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米国債の利回り低下は“リーマン・ショック再来”の足音か 「シェール・バブル」もはじける(日刊ゲンダイ)
http://www.asyura2.com/14/hasan88/msg/129.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 5 月 27 日 07:18:45: igsppGRN/E9PQ
 

米国債の利回り低下は“リーマン・ショック再来”の足音か
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150493
2014年5月27日 日刊ゲンダイ



金融危機の悪夢がよぎる(ニューヨーク証券取引所)/(C)AP


 「シェール・バブル」もはじける


 株価暴落のサインなのか――。市場関係者は神経をとがらせている。


 NYダウが連日のように史上最高値を更新するなど、このところ絶好調の米株式。だが、その裏では米国債が不気味な動きをしているのだ。10年国債利回り(長期金利)が低下を続け、ついに先週は2.5%を下回った。


「NY株の高騰は“米国経済の回復が堅調”で、“景気の先行きが明るい”からだと説明されていますが、景気回復が本物なら、長期金利も上がるはずです。株が上がれば、債券が売られ、長期金利が上がるというセオリーがある。ところが、現状は株高と長期金利の低下が同時進行しています。要するに、この株高は実体を伴っていないということです」(RFSマネジメント・チーフエコノミストの田代秀敏氏)


 米国の株高はバブルに過ぎない。いずれ冷え込む局面を迎えそうだが、気になるのは、米長期金利が日本経済の「先行指標」とされていることだ。


「それまで5%を超えていた米国債の利回りが、08年のリーマン・ショックで約2%まで低下しました。その後の金融緩和(QE1)で長期金利が約4%まで上昇すると、日経平均も回復して1万円の大台を突破した。ところが、10年9月にQE1が終了した途端、長期金利は2.5%を下回り、日経平均も8000円台に下がってしまった。このように米国の長期金利と日本株が連動しているため、先行指標とされているのです」(大手銀ストラテジスト)


 そもそも2%そこそこの利率はリーマン・ショックと同水準なのだから危険信号。日本株にとっては不安材料である。


「もうひとつ、米経済は深刻な問題を抱えていて、これが日本にも波及しそうです。米国では最近、シェール・バブルがはじけたという見方が広がっている。最大規模の埋蔵量が見込まれていたカリフォルニア・モンタレーのシェール油田も、当初の見込み量から96%も削減された。シェール革命で製造業が復活し、米経済がV字回復するというシナリオは崩れてしまったのです。そうなると、実体経済は持ち直す材料がない。外資系金融機関のリポートによれば、縮小しているQE3が完全に終了すれば、米国株は3割下がるという。当然、日本株も暴落です」(田代秀敏氏=前出)


 リーマン・ショックの再来もある。


 

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コメント
 
01. 2014年5月27日 08:53:59 : nJF6kGWndY

>カリフォルニア・モンタレーのシェール油田も、当初の見込み量から96%も削減

そういうことは珍しくはないが

元々デカップルしていて、あまり影響がない上に、金融的な影響は、もっと小さい


残念ながらwリーマン・ショック再来にはならず

日本にとって少しダメージになる程度だな

http://www.nasdaq.com/markets/natural-gas.aspx?timeframe=1y

http://www.imf.org/external/np/res/commod/pdf/monthly/050114.pdf
http://fx.minkabu.jp/hikaku/fxbeginner/cher-crude-oil/
一夜にして全米の原油確認埋蔵量が約240億バレルから、約110億バレルに減少
【著者】矢口 新 2014年5月23日

FXコラム|2014/05/23

全米最大、米国で現在の技術で採掘可能なシェール原油のほぼ3分の2を占め、137億バレルに達するとなされたカリフォルニア州モンタレー地層の確認埋蔵量が、今週、96%大幅に下方修正され、6億バレルとされた。全米の原油総需要の33日分に相当する。元の試算は採掘業者の資料を鵜呑みにしたためだとされる。

oil

これまでの試算では、カリフォルニア州に280万人の雇用と、246億ドルの税収をもたらすとされたが、11万2000人の雇用と、9億8400万ドルの税収に留まる見通しとなった。

また、一夜にして全米の原油確認埋蔵量が約240億バレルから、約110億バレルに減少することとなった。

参照:U.S. officials cut estimate of recoverable Monterey Shale oil by 96%
http://www.latimes.com/business/la-fi-oil-20140521-story.html

参照:Dream of U.S. energy independence was just revised away
http://www.marketwatch.com/story/dream-of-us-energy-independence-was-just-revised-away-2014-05-22?dist=tbeforebell

今週、ロシアは中国と4000億ドルを超える天然ガス供給の大型契約を結んだ。10年間交渉が続けられていたが、米欧のロシア経済制裁により資金を求めるロシアと、東南アジア各国、日本と対立を深め、背後の安全とエネルギー供給を求める中国との利害が一致した形となった。

ガスプロムと中国国営石油公社は、中国への天然ガス供給に合意、契約に調印した。ロシアは2018年から30年間にわたり毎年380億立方メートルの天然ガスを供給する。総契約額は4000億ドルを下らないとみられる。業界筋によると、ロシアは中国に対し1000立方メートル当たり約350ドルで天然ガスを供給することで合意したもよう。西欧諸国への供給価格は長期契約の下で350─380ドルとなっている。ガスはシベリアのガス田から中国の沿岸部近辺に続く新規パイプラインを通じて供給される。

これで見ると、米国の外交は迷走しているようだ。中ロの結びつきが、米国とその同盟国にプラスになることは少ないかと思う。また、エネルギー価格上昇の要因ともなった。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kosugetsutomu/20130423-00024535/


02. 2014年5月27日 10:25:06 : atxeyfN6Rs
>01
鐘や太鼓で踊らされて早々と投資をした会社はどうなるのでしょう。

03. 2014年5月27日 13:15:36 : 1cAXsPe4Rg
ウクライナ情勢の変化に伴って、予想外のファクターとして中露の石油天然ガス取引がドルをつかない形で成立してしまった。 ペトロ・ダラーが崩れ、ブラジルなどもおる取引から離れつつある。 QE3の縮小が行われていると言うが、ベルギー中央銀行のアメリカ国債残高の急上昇が、一体何を意味しているのか考えて見るべきだろう。 ウクライナでは内戦状態に近くなっているにもかかわらず、NATO・アメリカ軍は出動できない。 東アジアで中国の膨張政策が激しくなっているが、アメリカ海軍は南シナ海に姿を見せていない。 シェール・ガスなど、始めから解っていたことで、今更驚く話ではない。 要するにアメリカの世界覇権が終焉を迎えていると言う事になる。 使い道のないドルはアメリカに還流してNY株式相場が上がっているが、これも何時まで続くものかどうか。 ただ一つアメリカにとってはグッド・ニュース(そういってよいかどうかは別にして)としてなら、中国の軍事的部長政策に対抗するための兵器購入が出てくる可能性はある。 ベトナム・ヒリピン・インドネシア・マレーシア・インドなど、中国の冒頭政策に居意を感じている国々が軍備増強に走る可能性はあるかも知れない。

04. 2014年5月28日 13:51:47 : 5y33NEKSuQ
言われるままにアメリカ国債を律儀に買い占めてる島国があるそうです。

05. 2014年5月28日 16:21:01 : jjze0egjKs
 国債暴落に人生を賭けている投資家もたくさんいるそうですね。過去日本国債の暴落に掛けては敗れ去ったファンドのみなさん。来年は日米同時緩和終了でいよいよ一攫千金の大チャンス到来 ですか・・・

 まあ普通に考えて上がり続ける株式市場は無いワケだし、米国のようなインチキドル紙幣乱発で生きながらえるってのも、いかにも危ういワケで。
 ベルギー中銀にインチキ借金証書の米国債をシコタマ買わせて、こっそりFRBが買い取ってる って噂だし。

 最も楽観的な見通しとして今年いっぱい世界経済が持ちこたえても、やっぱり来年はいよいよ 金融大津波第二波発生 じゃないのかな?

 日本は日本で、増税、配偶者優遇終了、年金支給年齢引き上げ、医療負担増、介護負担増・・ と、この不景気の最中 国民を痛め付け、毟り取ることしか考えていない。国家が助けてくれないのなら、もう自分の身は自分で守るしかないいんでしょうね。

@今年Goldが下がるって言われているから、4000円/gになったら現物金を買う

A株式市場の暴落をじっと息をひそめて待ち、崩れ始めたら空売りする

B水、食料品を備蓄する(賞味期限は最低でも3年のモノ)

 いずれも2015年明けでいいんじゃないかな。 ていうかこんくらいしか個人の防衛術って思い浮かばんなぁ〜。


06. 2014年5月28日 17:09:28 : e9xeV93vFQ

コラム:量的緩和、最後で最大のリスクは中銀の巨額損失=竹中正治氏 2014年 05月 28日 15:54 JST http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0E804Q20140528?sp=true 

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為替フォーラム
アングル:日銀総裁が物価と金融安定の両立強調、シグナルの可能性も
焦点:欧州議会で反EU派躍進、統合強化進まず経済政策は拡張方向か
アングル:ウクライナ新大統領、笑顔の裏に「鋼の意志」
アングル:日銀副総裁が物価上振れ時の緩和縮小に言及
竹中正治 龍谷大学経済学部教授

[東京 28日] - 4月30日に発表された米国の今年第1四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は、記録的な大雪の影響があったとは言え前期比年率でわずか0.1%にとどまった。ところが、その後2日に発表された4月の雇用統計は非農業部門就業者数が前月比28.8万人増、失業率は6.3%に下がり、予想を上回る結果となった。

果たして米国景気は上向いているのか、それとも一部で言われるように「低成長の罠」にはまる方向にあるのか。

<米経済は「減速成長・低失業率」局面へ>

結論から言うと、今後の米国経済は趨(すう)勢的な「減速成長・低失業率」の局面に移行するだろう。これは矛盾ではないし、悲観的になることでもない。その結果、段階的に縮小されている現行の量的金融緩和第三弾(QE3)は、現在見込まれている通り今年10月前後には終了し、来年の中頃にはゼロ金利解除、つまり最初の利上げが実施される可能性が高い。ただし、その局面で米連邦準備理事会(FRB)はQEの最後で最大のリスクに直面することになる。以下、順を追って説明しよう。

まず、今後の実質GDP成長率は第2から第4四半期まで3%台(前期比年率)に成長率が高まることが予想される。しかし、第1四半期の0.1%の実績を前提にする限り(今後改訂される可能性はあるが)、通年では2%台の成長率にとどまる。米国の趨勢的な成長率は1970年代から2000年代前半まで平均で3%強だったので、それに比べるとこれは減速成長だと言える。

にもかかわらず低失業率に向かうというのは、米国のベビーブーマー世代の現役引退が進み、労働人口が緩やかに逓減する局面に入っているからだ。

米連邦議会予算局(CBO)のレポート(The Budget and Economic Outlook:2014‐2024)は、2014―17年の潜在的な労働力伸び率(年率)を0.6%と見込んでいる。これは1950―2013年の同平均1.5%、あるいは1991―2001年の1.3%に比べて、0.7―0.9%低い。

したがって、2000年代前半までの趨勢的な成長率3%強から労働力伸び率の低下分を差し引けば、今後の趨勢的な実質GDP成長率が2%台となるのは人口動態の変化から見て自然なことに過ぎない。FRBメンバーの予想も今年から来年は3.0%前後の成長を見込んでいるが、それ以降の予想の平均値は2%台だ。

この減速はいわゆる「ニューノーマル論」として語られる「金融危機の長期後遺症」などとは全く関係のない「はるか以前から人口動態的に見込まれていたこと」に過ぎない。金融危機の後遺症について言えば、米国では家計も金融機関も、金融危機による資産価格の急落が引き起こしたバランスシート調整はとっくに終了している。

また、失業率の低下について、近年の労働参加率の低下が示すように就業を諦めた人々が増えた結果であり、実際は見かけほど良くはないとの指摘がある。この点は部分的に真実である。

前掲のCBOレポートは労働参加率が2007年第4四半期の66.0%から13年第4四半期に62.9%まで約3ポイント低下した要因の内訳を以下のように分析している。

ベビーブーマー世代引退など人口動態要因による分が1.5ポイント、労働市場の環境が厳しくて就業活動を諦める要因が1.0ポイント、労働市場の環境が厳しくて早期引退をする要因が0.5ポイントである。

<減速成長でも失業率は低下へ>

では、2%台の実質GDP成長率で失業率は低下・改善を続けるのか。この種の様々な予想についてFRBは「大規模一般均衡推計モデル(large‐scale estimated general equilibrium model)」を開発、使用して、精緻かつ包括的な推計をしている。

ただし、2007―08年への危機の深刻化と大不況についてFRBに先見的な予想ができたとは言い難い。これが経済という複雑系の面白いところだ。そこで筆者はもっとざっくりとした見方をしてみよう。

図は縦軸に実質GDP成長率(前年同期比)、横軸に失業率の変化(前年同期比差分)とし、1950年以降の各四半期の分布を示したものだ。失業率とGDP成長率の変化の間には「オークンの経験則(成長率形式)」と呼ばれる以下の式で示される傾向があることが知られている。

実質GDPの変化=K‐C×失業率の変化

この式は実質GDPが増加する時には失業率は低下し、逆ならば逆となる関係を示している。定数「‐C」はGDPの変化と失業率の変化の負の相関関係を示す相関係数である。定数項「K」は失業率の変化ゼロの場合の成長率であり、すなわち長期的に持続可能な成長率(潜在成長率)だ。図では横軸の失業率の変化がゼロである時のGDP成長率の水準、つまり近似線の縦軸との交点(Y切片)の値がKである。

時代を追って見ると、分布の近似線の傾きが次第に下がってきていること、近似線のY切片が示唆する潜在成長率も下がっていることがわかる(図の脚注に示した「決定係数」は0から1までの値をとり、1に近いほど近似線の説明度が高いことを意味する)。

これはひとことで言えば、より低い成長率の上昇で失業率が低下することを意味している。冒頭で今後の米国では減速成長と失業率の低下・改善が併存すると言ったのは、こうした変化を前提にしているわけだ。

「それはわかったが、潜在成長率の低下傾向はやはり悲観材料ではないのか。2005―14年の近似線の方程式はK=1.765で、潜在成長率が2%を割れ込んでいることを示唆しているではないか」と思う読者もいるだろう。この点については、図からは趨勢的な変化の方向性だけをくみ取り、短期・中期のデータであまり杓子定規にオークンの経験則を当てはめて考えない方が良いと申し上げておこう。

前掲のCBOレポートでは、2014―24年の米国の潜在成長率の要因内訳を、1)労働投入量要因0.4%、2)設備投資要因0.9%、3)全要素生産性要因1.2%と想定し、合計で潜在成長率を2.5%と推計している。これは1950年から2013年までの同潜在成長率3.5%に比べると減速である。しかし、2008年前後を境に人口動態要因が経済成長の押し上げ要因だった「人口ボーナス」から成長抑制要因になる「人口オーナス」に転換した米国経済としては、自然な成長率だ。

こうした趨勢的な変化を前提に考えると、今年通年の米国の実質GDP成長率が2%台でも失業率は来年にかけて6.0%を割れ込み、5%台に低下するだろう。これは今年の2月時点で公表されているFRBメンバーの失業率改善予想の平均よりやや速い改善だ。

ちなみに、バーナンキFRB議長の時にQE3を継続するめどとされた失業率6.5%は1980年以降の失業率のちょうど平均値である。したがって、6%を割れて5%台に低下すれば、明確な低失業率局面への移行と言える。

インフレ率の見込みはどうか。2005―14年のデータに基づいて、FRBが重視している物価指標である個人消費支出(PCE)価格指数(前年同期比、除く食品とエネルギー)と失業率の相関関係(いわゆるフィリップス・カーブ)を見ると強い負の相関が確認できる(相関係数は−0.79、決定係数は0.62)。この関係性をベースに判断すると、今年から来年にかけて予想される失業率5―6%のレンジに相当するPCE価格指数は2.0―2.5%である。

現在の同価格指数は1.2%(3月時点、前年同月比)とFRBが望ましいと考える2%を下回っている。しかし、失業率の低下にしたがって賃金(総平均週間給与)は4%台の伸びとなっており、1年後には一層の雇用改善と並んで消費者物価指数も2%台に乗せてくる可能性が高そうだ。消費者物価指数も2013年以降1%台後半(前年同月比)だったが、4月は総合で2.0%、食料とエネルギーを除くベースで1.8%と上がってきた。

<連銀にとって最悪のシナリオとは>

以上、失業率の低下、インフレ率の穏やかな上昇見込みを総合すると、今年の10月前後にはQEの終了、そして来年中頃にはFRBがゼロ金利解消に踏み出すという見通しは無理のない自然な見込みだろう。

しかし、このQEからの出口の際に最大のリスクが待ち受けている。

これまでのQEの結果、連邦準備銀行(以下連銀)のバランスシートには負債サイドに約2.6兆ドルの民間銀行の超過準備預金残高(民間銀行の連銀における準備預金残高のうち必要準備金を超える金額)が積み上がっている。これが連銀の資産サイドの短期から中長期の保有債券残高(主に国債と不動産担保証券)に見合っている。

この両建ての残高が次第に縮小する必要がある。連銀は既存保有債券を売却するのではなく、償還期日まで保有することで時間をかけた縮小を見込んでいるはずである。しかし、もしもインフレの上昇が予想よりも早く、比較的急速に金利を引き上げなくてはならない場合は、利回りが上がった政府短期債券やマネーマーケット(レポ市場やフェデラルファンド市場)への超過預金準備のシフトが急速に進む。

その場合、連銀は資産サイドの債券の保有を維持するためには自らが引き上げた金利水準でマネーマーケットから資金調達(民間からの連銀の資金吸収)をせざるを得ない。あるいは準備預金に現在付利されている0.25%の利率を引き上げる手もある。

いずれにせよその結果、連銀にはQEで積み上げた低利回りの債券運用と上昇した資金調達コストの間で利鞘の悪化(逆ザヤ)が生じる。この損失規模は対象となるバランスシートが2.5兆ドルならば、1%で年間250億ドル(約2兆5000億円)にもなる。

連銀の連結ベース自己資本は547億ドル、純利益は財務省への国庫納付金884億ドルの支払い前で906億ドル(2012年)である。ちなみに、QEによるバランスシートの拡大で国庫納付金支払前の連銀の年間期間利益は、危機前の250億ドル程度から900億ドルの規模まで増加している。

連銀にとって最悪のシナリオは、現在の見込みよりもインフレ率の上昇が早まり、引き締めを急がなくてはならないケースである。その場合には、保有債券の償還到来を待つのではなく、売りに出ることで金融引き締めに動かなくてはならないかもしれない。その場合は、債券価格が低下(利回りが上昇)している市場で売るわけだから、中長期債を中心に莫大な損失が連銀に生じる。

もうおわかりだろう。繰り返しQEの終了から金利の引き上げまでには相応の期間があり、その後の金利の引き上げのテンポもおそらく緩やかだろうとFRBが繰り返しているのは、景気と市場への配慮のように受けとめられているようだが、実は連銀のバランスシートと巨額損失リスクへの配慮も含意しているのだ。

もちろん、FRBはこうしたリスクも承知でQEを始めた。現在のFRBの見込みでは、金利引き上げで見込まれる損失は、今後数年間の連銀の期間収益で吸収可能な範囲に止まり、財務省への国庫納付金額がある程度減る範囲で吸収可能と考えられている(注1)。

わたしもそうなる可能性が高いと思うが、予想以上に極端なことも起こり得る。FRBの読み通りになるかどうか、あるいは巨額損失を伴うハードランディングになるか、それは今後のインフレ動向次第である。

最後に言い添えれば、日銀も同様のリスクを抱えている。しかも、量的金融緩和期の短期と長期金利の金利格差が日本では米国よりずっと小さいので日銀の収益は米国連銀よりもずっと小さい。このため将来の金利上昇に対する耐久力も日銀の方が小さく、より大きなリスクを抱えていると言えるだろう(注2)。

*参考文献:(注1)“The Federal Reserve's Balance Sheet and Earnings: A primer and projections” Finance and Economics Discussion Series, 2013-01, FRB (注2)稲垣賢秀、左三川(笛田)郁子、(監修)岩田一政「異次元緩和の出口で発生するコスト」公益社団法人日本経済研究センター、金融研究レポート 2013-4

*竹中正治氏は龍谷大学経済学部教授。1979年東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、為替資金部次長、調査部次長、ワシントンDC駐在員事務所長、国際通貨研究所チーフエコノミストを経て、2009年4月より現職、経済学博士(京都大学)。最新著作「稼ぐ経済学 黄金の波に乗る知の技法」(光文社)。
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きょうの相場
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0E804D20140528 
米労働市場、一部は完全雇用に近い状態=アトランタ地区連銀総裁
2014年 05月 28日 11:31 JST
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[バトンルージュ 28日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のロックハート総裁は27日、米労働市場は一部の地域や業種が完全雇用状態に近づいている一方、それ以外は依然低迷しているとし、低迷している分野や地域は引き続き緩和的な金融政策を必要としていると述べた。
完全雇用を達成するため、インフレ率がFRBの目標である2%を若干超えてもよいとの認識で、2.5%までは許容範囲とした。
さらに、FRBが利上げに踏み切るまで債券償還金の再投資を続ければ、市場は好感するとの見方を示した。


 

アングル:日銀総裁が物価と金融安定の両立強調、シグナルの可能性も
2014年 05月 28日 15:43 JST
[東京 28日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁が、金融政策による物価目標達成と金融市場安定の両立の重要性を強調し始めた。2%の物価目標達成に向け自信を深めつつあるが、いまだに低位にとどまる長期金利が急上昇するリスクについて、えん曲に警戒を呼び掛けたのではないかとの声も出ている。

黒田総裁は28日午前、日銀本店で開かれた国際会議で講演し、金融政策運営の課題として「物価と金融の安定をどう両立させるか」「金融政策運営において物価と金融の両者の安定を考慮すべきか」などと問いかけた。

「講演は一般論」で具体的な今後の金融政策の可能性をにおわすものではないというのが、日銀の公式見解。

だが、需給ギャップが「思いのほか速いペースで縮小」(4月30日開催の金融政策決定会合議事要旨)し、日銀は2%の物価目標達成に自信を深めている。

市場では2%の達成に懐疑的な声も多く、物価面での市場と日銀のギャップは埋まっていない。そこに長期金利の意図せざる急上昇が起きた場合、果たして金融市場の安定的な運営は可能なのかどうか──。そこに目を向けてほしいとのメッセージが秘められているのではないかとの見方が、市場の一部で浮上している。

ある国内銀行の関係者は「一昨日の岩田規久男副総裁の発言に続き、日銀は市場に対し、0.6%の長期金利に安住するな、とシグナルを出してきた可能性がある」と述べる。

岩田副総裁は26日の講演で、物価が2%を恒常的に上回りつづければ「政策を調節する」と表明。緩和縮小の可能性に言及していた。

日銀の衛藤公洋・金融機構局長は27日、ロイターのインタビューで「金利がどのような事情で上がったとしても、金融システムは相応に耐えられる」と指摘。日銀の公式な見解として、金利上昇リスクを吸収できると説明している。

しかし、長期金利が低位に張り付くことで、ある日突然に上方へ跳ねる「マグマ」が市場にたまることへの懸念も、日銀内部にはあるもようだ。

黒田総裁が繰り返し「量的質的金融緩和(QQE)は実質金利を押し下げる」と強調しているのは、裏を返せば物価上昇に伴い名目金利は自然に上昇するとのメッセージだろう、と複数のBOJウオッチャーは指摘する。

また、ある市場関係者は、黒田総裁が指摘した「金融の安定」の中には、膨らんだ日銀資産を膨張から縮小に転じさせようとした場合に、どういう影響が金融市場に出るのかというもっと「大きなピクチャー」を前提にした問題意識が隠されている可能性があるとみている。「学術的なミーティングだったので、中長期的な問題意識を込めていたのではないか」との見立てだ。

元日銀理事で富士通総研エグゼクティブ・フェローの早川英男氏は20日に開かれた「ロイター日本投資サミット」で、1%台前半で推移している物価上昇率が再び上がり始めれば、市場が動揺するのではないかと予測。早ければ今年末にも長期金利が上昇する可能性があると語っている。

この日の黒田総裁の発言が、数カ月たって振り返ってみれば、市場への「明確なメッセージ」だったとわかる日がくるかもしれない。

(竹本能文 編集:田巻一彦)


 


http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0E808920140528?rpc=188&sp=true
銀行改革、業界の抵抗で進まず=IMF専務理事
2014年 05月 28日 13:04 JST
 5月27日、IMFのラガルド専務理事は、2007─09年の金融危機で明らかになった問題に対応した銀行改革は遅々として進まず、銀行業界の抵抗にも阻まれていると指摘した。ワシントンで21日撮影(2014年 ロイター/Jonathan Ernst)

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[ロンドン 27日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は27日、2007─09年の金融危機で明らかになった問題に対応した銀行改革は遅々として進まず、銀行業界の抵抗にも阻まれていると指摘した。

ラガルド氏は、ロンドンで開催された会合で、銀行は現在、危機前よりも多くの自己資本を持っているとしたが、改革は「ペースはあまりにも遅く、ゴールは依然はるか先だ」と述べた。

改革は、複雑な取り組みであることに加え、「業界の強い抵抗」にも阻まれており、今は、長期戦で疲労が出やすい時期にあたる、と指摘。

さらに、08年のリーマン破綻時のような混乱を避けるため、巨大銀行は政府の救済を受けられるとの見方が市場にあることを挙げ「大き過ぎてつぶせない問題がいまだに解決していないことが、おおきなギャップ」と述べた。

c Thomson Reuters 2014 All rights reserved.

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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0E80JH20140528
金急落の裏にユーロ安、ECB理事会後にリバウンドも
2014年 05月 28日 16:12 JST
[東京 28日 ロイター] - 金価格が急落した裏には、ユーロ安があるとみられている。来週の欧州中央銀行(ECB)理事会での追加緩和実施が確実視され、ユーロが下落。相対的にドルが上昇し、ドルの代替資産である金の価格が下落したという。

4月安値を割り込んだことで一気に売りが出た面もある。リスクオンの動きが強まったわけではなく、ECB理事会後は、材料出尽くしでリバウンドする可能性もあるとみられている。

<今年最大の下落>

金の現物価格XAU=は、27日の海外市場で29.35ドル安の1オンス1263.39ドルまで急落し、下げ幅は今年最大となった。相場全体が比較的落ちついている中で、金の急落ぶりに注目が集まっている。

年初1205ドルだった金価格は、3月14日に1381ドルまで上昇。1279ドルまで調整した後は、1290ドルを中心としたレンジ取引が続いていた。

だが、「4月安値の1268ドルを下回ったことで、一気に売りが加速した」(ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏)という。

ウクライナ大統領選などを無事通過し、ここにきてリスクオンのムードが高まり、金価格が下落したのだろうか。

金には株式などリスク性資産のヘッジ手段としてのニーズがあり、投資家のリスク選好度が増せば、下落圧力がかかりやすい。足元の金価格下落がリスクオンのサインであれば、もう一段の株高・円安も期待できることになるが、市場ではこうした見方は少ない。

<金利や信用リスクの要因は限定的>

投資対象としての金価格の決定要因には、金利、信用リスク、ドルの3つがある。

このうち金投資のための資金調達金利として重要なLIBOR金利(1年物)LIBOR01は、1月2日の0.5826%に対し、前日27日は0.535%と年初から低下傾向にあり、金下落の理由にはならない。低金利は利息の付かない金の相対的な魅力を増す。

一方、信用リスクは欧州金融危機が一服して以来、低下する傾向にある。この面では金価格の下落要因になっているが、27日の海外市場で投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ・インデックス(VIX).vixは、プラス0.15の11.51とむしろ上昇。足元の金価格下落にはつながりにくい。

金には宝飾品や産業用としての需要もある。世界最大の金ETF(上場投信)である SPDRゴールド・シェアーズ(GLD.P)の信託金残高は、3月21日の821トンをピークに785トンまで減少するなど、金需要の縮小に歯止めがかかっていない。

ただ、年初も794ドルであり、800トン前後でのもみあいとみることもできる。この点も前日の金価格急落の理由とはしにくい。

<ユーロ安によるドル高が主因>

残るはドルの要因だ。金はドルの代替資産と位置づけられ、ドルが上昇すれば、金は下落する傾向がある。

上値が一段と重くなっているドル/円JPY=EBSからは感じにくいが、ドル自体は上昇トレンドに入っている。ドル・インデックス.DXYは5月6日の79.093ポイントから80.352ポイントまで上昇した。

金価格の下落傾向には信用リスクの低下なども大きな背景としてあるが、足元の急落は直接的にはドル高が要因との見方が多い。

ただ、ドルの上昇は、ドル側、米側の理由ではないようだ。米長期金利US10YT=RRは27日も低下。金利面ではドル上昇の理由はない。「ドルの上昇はユーロの下落によるもの」(マネースクウェア・ジャパン市場調査室の山岸永幸氏)という。

市場では来週6月5日のECB理事会で、追加金融緩和が実施されるとの見方が確実視されている。

ドラギECB総裁は27日に開催されたECBフォーラムで、低インフレが過度に長期化するリスクを認識しているとしたうえで、ECBはインフレ率を目標水準へ引き上げる手段を有しているとあらためて言明。

ユーロ/ドルEUR=EBSは前日の市場で一時1.361ドルまで下落。2月13日以来の水準に低下した。

このため、ユーロが反発すれば金もいったん戻す可能性があるという。一方、金急落がリスクオンが一段と進むサインとの見方は少ない。

T&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏は「金価格の急落はリスクオンの強まりではなく、ユーロ下落によるドル上昇の要因が大きい。ECB理事会で追加緩和が実施されれば、材料出尽くしで、ユーロ、金価格ともにいったんリバウンドするのではないか。金価格の下落をリスクオンのサインと受け取るのは早計だろう」との見方を示している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)


 

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0E809720140528?sp=true
焦点:欧州議会で反EU派躍進、統合強化進まず経済政策は拡張方向か
2014年 05月 28日 13:42 JST
[ブリュッセル 27日 ロイター] - 欧州連合(EU)欧州議会の選挙において、反EUを掲げる大衆迎合的な政治勢力が躍進したことにより、ユーロ圏の統合強化を目指す新たな基本条約を策定する動きは妨げられるとともに、経済政策はより拡張的になるだろう。

ブリュッセルで27日に開かれたEU非公式首脳会議は欧州議会選挙結果について検討し、とりあえずの政策面への影響が次第に明らかになりつつある。それは以下のようなものだ。

<基本条約改正には動かず>

EUが統合強化のために早期に基本条約の改正に踏み切ることはないとみられる。条約改定には加盟国議会の批准と一部加盟国における国民投票が必要になり、否決される危険があるからだ。

条約改正の見送りは、英国のキャメロン首相が「極めて緊密な連合」という項目を削除する試みを達成できそうにないことを意味する代わりに、欧州統合の動きを後退はさせないまでもこれから何年かは事実上足踏み状態に置く形になる。

ブリュッセルのシンクタンク、欧州政策センター(EPC)のファビアン・ズレーグ氏は「英国病がまん延する事態が出てくる。いくつかの政府は、何をやろうとしても自国民の支持を得られないので、EUレベルで前に進むことはできないと言い出すだろう。つまり、われわれが直面する問題に対応できない停滞が起きる」と述べた。

このため多くのエコノミストがユーロ圏統合強化のために必要としているさまざまな改革が政治的に実行不可能となる恐れがある。

ユーロ圏の予算や議会一体化、各国の予算・経済政策への監視権限拡大、銀行同盟のための共通の財政的なバックストップ確立といった改革が実行できるようになるには、再び深刻な危機に襲われなければならないかもしれない。

<成長重視に急傾斜か>

南欧諸国の政府は、緊縮財政を緩和し、公共投資をもっと増やして経済成長を高め、大量失業に対処するよう求める圧力を強く受けることになるだろう。

イタリアやギリシャ、スペイン、フランスでは景気後退や若者の失業に対する怒りの声がみなぎっており、イタリアのレンツィ首相は、財政規律維持派の旗頭であるドイツのメルケル首相に態度を和らげるよう働きかけるとみられる。

メルケル首相は26日、反EU主義者の台頭を抑えるにはEUが競争力を強化するとともに雇用を生み出す必要があると認めた。ただし彼女がドイツの財政黒字を使ってインフラ投資や需要を促進するかどうかは定かではない。

ジャーマン・マーシャル・ファンドで欧州プログラムのディレクターを務めるダニエラ・シュワルツァー氏は、反EU派が躍進した国の政府は、国内向けに売り文句にできるような改革措置をEUに強く要求するようになると予想。「彼らはEUが成長と雇用をもたらすことが可能だと証明しなければならない。より多くのルールを導入しようという伝統的なドイツ流のやり方は政治的に受け入れられない」とみている。

<権限縮小>

今後は少なくとも象徴的な形で、加盟国民の日常生活に影響を及ぼすようないくつかのEUの権限を各国に返還する取り組みも行われるだろう。

オランダのルッテ首相はキャメロン英首相と歩調を合わせ、有権者は多くの分野で統一欧州色が強まるよりも弱まることを望んでいると主張している。

退任するバローゾ欧州委員長はこうした空気の変化を察知し、昨年に不要な規制を見直す作業を開始した。

フランスのオランド大統領は当時は消極的な姿勢だったものの、極右の国民戦線が世論調査でトップの支持を集めると、EUは必要ない分野から「撤退」をするべきだと発言した。

だがどの規制を減らすべきかで合意するのは難しい見込みだ。フランス政府は英国を苛立たせている週労働時間の上限を48時間に定めていることなど、労働や環境、食品に関する安全基準を撤廃することには抵抗する可能性が大きい。

一方でEU関係者の間では、反EUの各政治勢力は自由貿易協定からユーロに至るまで、多くの政策についてそれぞれ意見が異なるので、欧州議会では足並みがそろわず有効な動きができないかもしれず、静観するのが得策だとの声も聞かれる。

それでもEUの広範な改革を提唱する英シンクタンク、オープンヨーロッパのディレクター、マッツ・パーソン氏は「大衆迎合主義者に風が吹かないようにするには、EUが自己改革を実行して有権者の要望に応じられると示すのが最適なのは自明だ」と述べた。

<政策課題をスリム化>

EU首脳は次の執行部の政策課題をスリム化して、成長や雇用の促進、エネルギー・気候変動の共通政策の確立、域内のエネルギーとデジタルサービス市場の拡大、米国との自由貿易協定(FTA)交渉妥結といった問題に絞るとみられる。

中でも一番達成が難しいかもしれないのは、米国とのFTAである環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)だろう。欧州議会では多くの極右、極左、環境保護主義の議員が実現阻止を公約に掲げ、中道左派も一枚岩にならない可能性があるためだ。

フランスの国民戦線のルペン党首は保護貿易派で、TTIP阻止を最優先の政治課題としている。

ただ、もしも欧州議会の最大会派がTTIP妥結を連立協定に含めれば、実現の可能性はかなり残ると専門家はみている。EPCのズレーグ氏は「TTIPの実現は以前よりは難しくなるが、まだチャンスはある」と語り、ドイツを中心とするEU加盟各国政府が主な推進役になるとの見方を示した。

(Paul Taylor記者)

 

http://www.canon-igs.org/column/network/20140527_2594.html
2014.05.27[海外情報・ネットワーク] コラム
ウクライナ問題の波紋−経済制裁で一番損をしている日本−小手川 大助
シリーズコラム『小手川大助通信』

[研究分野]
海外情報・ネットワーク
1.ウクライナ問題その4で、経済制裁の効果について書いた際に、ボーイングの航空機製造が、いかにロシア産のチタンに依存しているかということに触れた。この関係から、極めて注目すべきニュースが入ってきた。毎年サンクトペテルブルクで世界経済フォーラムが開催されている。通常は6月半ばなのであるが、今年はワールドカップサッカーと同時期になることを避けて、5月22日から24日に開催される。従来から参加者の大多数はロシアの政財界のほかはドイツ勢を中心とする欧州の政財界と、米国の財界、そして、アジア系(中国、韓国、シンガポール)の政財界であり、我が国からの参加だけは極めて少数である。最近入ってきた情報は、ボーイング社が、米国政府からこのフォーラムを欠席するよう強い圧力をかけられたにもかかわらず、参加を決定したというニュースである。ボーイング社の最高幹部が出席するか否かは明らかでなく、恐らく、米国政府としてもランクを下げたところで出席を受入れたのだと考えられるが、これは、「経済制裁」という言葉に過度に反応して必要以上の自粛をしてしまうという心理的な悪影響から抜け出す観点からは、極めて重要な事実だと考えられる。

2.日ロの関係については、昨年5月連休時の安倍首相の訪ロの際に、安倍総理にかってない数の日本の財界人が同行し、ロシア側との接触が始まった。ロシア側としては放っておくと中国に蹂躙されかねない極東地域の経済について、日本との関係を強化して中国への対抗勢力にしたいとの気持ちがあるものと思われる。極東地域の問題については、「ロシアで最も衰退している極東地域が、世界で最も成長の著しい東アジアに位置しているというパラドックスを解決するのが、プーチン政権にとっての主要課題」というロシア政府高官の言葉によく表されている。しかしながら、ロシアは人口で見ればドイツの2倍近くと欧州最大であり、市場としての価値は極めて高い。特に、経済インフラ建設のポテンシャルは鉄道、道路、空港とほぼ無限というくらい存在するし、従来から注目されてきたエネルギー部門や資源に加え、最近では中産階級の増加により、消費財の市場としても可能性が高まってきている。中国については、「2000年に日本と同じ生活水準の中国人は全く存在しなかったが、2010年にその数は1億人となり、2020年には7億人に増加する」という見通しの下、最近我が国のサービス産業の中国進出が目覚ましいものになっているが、実はロシアでも、中国に比べれば小さいものの同じような現象が進行している。そして、このような成長の過程で、合弁の相手としてふさわしい中小企業も急速にロシア国内で成長してきている。また、1998年にいったん破たんした国家財政も、その後の極めて保守的な財政運営の結果、外貨準備高は中国、日本、サウジに次いで世界第4位の水準となり、遂に、昨年にはこの一部を取り崩して、経済インフラ建設のための外資導入の呼び水として、ロシア側のマッチングファンドを創設したところである。

3.ふりかえってみると、我が国とロシアとの経済関係は、漁業資源や、エネルギー、資源という極めて狭い分野にこれまで限られてきており、経済交流や留学生などの人的交流の薄さが、領土交渉という観点から見ても、極めて不利な状況にあることは否めない。領土交渉という観点から見ても、これまでのような歴史や法律的な解釈の問題ではなく、経済関係を基礎にしたもっと広いマクロの観点から両者の関係を構築するべき時期に来ている。ロシアと我が国の産業構造は、中国と比較しても極めて補完的であり、我が国の企業でもこの点に早い時期に目を付けた、コマツ、味の素、トヨタといった企業は、目覚ましい成果を上げてきている。以上の観点から見れば、安倍総理の訪ロに続く日ロの経済関係の強化は当然の成り行きであった。安倍総理のソチ冬季五輪の開会式出席もこの観点から極めて時宜を得たものであった(中国も習近平主席の出席を決めている)。このような中で、米国、豪州に続いて開催された日ロの防衛分野での2バイ2の会議も日ロの交流拡大の面で極めて重要な意味を持っていた。

4.このような日ロの経済面の交流の活発化の最中に降ってわいたのがウクライナ問題である。ウクライナの政権交代の2月22日の1か月後の3月18日に東京で日ロの3大臣会合と、財界のフォーラムが予定されていた。ロシア側は経済大臣、農業大臣、環境担当大臣、日本側もこのカウンターパートの3大臣の出席が予定されていた。親日家のロシアの環境担当大臣に至っては、会議の前、17日に訪日したくらいである。ところが、この時期になって、米国から、「制裁」の話が持ち出されてきた。2008年のグルジア紛争の際にも制裁は一切行われていないにもかかわらず、オバマ政権は今回、やおら経済制裁を持ち出し、しかも単なる個人を対象にして査証発行停止や資産凍結から、より広範囲の経済制裁をちらつかせてきたのである。このような背景の中で、3月18日の会議について、日本側は3大臣の出席を急きょ取りやめた。背後に米国政府による我が国政府に対する強力な圧力があったことは想像に難くない。日本側欠席のため、ロシア側は、出発していなかった大臣については出発を取り消し、来日していた環境担当大臣は急きょ帰国するという事態になった。一方、財界人会合については約1000名の参加者を得て盛大に開催され、民間人ということから、プーチンの側近中の側近であるセーチンロスネフチ社長も参加した。

5.4月28日にはモスクワに外務大臣が訪問し、同じ日に財界人会合が予定されていた。これらの会議については、当時の状況を踏まえ、日ロ間で話し合った末、延期することになった。これに先立つオバマ訪日の際に、米国側が対ロの経済制裁について我が国に強い圧力をかけてきた(ドイツに対しても同じような強い圧力がかけられ、そのためにメルケル首相訪米後直前にウクライナで意図的な紛争の勃発が行われたことは前の通信に書いた通りである)。そして我が国は4月29日に追加制裁(23名についての査証の発行禁止)を発表した。

6.このような状況の中で、上記の通り、制裁を他国に働きかけてきた米国も、自らの企業であるボーイング社がサンクトペテルブルクの会議に出席することを阻止できなかったのである。最近の状況を見ても、ボーイング社の件に加えて留意すべきなのは、プーチン大統領に、シーメンス、ロイヤルダッチシェル、ブリティッシュペトリアムといった欧州の大企業のトップが面会していることである。また、筆者は5月初めのモスクワ訪問の際に、6月18−20日にソチで開催される国際鉄道会議に講演者として招聘された。招聘先を見ると、驚いたことに、中国などのロシアの友好国だけでなく、ドイツ、フランス、オランダ、韓国といったいわゆる西側の国の鉄道関係者の代表がずらりと名前を連ねている。事務局に問い合わせたところ、欧州諸国も予定通り出席する予定とのことであり、フォーラムを舞台にして、モスクワ周辺の新幹線鉄道網やシベリア鉄道の改善、延長計画について、各国の激しい売り込み競争が展開されることが予想される。

7.そもそも、現在のように各国の経済が相互に深く絡み合っている中で、制裁の対象国だけの負担となる「経済制裁」というものは困難であることは、以前の通信に述べたとおりであり、これまでの制裁については、これが効果を有しているかについては甚だ疑問である。ロシアを孤立させようという狙いは分かるものの、では、制裁を通じて、米国としては、最後はどのような出口に導こうというのか、戦略性が全く感じられないところに問題がある。プーチンの取り巻きを対象にしても、80%を優に超えるという史上最高の支持率を誇る大統領に対して、その取り巻きが何か意見を言うかというと、当然のことながら悲観的にならざるを得ない。

8.では、「制裁」は全く意味がないのであろうか。そうではない。中長期的にみると、制裁の存在は、我が国企業のロシアに対する新規投資を慎重にさせるという心理的な悪影響が心配される。例えば最近報道されたのは、昨年の安倍首相訪ロを契機にロシアと我が国の金融機関との間で進められてきたプロジェクトファイナンスや協調融資の話が3月以降日本側から急遽解約を通告され、そこに、米国や欧州の金融機関が代わりに入ってきているというニュースである。これについては、問題になった貸付は新規案件ではなく、従来からの貸付の更新をしなかったものということであるが、企業心理に与える影響については十分注意する必要がある。近々、ロシア大手銀行の幹部がアジアを訪問することが予定されているが、その際の訪問先も主体は香港、上海やシンガポール等で、日本は含まれない方針である。更に、また、今年6月〜7月にモスクワ−カザン間のロシアの最初の高速鉄道の建設についての海外でのロードショー(宣伝活動)が計画されているが、アジア地域の訪問先は、中国、韓国、台湾、シンガポールで日本は含まれていない。このような動きについては、我が国としても、心理的影響を受けずに、前向きに対処していく必要があろう。

9.上記のように、折角の昨年以来の日ロの経済交流のうねりが、ウクライナ問題とそれに続く米国からの圧力で心理的に萎もうとしている。政府としては、最近の状況を踏まえて、意味のない経済制裁を課することは避け、欧州に倣って、我が国としてロシアとの経済関係の強化に努めるべきであると考える。鉄道を含め、我が国が世界に誇る商品をロシアに提供していくことは、一般のロシア国民の生活向上にも資するものと考えられる。

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07. 2014年5月28日 17:14:52 : nJF6kGWndY
>>06 連銀は資産サイドの債券の保有を維持するためには自らが引き上げた金利水準でマネーマーケットから資金調達(民間からの連銀の資金吸収)をせざるを得ない

そんなことはなない

別に、インフレになるに任せておけば良いんじゃないかw

>>02

投資は、自己責任で

だな


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