http://www.asyura2.com/14/hasan87/msg/867.html
Tweet |
[グローバルオピニオン]ユーロ売り介入が必要 米ハーバード大学教授 マーチン・フェルドシュタイン氏
ユーロ圏経済は、最近一部の加盟国で上向きになったものの、全体としては低迷し、今年の域内経済成長率は1%をかろうじて上回る程度になりそうだ。ドイツでさえ成長率は2%を下回る。ユーロ圏の失業率は12%もの高水準に張り付いたままだ。インフレ率が年0.5%にすぎないことも問題である。これほど低いと少々のショックでマイナスに転じ、デフレスパイラルを引き起こしかねない。
経済に万能薬というものはほとんどないが、通貨ユーロがたとえば15%ほど大幅下落すれば、ユーロ圏が現在抱える経済的問題の多くは解決するだろう。輸入価格の上昇で、インフレ率は全体として上昇するはずだ。ユーロ安は輸出に有利に働き、輸入品に代えて国産品の購入を促す作用もあるので、平均成長率を押し上げる効果も期待できる。
ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁による「ユーロを守るため必要とあればあらゆる措置をとる」という2012年7月の有名な発言が、窮地に陥った周縁国の金利を下げながらも、ユーロ高につながったことはまちがいない。今となっては、12年のドラギ発言が導いた通貨の安定感を維持しつつ、どうやってユーロ高を解消するのか、という実際的な問題が持ち上がる。
現時点ではECBによる量的緩和が、ユーロ安誘導の手法として支持されている。そこで、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和がドル相場と米国のインフレ率にどのような影響を与えたか、検証してみよう。
結論を先に言えば、どちらにもほとんど影響はなかった。現在のドルの実質実効レートは、大不況前の07年とほぼ同じ水準である。金融危機がピークに達した08年にはドル資産への資金逃避で一時的に上昇した。その後、量的緩和が実施された3年以上にわたり、ドル相場は比較的安定し、FRBの資産購入額が1兆ドル以上に達した13年になると再び上昇したのである。
ドル相場には量的緩和以外の要因も作用したことは言うまでもないが、ECBによる大規模な資産購入がユーロ安を保証するとは言いがたい。
インフレ率を見ても、米国の消費者物価指数は、量的緩和が開始された10年に1.6%上昇し、11〜12年にいくらか加速したものの、資産購入がピークに達した13年には1.5%に下がっている。
ECBがユーロ安とインフレ率上昇をめざすなら、唯一頼れる方法は為替相場への直接介入である。すなわち、ユーロを売って他通貨を買うことだ。この種の直接介入は他国で問題を起こすかもしれないが、米国をはじめ各国の政策当局は、欧州経済の将来にとってユーロの競争力強化が重要だと認めるべきだろう。
((C)Project Syndicate)
Martin Feldstein 米ニューヨーク市生まれ。1980年代のレーガン政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長。全米経済研究所の所長など歴任。74歳。
[日経新聞5月19日朝刊P.4]
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。