12. 2014年5月20日 18:24:41
: rUTw8Q4XfU
■安倍政権が移民政策 移民で成功した国はない。安倍政権が、「外国移民年間20万人受入」という政策の検討を始めた。2014年3月6日に、政府の経済財政諮問会議「成長・発展ワーキンググループ」が、少子高齢化に伴って減少する労働力人口の穴埋め策として、「毎年20万人の外国移民を受け入れる」ことを提言したのだ。 また2014年3月16日には、自民党が外国人労働者の受け入れ拡大を求める提言案をまとめた。外国人の技能実習制度について、現在の最長3年間の受け入れ期間を5年に延長することが柱である。政府は「人手不足」「少子化」等を口実に、着々と日本に外国からの移民を招き、労働市場に「外国人労働者の供給」を増やす施策を打とうとしているのだ。 現在、ドイツやスウェーデンなど欧州主要国では、外国移民(および子孫)が人口に占める割合が20%を超えてしまい、各地で軋轢(あつれき)が高まっている。外国移民の多くは現地語を話せず、当然の話として失業率は極端に高い。 移民たちは社会保障にただ乗り(フリーライド)し、あるいは犯罪率を押し上げ、ときには暴動を起こす。2013年5月には、スウェーデンの首都ストックホルムで暴動が発生。暴動が起きた地区の人口の8割(!)が、中東やソマリアなどからの移民とその子孫たちだった(ちなみに、スウェーデンの犯罪率は日本の13倍だ)。 逆に、元々の「国民」側が反発を強め、「イスラムによる乗っ取りから西欧を守る」と称して大規模テロ事件を起こしたノルウェー(2011年7月22日)のようなケースもある。 外国移民の多くは現地に馴染まず、特定のコミュニティで「独自の文化」「独自の言語」を使って生活する。一国のなかに「別の国」ができたような有り様になるわけで、当然ながら「国民」との摩擦や衝突が発生するのである。 ちなみに、台湾は支那大陸から中国人労働者を受け入れ、「台湾国民」の実質賃金が上昇しなくなってしまった。結果、若者が子供を育てられなくなり、少子化が進んだ。台湾の少子化は「世界一」の水準なのだが、それを受けて政府が何を言い出したかと言えば、「少子化で労働者不足であるわけだから、中国からの移民を増やそう」である。 今後の台湾が、問題になっている「台中サービス貿易協定」を批准し、中国からの移民を増やすと国民の実質賃金がさらに下がるために少子化がますます進み、またもや「移民を増やそう」という話になる。最終的には、台湾という国家が中国に乗っ取られ、共産党に飲み込まれることになるだろう。 日本もドイツやスウェーデン、台湾と同じ道を歩むのだろうか。 ■経済自虐史観の愚 安倍総理は経済的自虐史観に染まっている。すなわち、日本は「グローバル市場」に頼らなければ、あるいは「外国企業」の力を借りなければ経済成長することができない、と思い込んでいる可能性が高いのだ。 無論、総理の心中を正確に読み取ることはできないが、少なくとも安倍政権が「第三の矢」として打ち出した成長戦略は、ほぼ全てが経済的自虐史観に基づく「日本のグローバル化」政策だ。あるいは「発展途上国・日本」用の処方箋(しょほうせん)なのである。 典型的な政策が「国家戦略特区」である。国家戦略特区とは、特定の地域を「特区」として指定し、各種の規制緩和を実施。外国企業「様」に投資していただいて経済を成長させようという、典型的な発展途上国型政策だ。 たとえば、2014年3月末に「創業のための雇用改革拠点」として特区認定された福岡市は、「グローバル・スタートアップ国家戦略特区」という構想を打ち出している。正直、名前を聞いただけで頭が痛くなるわけだが、中身は輪をかけて酷い。 福岡市は「解雇規制の緩和」「法人税の減免」「外国人の在留資格要件の緩和」といった各種の規制緩和により、外国企業「様」にお越しいただき、経済を牽引していただこうと考えているのだ。さらに、掲げられたコンセプトが、「雇用を産み出す起業(スタートアップ)へのチャレンジを応援する社会へと日本を再構築する」 である。福岡市は開業率を14%引き上げ、グローバルに活躍するベンチャー企業や新規事業を創出するとのことである。まさに、発展途上都市「福岡」という印象だ。 ■開業率は低くて当然 そもそも勘違いしている日本国民が多いと思うが開業率は発展途上国であればあるほど高くなる傾向がある。発展途上国の平均的国民が起業家になる確率は30%であるのに対し、先進国の場合は12.8%だ(ハジュン・チャン『世界経済を破綻させる23の嘘』徳間書店より)。 考えてみれば当たり前の話で、経済が成熟し、労働者が各種の「労働者としての権利」を保有する国では、起業家になる国民は減る。何しろ、その必要がないのだ。 逆に、雇用が不安定であればあるほど、国民は起業を強いられる。結果的に開業率は上昇するが、それが果たして「国民の幸せ」に繋がるのだろうか。 主要国の起業活動率(2010〜2012年平均) 公益財団法人福岡アジア都市研究所 http://ftp.urc.or.jp/jigyou/jyouhousen/backnumber/documents/FG07ver1.1.pdf 上記URLの5頁は、2010年〜2012年までの主要国の起業活動率をグラフ化したものだ。起業活動率とは、18歳〜64歳人口100人当たりの「起業準備者」と「創業後、3.5年未満企業経営者」を合計したものである。首位のチリは、18歳〜64歳までの人口のうち2割以上が起業準備者であるか、もしくは創業後、3.5年未満企業経営者というわけだ。なかなかすごい話である。 日本国民から見れば「ベンチャービジネスが盛ん」に思えるアメリカも、起業活動率は10%強に過ぎない。イギリス、フランス、スイス、ドイツ、イタリアといった西欧の先進国は、軒並み起業活動率が低い。 上記URLの5頁を見ると、単純に「開業率を14%高める」といった福岡特区の目標がいかにバカげたものであるかが分かるだろう。福岡市が本気で開業率を高めたいならば、雇用を不安定化し、リストラを盛んにすればいい。 ■現状認識から間違い というよりも、福岡市は「特区」として解雇規制の緩和等を推進するわけだ。解雇規制の緩和とは、企業が人員を解雇しやすくするという話であり、間違いなく福岡市の開業率上昇に貢献するだろう。 「それで本当に良いのだろうか」 と一歩引いて、落ち着いて考えてみる必要がないだろうか。 ちなみに、福岡市が2013年9月6日に提出した「国家戦略特区ワーキンググル−プ提案」には、 「若い企業が雇用をつくり出すということがあるにもかかわらず、開業率で見ると、アメリカ、イギリス等々と比較しても、日本は4%と非常に低い開業率です。つまり社長になって会社をつくるというチャレンジャーが少ないというのが、日本の現状でございます」 と書かれている。 繰り返すが、落ち着いて考えてほしい。現在の日本の失業率は、主要国の中では断トツの「低さ」である。アメリカやイギリスは勿論のこと、上記URLの5頁に登場する国々の中では我が国より失業率が低い国はスイスただ1国だ。 別に、若い企業が雇用を作り出すということが「ある」こと自体を否定したいわけではない。それは勿論、若い企業が雇用を作り出すケースもあるだろう。 とはいえ、福岡市は日本よりも起業活動率が高いアメリカやイギリスが、なぜ我が国よりも失業率が高いのか、説明する必要があるはずだ。起業が増えれば雇用が改善する、といった単純な話が成り立つならば、日本の失業率は米英両国を上回っていなければならない。ところが、現実は真逆だ。 上記URLの5頁を見る限り、起業活動率が高ければ失業率低下するといった現象は確認できない。そして、ハジュン・チャンの言う通り、発展途上国のほうが先進国よりも起業活動率が高い傾向が見受けられる。 結局のところ、福岡市の「特区構想」担当者たちは、経済的自虐史観に感染してしまっているのだ。すなわち、 「日本はアメリカやイギリスよりも開業率が低く、遅れている。だから、ダメなんだ。日本の開業率を引き上げなければ、他国には追いつけない。だからこそ、特区を設置し、解雇規制を緩和し、法人税を減免し、外国企業に投資してもらわなければならない」 という誤った思い込みをしているわけである。現実には、開業率の高低で「進んでいる」「遅れている」を決めてしまうと、米英両国ですら「中国より遅れている」という話になってしまう。 ■法人税減税も外資のため 安倍総理は法人税のさらなる引き下げも推進しているわけだが、理由は「国際相場における競争のため」だそうだ。安倍総理は2014年4月9日の新経済連盟(新経連)の会合において、 「今年、さらなる法人税改革に着手する」 と法人税の実効税率引き下げに改めて意欲を示し、 「(法人税に関し)国際相場から見て競争的なものにしないといけない」 と強調したのである。 要するに、法人税を「国際相場から見て安くする」という話だ。我が国はまるで発展途上国のごとく、 「法人税を引き下げ、外国からの投資を呼び込まなければ成長できない」 というわけである。まさに、経済的自虐史観だ。 我が国は、世界最大の対外純資産国である。すなわち、お金持ち国家なのだ。さらに、国内に企業も、技術も、人材も、そして資金もふんだんに蓄積されている。問題は、これらの経済リソースがデフレで「働いていない」だけなのである。 外国企業に経済成長を委ねる必要など全くない我が国が「法人税の国際的な引き下げ競争」に参加するわけだから、あまりにも的外れである。 そもそも、長期のデフレーションで、日本企業すら「儲からない」という理由で投資しない国に、法人税を引き下げたところで外国企業が投資を増やすはずがない。また、政府自ら投資(公共投資)を絞り込み、 「我が国は成長しません」 と宣言しているも同然の国が、法人税を少々引き下げたところで、外国企業が長期的な投資をするわけがない(短期的な証券投資は増えるだろうが)。 そして、極めつきと言っても過言ではない安倍政権の経済的自虐史観的な政策が、外国移民の受け入れを含む労働規制の緩和である。 安倍政権の労働政策は一貫して間違っている。何しろ、15年以上もの長期にわたり、実質賃金が下がり続け、国民が貧困化に苦しみ続けた我が国において、さらなる実質賃金切り下げの政策を打とうとしているのだ。 ■愕然とする政府の方針 日本政府は2014年3月11日、企業が派遣社員を受け入れる期間の上限を撤廃する労働派遣法改正案を閣議決定した。改正が国会で成立すると、企業側は1つの業務について「人が交代すれば」派遣社員に任せ続けることが可能になる。 また、企業が離職を余儀なくされる従業員について、再就職を斡旋した場合に助成金を支出する労働移動支援助成金の仕組みが、これまでの中小企業対象から大企業にまで支給対象が広がった。 派遣社員に関する規制をさらに緩和して企業側のリストラや人件費圧縮を容易にするわけで、日本国民の実質賃金は下落方向に向かわざるを得ない。「雇用の流動性強化」「労働規制の緩和」とは、日本国内の労働市場の「労働者同士の競争」を激化させる政策なのだ。競争が激しくなれば、当然ながら実質的な賃金は切り下げられていく。 当たり前だが、日本の労働市場に「外国人労働者」が大量に供給された場合も、日本国民の実質賃金は下がらざるを得ない。移民推進派は「100年後の人口維持」云々と屁理屈を述べているが、実際には「国内の人件費の圧縮」が目的なのである。彼らのプロパガンダには、十分に注意してほしい。 安倍政権の「実質賃金切り下げ」を目的とする政策の推進ペースは、半端なく速い。総理は2014年4月4日、「家事支援」についてまで外国人労働者を活用せよとの「指示」を出した。 経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議において、「女性の活動推進の観点から、外国人材の活用について検討してもらいたい」と述べ、家事などの分野で外国人労働者の受け入れを検討するよう指示したのである。 それ以前の2014年3月19日には、安倍総理は専業主婦がいる世帯の所得税を軽減する配偶者控除の縮小・廃止について検討するよう指示している。 私は「自分は保守派である」などと名乗ったことはなく、名乗る気もない。「保守論」について長々と語るつもりもない。とはいえ、安倍総理はいわゆる「保守派」と呼ばれている政治家の1人ではなかったのか。 保守的な政治の定義は、「過去から受け継いできた文化、伝統を大切にし、『国民国家』である日本国を大事にし、環境に合わせて制度をメンテナンス(保守)していく」ではないか。 現在の安倍総理の労働政策に関する「指示」の数々は、本当に「国民国家、日本」を大切にしたものだろうか。我が国の文化や伝統、歴史を将来に引き継ぐという「意志」が込められているのだろうか。 とてもそうは思えない。 繰り返しになるが、現在の安倍政権の労働政策は、一貫して間違っている。無論、政策の目的を「経世済民」(国民を豊かにする)ではなく、グローバル企業の人件費削減による「国際競争力」(価格競争力)の強化や、竹中平蔵氏が取締役会長を務めるパソナ・グループなど、人材派遣会社の「利益拡大」とするならば一貫して正しいわけだが、安倍総理は一体、「誰のための政治」をしているのだろうか。 ■「瑞穂の国」はどこへ 安倍総理が首相の地位に返り咲く前に語っていた「瑞穂の国の資本主義」とは、一部の大手グローバル企業や産業競争力会議の「民間議員」とやらが会長・社長を務める特定企業の「利益を最大化する」という話だったのか。 そもそも、扶養控除の縮小・廃止の検討指示にせよ、「女性の活躍推進」のための外国人材の活用指示にせよ、安倍総理は「働く女性は素晴らしい。専業主婦は悪い」という価値観でも持っているのだろうか。そうであるならば、随分と差別的な話だ。 個人的には、専業主婦だろうが、キャリアとして働いている女性だろうが、輝いている女性は輝いているし、輝いていない女性は輝いていない。女性の価値観を大切にして、それぞれが主婦なり、仕事をするなり、好きな道を選ぶことが可能な環境を作るというのならともかく、「女性は仕事に出るべき」という価値観に基づく政策を一方的に押し付けようとしているわけだから、放慢であると言わざるを得ない。 現在の日本では、確かに土木、建設、運送、IT開発等で人手不足が発生している。だが、求められているのは「日本語に基づく円滑なコミュニケーションができる専門職」なのである。 普通に考えて、30万人近くも存在する「働けるにもかかわらず、生活保護を受けている日本国民」(あるいはNEETと呼ばれる若い世代)をトレーニングし、資格を取得させ、労働市場に送り出すべきだと思うわけだが、なぜいきなり女性やら外国人労働者やらといった話が浮上してくるのだろうか? ■「日本人」を活用せよ 労働市場から退出中の「日本国民」を「人材(即席であっても)に育成するためならば、それこそ政府はいくらお金を使っても構わない。 例えば、働けるにもかかわらず生活保護を受けている30万人の「人材予備軍」に対し、1人100万円のコストでも「僅か」3000億円の支出で済む。 この3000億円は100%、「GDP」(所得)になる支出だ(当たり前だが、100万円は「手当」ではなく、生活保護受給者がトレーニングを受けた際に費用を負担する、といった形を取らなければならない。そうすれば、トレーニング・サービスを提供した企業の所得になる)。 3000億円のコストで、即席ではあっても「人材」に成長した、あるいは人材に成長する可能性がある「日本語が堪能」でコミュニケーション上の問題も起きない「専門職30万人」を、需要が拡大している分野に送り出すことができるのだ。そして、需要が拡大している業界を中心に賃金水準が上昇していけば、日本国民は(1996年を最後に)20年近く経験していない、 「実質賃金が上昇する国民経済」 を取り戻すことができる。実質賃金が上昇するとは、ずばり「国民が豊かになる」という話だ。 ところがこの状況で、外国人労働者を国内の労働市場に「供給」してしまうと、国民の実質賃金は間違いなく抑制される。すなわち、国民が豊かになれない。 第二次安倍政権が発足して以降すら、2013年4月を例外に、我が国は実質賃金が減り続けた。さらに、 「実質賃金は上がらないほうがいい。そのほうが企業の国際競争力が上昇する」 と主張している人々、あるいはそう信じ込んでいる政治家により、「正しい労働政策」ではなく、労働者の実質賃金を引き下げる労働市場の競争激化政策が推進されていっているのが日本の現状だ。 ■一切の妥協を許すな この動きには、断固として反対していかなければならない。最終的には、もちろん「移民拡大」が彼らのゴールであるため、一切の妥協(技能実習期間を2年間延長するだけなら仕方がない、など)をしてはならない。 日本は「日本国民が働き、日本国民の需要を満たし、日本国民の所得が増えることで成長する」国家であるべきなのだと書くと、いきなり「鎖国するのか!」などと極論で反論されてしまうので「基本的には」としておくが、いずれにせよ、日本政府は「国民が豊かになる経済」とはいかなるものか、改めて考え直す必要がある。 結局のところ、 「経済成長をどこで達成するのか」 という大本の思想の問題なのである。 日本経済について、需要面で、 「グローバル市場に頼らなければ、国内需要では成長できない」 と考え、供給面で、 「外国企業に投資をしてもわらなければ成長できない」 と自虐的な発想に囚われていた場合、法人税引き下げや特区構想、各種の実質賃金切り下げ推進は「正しい政策」になってしまう。 それに対し、日本は「内需中心に成長できる」と考えているならば、実質賃金はむしろ引き上げるべきだ。もちろん、外国企業を優遇する特区や法人税減税(無条件の法人税減税)は「間違った政策」ということになる。 大本の思想が間違っていると現状について正しい認識ができず、的外れな政策ばかりを推進する羽目になる。現在の安倍政権の「第三の矢」関連の政策を見る限り、総理の「大本の思想」が歪んでおり、経済的自虐史観に侵されていると断ぜざるを得ない。
|