10. 2014年5月16日 02:07:53
: nJF6kGWndY
過剰サービス(労働)は、賃金や職種、地位に依らず、多くの日本人に共通している http://diamond.jp/articles/-/52756 長時間労働の一因は“目的”より“やり方”へのこだわり ――女性が疲れる社会ニッポンへの警鐘【後編】
日本人独特の文化価値観が労働偏重につながって生み出した「国民総残業社会」。今日、そのしわ寄せが、特に女性に重くのしかかっています。前編に引き続き、ドイツ人のAさんとインド人のBさん2人の対話を通じて、日本が真に“女性が輝く社会”になるための道筋を探っていきます。 HOW(やり方)にこだわる 文化価値観が長時間労働につながる Aさん「日本人の長時間労働の原因の1つに、HOW(やり方)に固執する文化価値観もあると思う」 Bさん「そういえば、日本人に仕事をお願いした時、彼らは、“WHY――なぜ、何のためにやるのか?”よりも、“HOW――どうやるのか?”をえらく気にしていたよ。どの様式にどう書いて誰にどうやってて提出したらいいのか、と何回も聞いてきた」 Aさん「逆に、日本人が人に何かをお願いする時は、WHYがなくてHOWだけ説明がある場合が多い」 Bさん「そこで頼んできた相手に、WHY?と聞くと、答えが返ってこないか、曖昧だったりするんだよね」 Aさん「それはたぶん、その人自身も知らないか、考えたこともないからだろうね」 Bさん「もしかしたら……上司からWHYの説明なしにこれを頼まれた。その上司も、そのまた上司からWHYの説明なしに頼まれた……つまり指示の流れの中で、誰もWHYを深く考えずに、HOWだけがくっついてきた可能性もあるね」 Aさん「いずれにせよ、日本人は、HOW(やり方)と、前述した組織のルール、しかも細かいものを必要とする。そして、それに従おうとする」 Bさん「だから日本の組織では、細かい業務マニュアルが多くなり、それを作ったり改訂したりするのに莫大な労力、時間、コストがかかるんだね」 Aさん「それで全体の業務効率が良くなればいいが、問題は、マニュアルが劣化していることだよ。世の中の激変に対応しきれていない。時代錯誤のやり方が残っていたり、業務の現実に即した新しいやり方が加わっていないことがある」 Bさん「じゃあなぜ、それに気づいた人が、自分や組織のために、劣化したマニュアルを変えようとしないの?」 Aさん「3つ理由があると思う。1つは、前述のとおり日本人は組織のルールに厳密に従う。例え劣化していてもマニュアルはルールだ。 2つ目は、劣化そのものに気づかいない人がいる。長年同じ会社の中でのマニュアル作業に慣れてしまい、『なぜ、これやらなきゃならないの?』『本当にこれでいいの?』『他にいいやり方があるのでは?』という批判的思考をしないからだろう。 3つ目は事なかれ主義だ。ルールに従ってさえいれば、誰からもお咎めを受けない。自分の立場が悪くなるリスクを負って、ただでさえ重たい業務量をさらに増やしてまで、ルールを変えてやろうという元気と勇気が湧かないのだろう」 Bさん「なるほど、本来、作業効率を高めるための業務マニュアルが、逆に余計な意味のない仕事を増やし、長時間労働に拍車をかける……なんと皮肉な話だろう」 疲れて「やってくれない」男たち Aさん「日本の男性は疲れている……これは僕が初来日の時に強く印象に残ったことの1つ。電車でうたた寝する人は多いし、会議など仕事中でも船を漕ぐ人がいる。夜の駅構内や街角にはスーツ姿で泥酔して寝ているサラリーマン……それに全体的に元気がないと感じたよ」 Bさん「僕も同じ印象を持ってるけど、実は同じようなことを言う外国人や、海外在住で一時帰国した日本人は多いね。やっぱり連日の残業や満員の通勤電車で疲れ切っている人が多いってことかな」 Aさん「それで帰宅も遅いから、日本の男性は、家業(家事、育児、介護等)をほとんどしない」 Bさん「日本で国際結婚(特に、夫が日本人で妻が欧米人の場合)が長く続かない最大の理由の1つだね」 Aさん「例えば、OECD(経済開発協力機構)が今年3月7日に公表した時間の使い方に関する国際比較データがある。これを見ると、日本人男性(16〜64歳)が家業(家事・買物・育児・介護)に費やす時間は、1日平均54分だけ。OECD26ヵ国中、韓国とトルコの男性に次いで3番目に少なく、また150分前後と最も多い英国、デンマーク、フランスあたりの男性に比べると3分の1程度」 Bさん「ところで、このデータで、最も多く仕事するのはどこの国の男性なんだい?」 Aさん「トップは言わずもがなの日本男児で、426分(1日平均、勤務時間と通勤時間の合計)。これにメキシコと韓国が続く。ちなみに最も少ないフランス人男性は、199分で日本人の半分以下」 Bさん「ということは、毎晩帰りが遅く疲れて家のことをやらずに一人先に寝てしまう日本人男性と、一緒に夕飯を食べ家事も分担し共に寝てくれる旦那像を持つフランス人女性では、国際結婚が成立する可能性はほぼゼロってことだ(笑)」 日本女性はスーパーウーマン Aさん「さて、今度はOECD国際比較データで日本の女性の現状を見てみよう。まず、最初に注目すべき点は、29ヵ国の女性(OECD26ヵ国+中国・インド・南ア)の中で、最も睡眠時間が短いのは日本の女性(1日平均456分)だそうだよ」 Bさん「なるほど睡眠時間を削って頑張ってるんだ。それで家業(家事・買物・育児・介護)の時間は?」 Aさん「29ヵ国中7番目で288時間、これは、最も短いノルウェー人女性の2倍で、アメリカ人女性の1.5倍。ちなみにベスト3は、メキシコ、インド、トルコの女性」 Bさん「なるほど、家での負担がかなり大きいんだね。それで仕事(勤務+通勤)の時間は?」 Aさん「29ヵ国平均の184分を上回る199分。隣国の中国人女性(266分)や韓国人女性(209分)より少ないけど、欧米の6割以上の国々の女性平均より多い」 Bさん「なるほど、日本の女性はスーパーウーマンだ。睡眠は最短で、家でも外でも世界有数の働き者」 Aさん「つまり日本は男女不均衡社会。昔のように男は仕事で女は家業なら、まだ均衡がとれていたけど、今は、男は仕事、女は仕事+家業だ。天秤に例えるなら、女性が重たく床につく寸前まで下がり、男性が上に軽く浮いてる感じ」 Bさん「ということは、将来、管理職も含め女性の社会進出がもっと進んで、@女性の仕事時間が現状の1日199分から男性の426分に近づく、A男性は今と変わらず長時間労働で家のことはほとんどしないと仮定すると、さすがのスーパーウーマンも疲れ切ってしまうね。睡眠、食事・趣味、人付き合い等の時間を削ったとしても限界はあるし……」 社会の根っこを理解して 女性が輝く社会づくりを! 「役員の女性割合 明記義務づけ検討へ」との見出しで、日本政府が、上場企業などに対し、有価証券報告書で役員に占める女性の割合の明記義務づけを検討しているとの報道がありました(NHK、4月28日)。政府は、2020年までに企業の役員や管理職などに占める女性の割合を30%程度にすることを目指すものの、現状、役員に占める女性の割合は、フランスが28%、アメリカが16%に対し、日本の上場企業では1%と大きく差があると解説が続きます。 さて、これら女性役員比率の情報源がどこなのかは不明ですが、いずれにせよ、他国と比較する場合は、こうした数字の背後にある「根っこ」の違いを十分に認識する必要があります。根っことは、国民の人生観、労働観、歴史観、男女の関係や役割、個人の権利や社会の公正に対する姿勢などの文化価値観などです。 例えばフランスでは、国や会社がワークライフバランスを口にしなくとも、個々人でバランスをとります。会社は社員の残業をあてにせず、社員は残業手当をあてにして仕事はしません。残業しても年間平均50時間と微々たるものです(フランス労働雇用厚生省2010年度統計−従業員10人以上の民間企業で働くフルタイム雇用社員)。 また彼らは、個人の権利は主張し行使します。例えば5週間の年次有給休暇も、ごく一部の例外を除き完全消化です。これは、社長も平社員も、正社員も契約社員も全労働者に与えられた権利だからです(逆に雇用主は、これを全社員に与え完全消化させる義務を負い、仮に未消化社員の存在が発覚した場合は懲罰が科される)。 さらに彼らは、会社で不公正や理不尽なことがあれば、これを黙って見過ごすことは稀です。相手が上司であれ「これはおかしい、受け入れられない」と主張します。そして、家庭には、日本の男性の3倍もの時間を家業に費やす男性がいます。 このようにフランス人社会の根っこは、日本人社会のものとは大きく異なります。同国では、こうした根っこを前提に、男女ともに安心して働き、子どもを産み育て、長い休暇を楽しめて、ワークライフバランスが取れる社会と経済づくりが行われているのです。 従って、日本もこうした国と目指す方向は同じとしても、まずは自分たちの根っこの特質をしっかり認識する。そして、これを十分に考慮に入れた施策をもって、女性が輝く社会づくりを進めるべきでしょう。
|