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FRBのデータで作成
中国によって攪乱されている米国の長期金利
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20140520-00035503/
2014年5月20日 11時43分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
米国の長期金利が低下を続けています。5月15日には10年物国債の利回りが2.49%と2.5%を割り込んだのだとか。
では、何故ここに来て米国の長期金利は下がり続けているのでしょうか?
これについて、先日、NHKは概ね次のような解説をしていました。
・世界的に低金利が当面続くという見方が広がった→ 各国で国債を買う動きが強まった→ アメリカの長期金利が半年ぶりの水準まで低下した
では、何故世界的に低金利が当面続くという見方が広がっているのか?
・イングランド銀行のカーニー総裁が利上げを急がない考えを示したと受け止められたから
・米国の物価上昇率がFRBが目標とする2%を下回る状況が続き、ゼロ金利政策が長期化するのではないかという見方が強まっているから
どう思いますか?
米国ではインフレ率が上がる気配がないということのようですが、だとすれば、予想インフレ率に変化が起きているのでしょうか? つまり予想インフレ率が下がる‥もっと言えば、米国でもかつて日本が経験したようなデフレの懸念が強くなっているので、だから長期金利が低下しているということなのでしょうか?
確かに日本は先進国のなかでは一番物価が安定しており、また、そのために長期金利は1%を下回るような状態が長く続いているのです。
では、米国の長期金利はどのように推移しているのでしょうか? グラフをご覧ください。
米国の10年物国債の利回り、同じく10年物の物価連動国債の利回り、それに予想インフレ率を示しています。
通常の国債の利回りと物価連動国債の利回りの差は、予想インフレ率となります。何故だか分かりますか?
国債の利回り=名目金利=実質金利+予想インフレ率
物価連動国債の利回り=実質金利
以上の関係にあるので、10年物国債の利回りから同じく10年物物価連動国債の利回りを差し引くと予想インフレ率となるのです。
では、米国の予想インフレ率に最近大きな変化が表れているのでしょうか?
そのようにはどうしても思えません。極めて安定的に推移しているのです。従って、ここにきて米国においてデフレ懸念が強まっているとは言えないのです。つまり、最近物価上昇率が低下してきているからというのは、長期金利低下の理由とはなり得ないのです。
但し、そうはいっても今年の1月以降、米国の長期金利が低下基調にあるのは間違いがないのです。では、何が米国の長期金利を低下させているのでしょうか?
メディアでは全然報じられていないようですが、私は中国の影響があると考えます。
つまり、中国が米国債を最近大量に購入している可能性があり、そのことが米国債の利回りを低下させているという推測が成り立つのです。
では、何故そのようなことが言えるのか?
貴方は、今年に入ってから中国が人民元のレートを切り下げていることをご存知でしょうか? つまり、積極的に人民元売りドル買いを行い、そうして得たドルで米国の国債を購入しているのです。
グラフをみれば、今年に入って人民元のレートが一気に低下しているのがお分かりになると思うのです。
では、何故中国は人民元のレートを切り下げ始めたのか?
それは、最近中国の輸出が奮わないので、輸出を下支えするために人民元売りドル買いの介入が必要だと判断したのでしょう。誰もが知っているとおり、中国の経済成長のエンジンは輸出である訳ですが、その輸出が最近では、前年比で見て横ばい程度でしかないのです。
ということで、米国は今年に入ってから量的緩和策の縮小に着手をし、そのため長期金利が少しずつ上がることが予想されていたのに‥現実にはむしろ中国の為替政策のせいで長期金利が下がり続けているのです。
まさに世界経済はボーダレスの様相を呈していると言えるのです。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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