けることなく、快進撃を続けるスターバックスの戦略にありそうです。今回は、マクドナルドとスターバックスのビジネスを比較し、そこで浮き彫りにされた違いから、マクドナルド復活の鍵を探っていくことにしましょう。
●「価格を売る」マクドナルド
マクドナルドのビジネスの一つの特徴として、「週替わりのクーポンを発行して集客を図る」ということが挙げられます。スマートフォン(スマホ)や携帯電話を利用するクーポン会員は13年までに3500万人を超え、実に日本人の4人に1人はマクドナルドのクーポン会員という驚異的な統計もあります。それゆえ、マクドナルドの店頭で顧客の注文を眺めていると、実に多くの顧客がスマホや携帯電話の画面に映し出されたクーポンを提示して購入しているシーンに出くわします。この意味では、マクドナルドのクーポンを活用した集客は成功を収めているともいえるでしょう。
ただ、これは裏を返せば、顧客はクーポンがなければマクドナルドには行かないということの表れでもあります。クーポンには期間限定の割引価格を提供することで来店を促すというメリットもありますが、クーポンによる集客は、頻繁に変わる価格に「割引がなければ来店を控えよう」という気を顧客に起こさせるデメリットもあるのです。つまり、クーポンを頻繁に利用する顧客にとっては、割引価格が定価であり、通常の価格で購入する際には、「通常よりも多く支払わなければいけない」と、ある意味「損をする」気分になるのです。
マクドナルドにとっては、利幅を削ったクーポンを呼び水に、他の利幅の大きな商品を追加で購入してもらい収益を調整する「マージン・ミックス」を実現したいところでしょうが、多くの顧客はクーポンで割引された商品だけを購入したり、追加しても低価格の100円マックだけだったり、おいしいところのみをつまむ「チェリーピッカー」と化しているのです。
このような顧客の特徴は、「価格を買う」ところにあります。購入の判断基準は「価格が安いか?」や「コストパフォーマンスが高いか?」にあるのです。ですから、価格を買う顧客には、価格が重要なのであって、どこの会社が提供する商品かというブランドにはこだわらない傾向が強く表れます。もし、ほかに安いもの、コストパフォーマンスの高いものがあればすぐに目移りして、購入先を躊躇なく変更してしまうのです。
マクドナルドの苦戦の原因は、自ら価格を売り、価格に敏感な顧客を集めてしまったところにあるのではないでしょうか。
それが顕著に表れているのが13年5月の大幅な価格改定です。
マクドナルドは、デフレ時代に価格を武器にして快進撃を続けてきましたが、デフレの終焉が見えてくると、13年5月にはそれまで100円で販売していたハンバーガーを一気に20%も値上げするなど大幅に価格体系を見直します。この主力商品の値上げが原因で、価格だけに魅力を感じていた顧客が一斉に離れていったのです。
これらの顧客の多くは、例えばよりコストパフォーマンスの高いコーヒーを提供するコンビニなどに流れて、その後、マクドナルドは顧客数の大幅な減少に悩まされることになるのです。
●「価値を売る」スターバックス
価格を売るマクドナルドに対して、スターバックスは価値をそのビジネスの中心に据えています。
例えば、スターバックスが4月16日から期間限定で発売したバナナフラペチーノは、生のバナナをまるごと使用した価値ある一品ですが、価格もトールサイズで610円とカフェで販売する商品としては高額の部類に入ります。一見、「そんな高い商品が売れるのか?」と思われがちですが、発売を開始するやいなや話題が沸騰し、予想を上回る売り上げに各店舗で完売が続き、5月11日の販売終了予定日を待たずして早々に販売終了になりました。
スターバックスの場合は、ただ単なるコーヒーの販売をビジネスの主軸にするのではなく、自宅や職場に次ぐ「サードプレイス」というコンセプトを提案し、落ち着いた環境でスペシャリティコーヒーを飲むという「体験価値」を顧客に提供することを標榜しているところに特徴があります。このようなスターバックスの提供する価値に魅了された顧客は、価格に左右されることなく「スターバックス」というブランドを愛し、スターバックスが高い価値を提供し続ける限りは顧客であり続けます。
スターバックスの好業績の背景には、このような価値を重視する顧客がひとり、またひとりと積み重なって顧客基盤が拡大していくという背景があるのです。
●価格から価値への転換を図り、復活を遂げたリンガーハット
このようにビジネスでは価格を売るか、価値を売るかで、集まる顧客の特徴が変わり、事業に大きな影響を与えますが、ビジネスの軸を価格から価値に転換して成功した興味深い事例もあります。
それが、長崎ちゃんぽんのチェーン店を全国で展開するリンガーハットです。
リンガーハットは05年、創業者である米濱和英氏が会長に退いて、後任にマクドナルドで社長を務めた八木康行氏を招聘し、会社の未来を託します。八木氏はマクドナルドで培ったノウハウでリンガーハットを成長軌道に乗せようと数々の改革に取り組みます。
そのうちの一つがクーポンの発行でした。八木氏は、マクドナルドの成功法則をリンガーハットに持ち込み、当時通常価格が450円だった長崎ちゃんぽんを100円引きの350円で食べられるクーポンを発行し、デフレ時代の低価格競争に勝ち抜こうと画策します。
ところが、このクーポンの発行で一時期は客足が伸びたものの、価格だけではすぐに顧客に飽きられて業績は失速。09年2月期には最終赤字が24億円にまで達し、リンガーハットは倒産の危機に直面します。ここでマクドナルド出身の八木氏は引責辞任に追い込まれ、代わって創業者である米濱氏が社長を兼任し、経営の第一線に返り咲くことになります。
米濱氏が業績を立て直すためにまず断行したのが、価格を売るクーポンの廃止でした。クーポンの乱発による「長崎ちゃんぽん=安物」という顧客の間に定着した悪いイメージを払拭し、価値を提供することを決断したのです。
そこで米濱氏は招集した役員会で、ちゃんぽんに使用する野菜をすべて国内産に切り替え、コストが上がった分は価格を引き上げて対応することを居並ぶ役員の前で提案します。当時はデフレ真っただ中であり、値下げする企業はあれど値上げする企業は皆無に等しく、多くの役員は米濱氏の提案に激しく反対しました。
ただ、米濱氏は、リンガーハットを救うためには価格から価値へのドラスティックな転換が必要不可欠だと主張し、自分の信じた路線を強行します。
そうはいっても、本当に価格から価値への転換が成功するかどうかは実際に行ってみなければわかりません。米濱氏は、“新生”長崎ちゃんぽんが販売される当日、店舗を視察し、賑わっている店内や食べ終わって満足そうに出ていく顧客を見てようやく成功を確信したそうです。そして、この価格から価値への転換が功を奏し、リンガーハットはV字回復を成し遂げ、今でも成長が続いているのです。
●マクドナルド、不振脱出の鍵
価格で勝負しても、もちろん成功を収めることは可能です。それはハンバーガー業界でいえばマクドナルド、牛丼業界でいえば吉野家やすき家が、驚くべき低価格戦略でデフレ時代に快進撃を続けたことでも証明されています。
ただ、ビジネスの歴史を振り返ると、その成功は永遠に続くものではなく、成功が大きければ大きいほど、後にその副作用に悩まされるケースがほとんどです。価格で集めた顧客は、飽きやすく、躊躇なくブランドスイッチするなど、安定的な顧客基盤とすることが難しいからです。
一方で価値に納得して購入した顧客は、価格などでは浮気をしないロイヤルカスタマーとなる可能性も高くなります。大幅な顧客流出で業績がなかなか上向かないマクドナルドは、これまで価格を買う顧客を集めてきた副作用に悩まされていると診断できます。
この不振から抜け出し、かつての輝きを取り戻すためには、価格から価値を重視するビジネスに転換を図ることが、一つの有効な処方箋となるのではないでしょうか。
安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。