http://www.asyura2.com/14/hasan88/msg/180.html
Tweet |
「ユーロ安けん制」の黒田総裁発言、ECB緩和に備え?[日経新聞]
編集委員 清水功哉
2014/5/29 7:00
「特定の通貨に関する質問に、ずいぶん踏み込んだ答え方をしたな」。そんな思いを抱いた為替市場関係者は多く、話題を呼んだ。黒田東彦日銀総裁の先週末の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューである。
「欧州中央銀行(ECB)がユーロ安を促す口先介入を試みていること」について聞かれ、こう答えたのだ。「対円相場に関する限り、ユーロは依然として弱い」「(2008年9月の)リーマン危機前に普通だったレベルと比べると、円はユーロに対してはなおもかなり強い」。
■対円でユーロ高修正をする必要はあるのか
確かに、ユーロの対円相場(足元で1ユーロ=139円程度)はリーマン・ショック前の150円台前半より低い。ECBは、他の通貨に対してはともかく対円ではユーロ高修正をする必要はないのではないか――。黒田氏はそう言いたかったのだろう。事実上のユーロ安・円高けん制だ。ECBは6月5日の理事会でユーロ高の防止・修正を狙った追加緩和を決める見通しになっている。同氏はその機先を制したともいえそうだ。
かつて財務官として通貨外交の最前線に立った黒田氏。その為替相場観は経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を重視したオーソドックスなものであり、対ドルの円高リスクは大きくないと見ている。5月21日の記者会見で明言した通り、「米国を中心に順調な経済回復がみられるところでは金融政策も緩和の程度をだんだん縮めていっており、為替が円高になっていかなければならないという理由はあまりない」のだ。裏返して言えば、注意すべきは「緩和の程度」が強まりそうなユーロに対する円買い圧力になる。とすれば「ユーロ安けん制」には意味がある。
日本経済にとって、ユーロ安・円高の影響はドル安・円高のそれと比べれば小さいだろう。とはいえ、ユーロは基軸通貨ではないので、ユーロ安の輸出への悪影響をユーロ建て部品輸入拡大などで和らげるといった対応がとりにくい。ドル安よりやっかいな面を持つのだ。ちなみに輸出企業の代表格、トヨタ自動車の15年3月期の想定ユーロ相場は140円。「のりしろ」は既になくなっている。
ではECBの政策はどんな方向に向かうのか。経済の状況別に緩和の選択肢を整理した4月24日のドラギ総裁講演が参考になる。講演内容をもとに作ったのが表だ。6月5日の理事会ではまずレベル1の「より伝統的な手法」が議論の中心になるだろう。例えば利下げである。しかし、この程度では市場がかなり織り込んでしまっていて、ユーロ高防止・修正効果の持続性は限られそうだ。
従って、焦点になるのはその後の展開だ。中長期的な方向性がレベル2にとどまるのか、レベル3まで踏み込むかである。レベル2は、信用創造機能の毀損を当局が「修理」する方策。バーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長の言葉を借りれば信用緩和である。中小企業向け融資債権を裏付けにした資産担保証券(ABS)を買い入れて、銀行が貸し出しを増やしやすくする対策などが候補になる。一方、レベル3は国債など幅広い資産を大量に購入し、長期金利低下やインフレ期待強化を狙う政策。FRB流に言うと大規模資産購入策(LSAP)である。いわゆる量的緩和だ。
■「量的緩和」ならユーロ安誘導効果も大きくなる可能性
レベル2もECBのバランスシート拡大を伴うから広い意味で量的緩和だと見なす市場参加者もいる。ドラギ氏もそう表現するかもしれないが、厳密にはレベル3とは似て非なるもの。そして、ユーロ安誘導効果が比較的大きくなりそうで注意が必要なのは、大規模な資産買い入れとなるレベル3に向かうケースだ。
ECBがすぐに大がかりな国債購入に踏み込むのは難しいとの見方が多い。財政ファイナンス(財政赤字の穴埋め)になるという批判がドイツでは根強いし、ユーロ圏のどの国の債券をどの程度買うかの決定も簡単ではなさそうだからだ。とはいえ予断は許さない。
白川方明前総裁時代に、米国の量的緩和が生んだドル安・円高圧力にさんざん苦しめられた日銀。今度は欧州発の円高リスクに留意せざるを得ない。昨年11月のECBのサプライズ緩和を内輪の席で「予告」した実績を持つとされる黒田氏は、今後の対応についてシナリオを練っていることだろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2800C_Y4A520C1000000/?n_cid=DSTPCS001
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。