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真っ赤な“嘘”「平均貯蓄1100万」算出のカラクリ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140522-00012605-president-bus_all
プレジデント 5月22日(木)10時15分配信
表1:平成25年 家計の金融行動に関する世論調査[2人以上世帯調査]金融資産保有額(年令・年収別)
■平均額と中央値の違いをおさらいしよう
1世帯(2人以上)の平均貯蓄額は1,101万円(金融広報中央委員会調べ、2013年*)。
この平均額を見て「我が家より多い! 」と思う人もいれば、「こんなに少ないの? 」と思う人もいるでしょう。でも、焦りや嫉妬は禁物ですし、優越感に浸るのもちょっと違うと思います。
「平均はいくら? 」
私たちは、給料や小遣い額、初めて行く海外旅行の予算など、また購入経験のないこと(婚約指輪の値段など)について、その相場や目安を知りたくなります。
でも、その平均は本当に「平均」を表しているものなのでしょうか?
表1は、2013年の金融資産の保有額です。年代や年収別の詳しいデータになっているので、まずは、自分に当てはまるところの金額を確認してみてください。
表内にある、貯蓄の「平均額」とは、調査した全員の貯蓄額を合計して、その人数で割った値のことを表します。そして、貯蓄の「中央値」とは、貯蓄額の少ない人から多い人の順に並べたときにちょうど真ん中にいる人の値のことをいい、一般的には、平均額の実感に近いのは中央値の方だといわれています。
では、貯蓄額が0円、100万円、2000万円の3人がいた場合を考えてみましょう。
3人の中央値は100万円ですが、平均値は貯蓄の高い人に引きずられた結果、700万円まで上がってしまい、3人の実感からは遠い数値になってしまいました。
同様のことは総務省が16日に発表した2013年家計調査報告の貯蓄額でも起こっています。
2人以上世帯の貯蓄額の平均値は1,739万円ですが、中央値は1,023万円でした。さらに、勤労者世帯に限った平均値は1,244万円ですが、中央値は735万円という結果でした。
この調査からも平均値と中央値では、実感に近いのは中央値であるということと、貯蓄の多い人が平均値を引き上げていることがわかりますね。
■2010年4,018万→2013年356万円の謎
表2:平成22年 家計の金融行動に関する世論調査[2人以上世帯調査]金融資産保有額(年令・年収別)
前出の金融資産保有額に関して、もうひとつの表2、2010年調査分も確認してみてください。ここでもやっぱり気になるのは、やはり自分に該当する欄ですよね(笑)
今回は、20歳代の750万〜1,000万円未満世帯に注目してください。
2010年と2013年、2つの調査を見比べてみると2010年には平均4,018万円あった貯蓄額が、たった3年で356万円まで下がっていることがわかります。どうしてこんなことが起こるのでしょうか?
種明かしをすると、2010年の20歳代で年収750〜1,000万円の調査対象者はたった1人でした。この調査対象人数は約4000世帯なので、たまたまその年代と年収で調査対象になった人が極端に少ない場合は、「調査結果はウソではないけれど、生活実感からはホントでもない」ということが起こりうるのです。
そしてこれは、この調査だけに限ったことではありません。
先ほどご紹介した「総務省の家計調査」では約8000世帯の調査を行っていますが、年代別かつ年収別の分析は行っていないため、20歳代の年収300万円の会社員がこの調査結果を見ると、平均値1,244万円も中央値735万円も自分の感覚とは異なる印象を持つのではないでしょうか。
統計データを見る時には、サンプル数はもちろん、分析方法も確認する必要があるのです。
私はファイナンシャル・プランナーとして統計資料を目にする機会が多いのですが、統計データの専門家ではないからこそ、自分の経験と照らし合わせて疑問を持つデータを見たときは、必ずその調査方法などを確認するようにしています。
たとえば、「シニア層、約8割がインターネットをよく利用すると回答」(MMD研究所)という調査もありますが、自分の身近なシニアを見た限りではそこまで普及していないような気がしました。そこで、調査方法を調べてみると、調査方法は「インターネット」なのです。となると……回答するのはもちろん、インターネットの利用者ですから、利用率は自然に高くなりますよね。
■平均値を目標に貯金してはいけない
このように、統計データは「ウソではないけれど、ホントでもない」ということが起こるので、直感的に「えっ? 」と疑問に思ったデータは、結果に加えてその調査方法や対象人数なども確認したほうがいいと思うのです。
日本では、お金のことを家族はもちろん、他人とも話をしにくい……という人が少なくありません。だからこそ、「平均値」がますます気になるのだという気持ちもわかりますが、上記のような理由から、冒頭の1,101万円という貯蓄額の平均値も、「平均値を目標にしてお金を貯める」のではなく、あくまでも「参考値」にとどめておきましょう。だって、平均値をクリアしたとしても、平均値があなたの家計に何かをしてくれるわけではないのですから。
貯蓄をするときは、他の家や平均がどうあれ、自分の家庭で「いつ」「何に」「いくら」必要かという目的と予算を決めて、貯蓄するようのがコツです。そのほうが、必要なときに必要なだけのお金を手に入れることができるので、あなたの人生の安心をつくってくれるはずです。
*金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査:2人以上世帯調査」
ファイナンシャル・プランナー 前野彩=文
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