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[月曜経済観測]経常収支に映る日本経済 成長へ産業構造転換を UBSグループ日本代表中村善二氏
アベノミクスで景況感は好転したが、日本の輸出は思うように伸びず、貿易赤字が膨らんでいる。国の稼ぐ力の目安となる経常収支は今後どう推移するか。グローバル金融機関の視点をUBSグループの中村善二・日本代表に聞いた。
中高年の消費増
――経常黒字の縮小から何を読み取りますか。
「輸入増の要因として、エネルギーだけでなく個人消費の伸びを見落としてはならない。高齢化する人口動態から考えれば、2020年代の前半まで個人消費は必然的に拡大する。金融資産がある40〜50代の中高年層が、10〜20代の若年層より多く消費することは感覚的にも明らかだろう」
「アベノミクスは、この基調の上に登場した。金融緩和と財政拡大で円安トレンドが生まれ、株価が押し上げられた。資産効果で予想以上に個人消費が拡大し輸入を引っ張っている」
――輸出が伸び悩んでいる原因は。
「為替について製造業の経営者と話すと、円高も円安も望まない中立的な声が非常に多くなった。製造拠点を海外に移転しているからだ。外で製品を作り、国内や外国で売る量が増えている。円安が業績に直結しなくなっているのが現実の日本経済の姿だ」
「米国の需要は順調に回復しているが、中国、韓国との外交関係の悪化が輸出に影を落としていると感じる。黒字を稼げる海外市場が減っている。安倍政権の積極的平和主義は長い目で正しいが、短期では経済面で苦労を伴う」
――日本企業の競争力に陰りはありませんか。
「主力の自動車は好調といえる。もう一つの柱の電機は世界市場で日本企業のブランド力と製品力が落ちている。このままではジリ貧となる恐れがある。稼ぐ力がある次世代の産業を育てなければならない」
「鉄鋼など需給が逼迫している分野もあるが、日本国内で設備投資する動きは見られない。企業はグローバルな生産体制を目指しており、国内投資に成長を引っ張る力は期待できない」
サービスに注目
――中長期の展望は。
「所得収支が増えて、今のところ貿易赤字を相殺している。とはいえ日本の対外投資の収益性は高いとはいえず、稼ぐ力としてはまだ弱い。将来、経常収支が赤字に陥るリスクがある。財政赤字を解消できる見込みがない日本にとっては大きな波乱要因だ」
「そうなる前に手を打つ必要がある。エネルギー政策に道筋をつけ、産業構造の転換が欠かせない。個人消費の構造的な伸びは20年代前半までだ。時間的な余裕はそれほどない」
――成長戦略に必要な条件は何でしょう。
「伸びているのはサービス産業だ。情報通信、流通などの分野では生産性が急速に改善している。国内の設備投資も多い。成長戦略は製造業のテコ入れに傾注しがちだが、経済規模の3分の2を占めるサービス部門に注目すべきだ」
「貿易と対外投資では、企業が活動する舞台を広げる環太平洋経済連携協定(TPP)の役割が大きい。生産性が高い製造システムをさらに進化させ、稼げる広域プラットフォームを築く力が問われている」
(聞き手は編集委員 太田泰彦)
なかむら・ぜんじ 顧客中心主義が信条。グローバル金融モデルの進化を探る。53歳
[日経新聞5月19日朝刊P.3]
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