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変化は速い、流れが読めない会社は死ぬ PART1 この経営者には気を付けたほうがいい
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39405
2014年06月02日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
日本の有名企業これから大きく伸びる会社消えるかもしれない会社
秋野充成(いちよしアセットマネジメント執行役員)×中野晴啓(セゾン投信社長)×週刊現代編集部経済担当
1位のソフトバンク、2位に転落したドコモ。再逆転はあるか/苦境の任天堂、「スマホ用ゲームは作らない」という英断/ソニーはこのまま消えるのか/東芝・西田会長の功罪/ユニクロ「脱デフレ」戦略の成否は/過去最高2兆3000億円を稼いだトヨタは、どこへ行く/実はやばい、3大メガバンク/ボロ儲け商社、本当の勝ち組は?ほか
日本企業は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれた時代の輝きを失ったのか。答えは、否。経済・企業に精通するプロと本誌経済担当が本音で語り合ったダブル鼎談で、未来の日本経済を牽引する「最強企業」がわかった。
■闘いのルールが変わった
本誌 決算ラッシュのシーズンですが、自動車業界が絶好調です。
秋野 そうですね。ただトヨタの過去最高益更新ばかりが注目されている中で、私は富士重工業とマツダに着目しています。この2社は身の丈は小さいですが、思い切った経営戦略に舵を切ってきた勇気のある会社です。ともに中国より北米を重視する道を選んできた。経営トップのその英断が今決算に表れて、ともに過去最高益を更新したという点が興味深い。
中野 同感です。自動車各社の決算の特徴は、リーマン・ショック後に将来を見据えた決断ができた経営者がいる会社とそうでない会社で明確に業績に差が出てきたということでしょうね。
本誌 というと?
中野 リーマン・ショック後、北米の自動車市場は販売台数が3割超も落ち込みました。その急落ぶりに怯えて、成長著しい中国をはじめとする新興国に経営資源をシフトする会社が多かった。でも、一部の先見性のある経営者は急落した需要はいつか必ず回復するはずだと見越して、あえて北米に出て行った。その結果が数字に顕著に出たのが富士重工業とマツダなんです。
秋野 新興国シフトした日産の決算は他社にくらべて見劣りしています。ただ、もう少し長い目で見ると業界の風景がさらに変わる可能性はありますよ。
中野 世界に目を向ければ独のフォルクスワーゲン(VW)、米国のゼネラルモーターズ、韓国の現代自動車など強豪揃いですからね。私も秋野さんと同じように見ていて、将来的には3つの巨大グループに各社が集約されていくと思っています。しかも、そうした合従連衡は向こう数年で顕著に進むでしょう。
秋野 ポイントは次世代車競争にどこが勝つか、です。しかし電気自動車、燃料電池車などどれが次世代のメインになるかわからないので、すでに年間1兆円も設備投資し続けているトヨタが一歩抜きん出ているとは思います。VWでも年間8000億円規模ですから。
本誌 日産やホンダはどうですか。今決算で最高益を達成できなかったのは大手の中でこの2社だけです。
中野 日産はパートナーのルノーも苦境なので、体力的にも厳しい。ホンダは単独で生き残れるかどうかギリギリのところですが、「脱クルマ」戦略に走ったほうがおもしろい。思い切って資金を『ASIMO』に代表されるロボット事業につぎ込んで、自動車メーカーから脱皮するとか。21世紀に成功する会社というのは、これまで蓄積してきた技術の引き出しをうまく使って、いかに新しいものを生み出すかにかかっていますから。
秋野 おっしゃる通りですが、日本の経営者はそれが一番下手なんです(笑)。
中野 そうなんです。代表的なのが家電業界。たとえば英国ダイソンの羽根なし扇風機とか、米iRobotのロボット掃除機『ルンバ』などは日本の技術力で簡単に作れるのに、日本企業は集団意思決定体制になっているから飛びぬけたアイデアが商品化されずに社内で腐って終わってしまう。ダイソンは社長が直接現場に入って、「これ、やろう」と即断即決しています。
秋野 とにかくいまは変化がかつてないほどに速く、経営者がひとつ決断を間違えればあっという間に会社が死んでしまう時代です。日本経済に関して言うと、デフレ経済からインフレ経済への本格的なシフトが始まりかけている。
中野 その大きな転換に乗り遅れているのが日本マクドナルドでしょう。原田泳幸前社長がデフレ型経営でヒットを飛ばしたものの、最近はその成功体験から脱しきれずに次の一手が見えない。
■合併はしたものの
本誌 原田氏からサラ・カサノバ氏に社長交代して事態の打開を図ろうとしましたが、これもうまくいっていないですよね。
秋野 コンビニに行けば安くておいしい商品がわんさかあるから、マックに行く必要がなくなったんです。もはや価格を上げても下げてもどうしようもない。
本誌 牛丼業界がまさにそれですね。消費増税後に『すき家』のゼンショーHDが牛丼を値下げして、吉野家は逆に値上げしたけど、ともに4月の既存店売上高が前年を下回っていた。
中野 秋野さん、ここはひとつ提案ですが、マックもゼンショーも吉野家も松屋フーズもみんなで一つの会社になるというのはどうですか。牛丼とハンバーガーが両方食べられる店なら客が来るかもしれない。
秋野 ありですよね。あるいはマックや吉野家がコンビニの中に入ってしまうというのもいいかも。
中野 そんな奇策でも打たなければ、マックの「日本撤退」というのも絵空事ではなくなってきそうです。
秋野 もうひとつ大事な話をすると、いま賃金上昇という大転換も起ころうとしています。メディアが懐疑的な報道をしていますが、実態としては製造業の残業時間が増えているし、パートタイムの有効求人倍率は1・28倍ですよ。
中野 これは大好景気時の「売り手市場」の数値。賃金が上がるのは決定的なんです。デフレ経済下で日本企業の経営者は、採用はコストアップにつながる悪として行動してきましたが、今後は人の取り合いになる。まさに大転換です。
本誌 すでに居酒屋のワタミなどが人を採れずに店舗閉鎖に追い込まれています。経営判断の遅れで実害が出てきている形ですね。
中野 経営者が人を減らすばかりで社員教育を怠ってきたツケが出ているとも言えます。その点、パート労働者の正社員化を打ち出したユニクロ(ファーストリテイリング)は対応が一番早かった。そもそもユニクロの柳井正社長は以前から社会構造の変換に気付いて「脱デフレ経営」に舵を切っていましたから。
秋野 安さを売りにする『GU』ブランドを作って、ユニクロは中価格路線として棲み分けをしたりとか。ただ「脱デフレ経営」がうまくいくかどうかはまだわかりません。柳井社長はおそらく海外企業の買収を多くしかけてくるでしょうが、実はこれまで多ブランド戦略で成功した日本企業はほとんどないんです。リスクを取れる稀有な経営者の一人ですから、うまくいって欲しいですが。
中野 デフレ時代はじっと動かないでキャッシュを貯めこんでいる経営でもよかったけれど、今後は貯めたカネを未来の成長のためにどう投じるか、どれだけリスクを取れるかで勝敗が決まる。柳井社長にはその成功者になって欲しいですね。
本誌 経営判断という観点でいくと、新日鉄住金はどうですか。大幅赤字から一転して、今決算は2400億円以上の最終黒字に転換しました。'12年10月に決断した統合効果がやっと出てきたという声があります。
中野 経営陣が統合効果を真剣に取りに行っている感じはしないですね。相変わらずたすき掛けのバランス人事みたいなこともやっているし、合理化も不十分。
秋野 業績が良かったのは復興需要があって、アベノミクスもあって、たまたま追い風が吹いたから。逆にいえば合理化をしなくても業績が出てしまったので、真剣に統合のメリットを引き出そうとする努力を怠っているように映ります。
本誌 巨大合併って、日本ではほんとうに成功事例が少ないですよね。三越伊勢丹HDの社員に聞いても、旧伊勢丹と旧三越の間でいまだに対立がある。
ちょっと明るい話題をうかがいたいので(笑)、ここからはお二人が注目されている期待の業界や会社に話題を移しましょう。
中野 私はプラントメーカーが大きく花開くと思います。米国でシェールガス革命がいよいよ始まるという段階に入っていて、シェールガス発電用のプラントが製造ラッシュを迎えるので大チャンスなんです。
秋野 そうですね。ライバルの韓国企業は安く受注するものの、納期遅れでプラントを作るのに5年、10年とかかるから評判が悪い。それを日本の日揮、千代田化工建設、IHIなどは3年ほどで高品質のものを納入するから圧倒的に強い。米国のシェールガスプラントの半分くらいは日本勢が受注すると思います。
中野 シェールガス関連で言うと、海運業界にも成長の芽が出てきます。もう終わったという印象の業界ですが息を吹き返すでしょう。
秋野 ガスを運ぶためにはLNG(液化天然ガス)に圧縮する必要があるのですが、このLNGを運ぶ船の運航は日本の海運3社が高いシェアを占めています。
中野 日本郵船、商船三井、川崎汽船などはいま中国経済の低迷の影響を受けていますが、長い目で見ると楽しみな会社ですよ。
本誌 秋野さんは注目している業界はありますか。
秋野 意外に思われるかもしれませんが、私は飲料業界ですね。飲料は国内だけを見ていると飽和状態の成熟産業ですが、世界的には爆発的な人口増加で中間層が増えてくるので実はすごい成長産業なんです。現在の世界的なスマホブームのように、猛烈なスピードで市場が拡大していきますよ。
■航空業界は全部厳しい
中野 日本でもコーラを飲むのが憧れだった時代がありました。それと同じことが世界中の新興国で起こるわけですよね。日本勢の中ではやはりサントリーHDが抜きん出ていますか。
秋野 そうですね。スイスのネスレ、フランスのダノンなどライバルは強力ですが、日本メーカーは安全・安心というブランド力が強いから競争力がある。それにサントリーは米大手のビームを約1兆6000億円で買収するなど経営陣が大胆なのもいい。一方でアサヒGHD、キリンHDは小粒な買収ばかりで経営陣の戦略に凄味が欠けるのが少し気になります。
中野 確かに。キリンはサントリーとの統合話も最終的に嫌がったでしょう。「自分たちだけでも生きていける」という自負があったのでしょうけれど、こうした気質が今後のグローバル競争で足を引っ張らないか心配ですね。
本誌 世界で闘えるかどうかが企業の生死を分けるとも言えますね。やはりこれからはアジアで勝者になれるかどうかがポイントだと思うのですが。
中野 アジアですでにブランドを確立している花王はまだまだいけるでしょう。逆にアジアの空を格安航空のLCCが席巻し始めた中で、JAL、ANAの未来は「視界不良」です。
秋野 アジアの空は海外のLCCに取られてしまうし、さらに中国の春秋航空が日本の国内線に参入してくるので、国内でもJAL、ANAが負ける恐れが出てきました。JAL、ANAを使うのは出張サラリーマンだけになるでしょう。
本誌 そんな状況なのに、JALとANAは互いが互いの悪口を振りまくような旧態依然とした口撃合戦もしていますよね。その間隙をついて、日本のスカイマーク、ピーチ、ジェットスターなどのLCCがJAL、ANAに代わって「勝ち組」になるチャンスもあるということですか。
秋野 それが悲しいことに、日本のLCCは全然競争力がないんです。
中野 日本人のおもてなし精神の悪いところが出ていて、安さに徹しきれずに、サービスもよくしようとするからですよ。価格もサービスも中途半端なものになっていることに経営者は早く気付くべきなんですが。
秋野 このままいけば日本のLCCは、日本国内の一部の人だけが使う「ガラケー」のような存在になるでしょう。富士通とかNECの携帯電話みたいに。
中野 結果、日本国内も海外のLCCが席巻して、それがさらにJRの新幹線もやっつけるのではないかと思っています。2020年にかけて羽田空港の滑走路が新規にできれば、LCCの国内線がいま以上に飛ぶようになるので、本数が少ないというLCCの弱みが解消される。そのうえ、新幹線だと東京―大阪間で1万円以上するのが、LCCだと3000円台なので一気にお客が流れてしまう。LCC時代というのは、鉄道時代からの抜本的な転換の始まりでもあるんです。
本誌 あと、グローバル競争で勝てないという意味では、航空業界より致命的なのが医薬品業界ですね。創薬には莫大な開発費用がかかるため全世界的に再編が進んで巨大企業が生まれているのに、日本は遅れに遅れている。日本最大の武田薬品工業だって世界では10番手以下です。
秋野 本来であれば、武田とアステラス製薬、第一三共、大塚HDなどのトップが一堂に会して、「みんなで一緒になろう」と英断を下さなきゃいけない。それでも世界では5番手に食い込めるかどうかですが、それほどのことをしないとどこも生き残れないんじゃないですか。
中野 いま製薬業界と大学とのズブズブの関係が問題視されていますよね。日本の会社がみな一緒になれば国内競争がなくなってこうした悪習も解消されるので一石二鳥です。
■証券、生損保、不動産の未来
本誌 再編という意味では、お二人がいらっしゃる金融業界はバブル崩壊を経て再編が最も進んだ業界ですよね。アベノミクスの追い風も受けて絶好調ですが、今後も期待できますか。
中野・秋野 (苦笑)
秋野 えっと、まず銀行の話をすると、確かにおカネはふんだんに持っているけれど、それを使ってどう儲けたらいいかという術を完全に見失っています。
中野 その代表格が三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行のメガ3行。規制産業としてヌクヌクとやってきたので、グローバルには独自の強みもノウハウも乏しい。みなさんメガバンクを過大評価しすぎなんです。
秋野 バブル期は不動産担保、崩壊後は貸し剥がし、最近は国債運用ばかりをやってきて、高い金利を稼げる「本業」の貸し出しをできる人材がいないのが最大の問題です。消えることはないですが成長できたとしても日本経済連動。それ以上ではないから、いずれにしても低成長でしょう。
中野 証券業界はもっと厳しい。私は数年以内に驚くようなことが起きるのではと思っています。大手証券が、かつての山一證券のようになくなってしまうかもしれないという。
秋野 野村證券、大和証券グループ本社に代表される対面型の証券営業をする会社は、顧客の中心が70代なんです。しかも若者はすでにネット証券と取り引きしているし、今後はマーケットが24時間化するのでさらに客はネット証券に流れる。となれば、野村、大和の10年後、20年後の姿は見えてきますよね。
中野 しかも金融庁が規制を強化して、極端に言えば75歳以上の高齢者はお客にしてはいけないという方向に舵を切りました。高齢者が長生きするからまだ商売できると思っていた証券トップたちにとっては大きな誤算でしょうが、将来なにで儲けるか考えることをサボってきたのが悪い。
本誌 SMBC日興証券は銀行傘下です。みずほ銀行とみずほ証券も同様に「銀証連携」政策で顧客獲得しようとやっていますが。
秋野 もっとダメですよ。証券と銀行は水と油。
中野 しかも証券の要職は銀行から来た人が押さえていく。リスクを取らない銀行マンが証券会社の経営をできるわけがない。
本誌 生損保はどうですか。
秋野 日本人はとにかく生命保険好きで、一人で日本生命、第一生命、明治安田生命の保険すべてに入っているという人も多い。ただ最近になって生保のコストがすごく割高だと気づき始めたため、「入り過ぎ」を解消する人が増えてきた。それに生保のセールスレディーが高齢化していて、若い人の成り手もいないから、営業手法が手詰まりになる可能性もある。
中野 ライフネット生命などのネット生保が格安商品を出してきて、これまで巨大生保がいかに「ぼったくり」をしてきたかバレてきた。今後は不動産屋に業態転換するとか、東南アジアに活路を見出す方向に行かざるを得ないでしょう。
秋野 一方で損保はすでに東京海上HD、三井住友海上などを抱えるMS&AD、損保ジャパンなどのNKSJの3強に集約されていますが、一番の問題は地震です。首都直下型地震があるといわれる中で商売としてリスクが高すぎる。
中野 首都直下型地震が来れば不動産業界も厳しいですが、地震がない前提で考えれば2020年に向けて東京一極集中が進むので、デベロッパーには好機です。ただ大きな果実を取れるのは、それぞれ丸の内、日本橋に巨大権益を持っていて、大規模開発を行える三菱地所と三井不動産くらい。両社がここ数年でどんな驚くような開発を行ってくるかに注目したい。
本誌 経営トップの判断が大きく会社の寿命を左右するのですね。2020年までどれだけの企業が生き残っているのか見物です。
「週刊現代」2014年5月31日号より
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