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客待ちのタクシーが長い列を作る(画像の一部を修整しています)=大阪・北新地
格安タクシー「強制値上げ」の試練 関西で競争激化
http://www.asahi.com/articles/ASG57766JG57PTIL02R.html?iref=comtop_6_01
2014年5月22日09時10分 朝日新聞
関西のタクシー業界が揺れている。過当競争の防止をめざす法改正で、4月から一定幅の運賃が義務化された。値上げを強いられる格安タクシー会社は相次いで国を提訴したが、近く運輸局から運賃変更命令が出る見込みだ。遠距離運賃のアップを先送りしたり、深夜・早朝割り増しの廃止を申請したりするなど、乗客つなぎ留めを図る動きも続く。
■納得いかぬ業者、国を提訴
20日、初乗り500円で営業する「壽(ことぶき)タクシー」(大阪府東大阪市)が、運賃変更命令を行わないよう求める訴訟を大阪地裁に起こした。浦木山峰壽(みねとし)社長は「価格は会社が決めるが、買うかどうかを決めるのは消費者。法の名の下で運賃を強制するのはおかしい」と憤る。
4月28日には同じワンコインの「ワンコインドーム」(大阪市西区、吉岡和仁社長)も提訴した。訴状では「公定幅運賃は違憲で、重大な損害を被る」「値上げでワンコインブランドが消滅し、利益が大幅に低下する」などとした。
「運賃を上げる理由が全くないのに」。5月1日、大阪市内で会見したエムケイ(京都市)の青木信明社長は強調した。大阪、神戸、滋賀などのMKグループと合同で大阪地裁に提訴した。現状から公定幅下限に運賃を変えると、10〜27%の値上げだ。特に主戦場の京都は消費増税前と比べて3割増になる。「我々にも値上げの時期はあるが、いきなり3割も上げられない」と首をひねる。
MKはタクシー規制に反対する訴訟を10件起こし、負け知らずだ。「難しい訴訟だが、公定幅がなぜできたのかを訴訟でつまびらかにしたい」と話す。
■遠距離割引、値上げ断念
大阪タクシーのもう一つの名物が、「5千円を超えた分は5割引き」の遠距離割引制度(5・5遠割)だ。府内のタクシー会社の半数が4月から「7千円超3割引き」への値上げを近畿運輸局に申請したが、直前に全社が断念した。運賃据え置きの社に客を奪われることを恐れたためだ。
業界団体の大阪タクシー協会によると、5・5遠割はタクシー規制が大幅緩和された2002年、ワンコインに先んじて始まった。当時は低運賃の一部の会社が大口客を奪っていた。その対抗策で遠割が登場し、拡大。近畿運輸局によると、現在は大阪の法人タクシーの9割近い184社が「5・5」だ。
好評だったが、横並びで利用客が分散し、遠距離客を乗せるほど運転手の歩合給の効率が悪くなった。しかも帰りは空車だ。運転手の組合を束ねる交通労連関西地方総支部の河田篤司書記長は「昔は遠距離が『一発の魅力』だったが、今は割引がない初乗りで回数を稼ぐ方が効率的だ」と説明する。遠距離客の利用は総営業収入の5%以下だったこともあり、値上げの機運が高まった。
2月以降、大阪の法人の半数にあたる107社が、消費増税でメーターの設定変更が必要な4月1日からの「5・5」の値上げを申請した。大半は「7・3」(7千円を超えた分は3割引き)への変更だった。しかし、大手グループが「5・5」を継続したため、各社は慌てて取り下げたという。
大阪タクシー協会の足立堅治専務理事は「業界は労使とも遠割をやめたい気持ちは同じだが、客を奪われるリスクを考えてしまった」と振り返る。消費税率が10%となる来年10月に再び、「5・5」存廃の動きが活発化しそうだ。
■深夜割増の廃止申請
運賃競争は大阪だけではない。京都では4月までに法人22社が深夜から早朝(午後11時〜午前5時)の割増運賃の廃止を申請した。京都ではすでに6社(659台)が深夜割り増しを廃止していたが、この22社を含めると府内の法人タクシーの7割を占める。割増運賃の引き下げは法改正での規制の対象外で、各社が目を付けた。
近畿運輸局によると、申請はエムケイのほか、弥栄(やさか)自動車や都タクシーなど大手を含む。審査には半年かかり、新運賃は早くても7月下旬となる。(柳谷政人)
■「稼ぐなといわれてるようなもん」
5月のある夜。大阪・北新地はいつものようにタクシーがずらりと並んだ。運転手の男性(72)は「夜は消費税8%になって遠距離が特に減った。みんな終電までに帰る。昼は影響を感じないのにね」とこぼす。
大阪は全国トップ級のタクシー激戦区だ。法人タクシーの台数は国の減車政策で08年度の1万8775台から12年度の1万5676台に2割近く減ったのに、1台あたりの運送収入も4%減の1日2万7886円。ピークだったバブル時と比べると6割程度しかない。
運転手の平均年収は約300万円。もっと稼ぎたくても、規制強化で1日あたりの走行距離に上限ができた。「『稼ぐな』と言われてるようなもん。我々みたいな年金生活者しかタクシーはできんよ」と話した。
別のベテラン運転手(63)は、かつて格安タクシーに得意先の大企業を奪われたことがある。「どこも他社より高くして、客が離れるのが怖い。遠割でもワンコインでも、運転手は勝つための『武器』が欲しいんです」と話した。
■規制緩和に不向き
《タクシー規制に詳しい安部誠治・関西大教授(交通政策論)の話》 マイカー所有と鉄道整備の影響でタクシー利用は減り、1970年と比べると今は4割。格安会社は一人勝ちしたが、客を奪われた他社は運転手の給料カットや新車導入の延期で生き残ったため、全体的なタクシーの質が悪化した。敗者が淘汰(とうた)される市場原理が働かず、そもそも規制緩和に不向きだった。
企業努力する格安会社の憤りは理解できるが、業界全体の今後を考えると運賃競争は難しい。遠距離や深夜の運賃を下げる動きも、利用者にはありがたいが、再び自らの首を絞めることにならないか。
◇
〈公定幅運賃〉 1月に改正タクシー適正化・活性化特別措置法が施行され、大都市圏など全国155の地域(近畿は18地域)で国が定めた公定幅運賃(大阪府内で初乗り660〜680円)が4月から義務化された。各運輸局は公定幅を下回る各社に指導や是正勧告を行い、従わない業者には運賃変更命令や車両の使用停止処分を出し、それでも変更しないと事業許可を取り消す。近畿運輸局は4月22日に法人7社と個人16事業者に是正勧告。5月8日には未是正の法人6社と個人14事業者に弁明書の提出を求めており、23日以降に各事業者に対して運賃変更命令を出す。
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