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経済統計に異変?市場で高まる「人間の判断」の重要性と、「スピード重視」からの転換
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140523-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 5月23日(金)3時0分配信
毎月第一金曜日の夜は、トレーダーにとっての一大イベントがやってくる。米国の雇用統計が発表されるのだ。雇用統計が発表される金曜の夜は、ネット証券各社によるオンライン・セミナーが花盛り。僕の在籍するマネックス証券の「雇用統計・実況中継!」をはじめ、「ライブ!雇用統計ナイト」「雇用統計探検隊!」「雇用統計儲け隊」「雇用統計だよ!全員集合」「雇用統計だよ!おっかさん」等々、(大半が僕の創作だが)ほとんど馬鹿騒ぎしているとしか思えない。
以前、「雇用統計のお祭り騒ぎには辟易としている」とレポートで書いたら、読者からお叱りを受けた。いわく、「『辟易』は閉口すること、うんざりすることの意で、『辟易する』と使う。つまり、『検討する』『推敲する』と同じく、<漢語+する>というサ行変格活用の動詞である。『推敲とする』とは言わないように『辟易とする』は明らかな文法上の間違いである」とのこと。誠に読者は恐ろしい、もとい、ありがたい。勉強になります。
いきなり最初から話がそれてしまったが、雇用統計はブレやすいにもかかわらず、それにマーケットは過剰反応する。予想を上回ったか下回ったかで市場が動く。ほとんど反射神経の勝負だ。実際のところ、ニュースのヘッドラインに反応して売買注文を出すようにプログラムを組んでいる高速取引のヘッジファンドも存在する。人間の判断を挟まないで、文字通り機械的に売買するのだ。そこに、おかしな言葉だが「人間の判断」 で取引するトレーダーたちが参戦する。もう、こうなってくると丁半ばくちを開帳している賭場さながらである。サイコロの目が出るのと同じように、発表された数値が予想より上か下か、判明した瞬間におカネが動く。ドル/円レートなら 1円くらい簡単に動く。それによる市場参加者のプロフィット(利益)とロス(損失)の絶対値の合計は、いったいどれほどになるのだろう。
先般発表された米国の4月雇用統計で、非農業部門の雇用者数(NFP:ノンファーム・ペイロール)は前月から28万8000人増加した。20万人程度を見込んだ市場予想を大幅に上回ったうえ、2月と3月分も上方修正された。失業率は前月から0.4%低下し6.3%となり、6.6%の市場予想を大きく下回った。ヘッドラインは申し分のない、手放しで喜べる良好な結果だった。
事実、この雇用統計を受けてニューヨーク外国為替市場で円はドルに対して急落。一時は1ドル103円02銭近辺と、4月8日以来約3週ぶりの円安・ドル高水準を付けた。米国債も売られ、利回りは跳ね上がった。株も買われた。
●なぜ市場は弱い反応?
しかし、終わってみれば米国金利は低下、為替は円高、そして米国株も利益確定売りで下落した。ウクライナ情勢の緊迫化という要因もあったにせよ、これだけ強い雇用統計が出たわりには、なんとも弱い市場の反応となった。
なぜか? 先ほど、「ヘッドラインは申し分のない、手放しで喜べる良好な結果だった」と書いたが、統計内容をよくよく見てみると、実はそれほど「手放しで喜べる」ようなものではなかったからである。
例えば、平均時給は横ばいで変わらず、労働参加率は歴史的低水準に下がった。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は、講演などでこのような労働市場の「不完全さ」をたびたび指摘する。議長は、フルタイムでの就業を希望するパートタイム労働者数が700万人もいることを挙げ、「半ば失業した」労働者がこれだけ多く存在していることは、失業率が示唆している以上に雇用情勢が悪いとの認識を示した。企業は積極的に雇用を増やしてはいない。だから、新しい就職先を見つけるのは難しいとの懸念から、人々が仕事を辞めるリスクを取りたくないと考えていると想定される。「一方」というか、「同じことの裏返し」というか、6カ月以上仕事が見つからない長期失業者の割合が異常なほど大きい。
失業率だけを見ていては、米国の労働市場の実態はわからない。だからこそ、先のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、将来の金融政策の方向性を示すフォワード・ガイダンスを変更したわけである。失業率だけでなく、もっといろいろな指標を見て判断しようというわけだ。極めて納得のゆくアプローチであり、そのFOMCの決定を市場も好意的に受け取った。失業率が、それまでFRBが数値目標に掲げてきた6.5%に接近する一方、インフレ率はFRBの目標である2%にはるか及ばない。だから、失業率の数値基準6.5%を撤廃するというのは市場の予想通りであった。
しかし、雇用統計発表時点で、市場はここまでの事態を想定できただろうか? NFP(市場予測値との差)が上振れし、失業率が大幅に低下しても、もっとつぶさに労働市場の指標を確認しないとマーケットでの的確な判断が下せなくなるということを。
無論、このようにつぶさに指標を確認するというアプローチは投資において正しいものだ。しかし、これまでヘッドラインに対する条件反射の速さで勝負してきた者たちにとっては、たまったものではないだろう。NFPと失業率だけでは不十分。労働参加率は? 長期失業者数は? 週当たり平均賃金は? トレーダーたちの嘆きが聞こえるようだ。そんなにたくさんの指標を、あれもこれもチェックするなんて、“辟易とするよ”。
広木隆/マネックス証券チーフ・ストラテジスト
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