http://www.asyura2.com/14/hasan87/msg/789.html
Tweet |
時給2500円の最低賃金制度を導入しようとしたスイスの労働者は幸せか?
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20140519-00035461/
2014年5月19日 11時3分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
スイスで18日、時給を22スイスフラン(2500円)にしようという最低賃金制の導入に関する国民投票が行われたのだ、とか。
結果は、3/4以上の国民が反対したために否決された、と。
こんな話を聞いて、我が国の労働者はどう思うのでしょうか?
スイスの労働者が羨ましい? それとも‥
スイスの労働者が羨ましいと思った人は、恐らくスイスの物価高についてご存知ないのだと思うのです。つまり、そのようにスイスの労働者を羨ましく思う人は、日本の物価を前提し、時給が2500円だったらどんなに楽な生活ができるかと想像する、と。
では、実際、スイスの物価はどうなのか?
実は、スイスは世界一物価が高い国として有名なのです。
例えば、卵の価格は、6個で450円もするのだとか。日本だったら100円しないかもしれませんし、割と高級な卵でも6個で200円か、250円程度ではないのでしょうか。つまり、卵の価格は、日本よりも少なくても2、3倍はするのです。
ビッグマックは、セットのメニューで約1000円だとか。日本では500円程度ですから、これは約2倍。
市電やバスの初乗りは、約400円もするのだとか。これは日本の3倍程度。
それから、医療費や保険料なども高いので有名なようです。
他方で、ワインやビール、それにチョコレートなどはむしろ日本よりも安いようですから例外はある訳です。
いずれにしても、スイスは物価が高いというのが世界の共通認識になっており、従って、スイスの労働者の時給が仮に2500円であっても、日本よりも確実に楽な暮らしができるとは限らないのです。
というよりも、スイスでは時給が最低でも2500円ほどなくては普通の生活を営むことができないとの思いが労働者側にあるので、今回の最低賃金制の導入が提案されたということなのです。
ということで、単にスイスの時給の相場が我が国と比べて相当に高いように思われても、そのことだけでスイスの労働者の生活が楽かどうかを判断することはできないのです。
ところで、結果としてこの最低賃金制の導入は否決された訳ですが、それはスイスにとって良かったのか、それとも悪かったのか? どう思います?
答えは、人によって区々であるでしょう。
最低賃金制度を導入することによって労働者の購買力を高めることができれば、むしろ消費が活性化し経済がより発展すると主張する人もいるでしょう。
その一方で、最低賃金制度を導入すれば、むしろそうした最低水準の賃金を支払う能力のない企業は労働者を雇うことができず、雇用が減る可能性があるという考えもあるのです。
ただ、いずれにしても、仮に最低賃金制度を導入した結果、物価が上がったら労働者の生活は思ったほど楽になることはないのですが‥そのことについて、最低賃金制度を支持する人々はどう考えるのでしょうか?
というのも、最低賃金制度を支持する人々でも、まさか物価を統制すべきだなんて主張することは普通はないからです。でしょう?
だとすれば、物価が自由に決まる以上、最低賃金を規定してもその効果には自ずから限度があるのです。
最後に大事なことを指摘したいと思います。
仮に時給を2500円以上にするという最低賃金制度が導入されたとします。つまり、経営者は、労働者を雇えば最低1時間当たり2500円以上の賃金を支払う必要がある、と。
で、その一方で、どのような労働者も1時間当たり最低2500円以上の付加価値を生む出してくれるのであれば問題はないのですが‥しかし、労働者の能力は個人によって区々です。ですから、例えばどんなに頑張っても1時間当たり2000円分とか1500円分の働きしかできない労働者であれば、経営者としてはそのような労働者を雇うことができなくなってしまうのです。
もし、そのように能力の劣る労働者に対して、時間当たり2000円とか1500円を支払って雇うことが許されるのであればその人たちは働く場所を与えられる訳ですが、最低賃金制度の導入によってむしろ雇用の機会が奪われてしまうことがあるという事実を見逃してはいけないのです。
私が、このようなことを言うと、でも、時給2000円とか1500円では十分な生活ができないではないか、と批判する向きがあるかもしれません。
でも、仮にそうであっても、それは雇用主に責任があるのではないのです。何故ならば、雇用主は慈善事業で商売をしている訳ではないからです。
雇用主が独占的とも言えるような立場を悪用して、不当に安い賃金で労働者を働かせているような場合は別ですが、そうではない限り賃金を国が規制するのは適当ではないのです。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。