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東京に長屋が急増?頻発する地域住民とのトラブル、災害時には高い危険も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140510-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 5月10日(土)3時0分配信
周りを民家に囲まれ、主要道路から奥まった場所にできた「路地状敷地」の有効活用として重層長屋が東京・世田谷区を中心に数多く建設されている。本来、安全上の問題から、路地状敷地に共同住宅は建設できないが、東京都建築安全条例では「長屋」であれば見た目が共同住宅と変わらなくても建設が許可される。一方で、近隣とのトラブルも相次いでいるという。重層長屋がある近隣住民は、「共同住宅とまったく同じ構造の重層長屋が火災になったら、周辺が火の海になる恐れがある」と懸念している。
路地状敷地とは、間口が狭く、通路のように長い路地状の敷地部分の奥に建物のスペースがある敷地のこと。上空から見ると旗ざお形状の土地になっているため、別名「旗ざお地」ともいわれる。
そもそも建築基準法では、民家に四方を囲まれている住宅地を分割する場合、各土地は道路に2m以上接していなければならないとされている。そのため、道路から奥まった所にある敷地は道路までの通路を確保するため、路地状敷地が形成される。しかし、火災時などの避難に支障が生じやすいために、東京都建築安全条例で、マンションなどの共同住宅を建てることが禁じられている。
●格安で購入できる路地状敷地
共同住宅が建てられないのであれば、個人宅を建てるほかに利用価値のない土地のはずであるが、ここ数年、路地状敷地が不動産業界でにわかに注目を集めているという。世田谷区にある不動産業者は、路地状敷地が市場に増えている理由を「相続税対策のためだ」と分析する。
「相続税対策として土地を手放す人が増えています。世田谷区の場合、広い敷地を持つ人が多く、敷地の半分を売る場合が多い。そうすると、路地状敷地が市場に出回ることが増えるのです」(同)
2013年度の税制改正で、15年1月1日以降に発生する相続税の基礎控除額は5000万円から3000万円に、法定相続人1人当たりの控除額は1000万円から600万円にそれぞれ引き下げられる。つまり、相続税の増税時代に突入するといえる。それによって、来るべき相続税対策として土地を手放す人が増えているという。
一方、買い手目線で見ると、路地状敷地は使い勝手が悪いことから、普通の土地に比べて格安で購入できる。不動産業界では、路地状敷地は「くず地」とも呼ばれ、建築制限があるために避けられてきたが、こうしたくず地が格安である状況に不動産デベロッパーが目を付けた。路地状敷地のオーナーには「くず地ですから、売ったほうがいいですよ」と働きかけて安く買っておいて、土地購入希望者には「高級住宅地」をアピールして買い取りを持ちかける。加えて、共同住宅は建てられないが、長屋であれば建築可能であると提案をするわけだ。
●共用部分がなければ、実質的な共同住宅も建築可能
一般的に長屋といえば平屋をイメージするが、2階建て以上の長屋も少なくない。集合住宅は長屋とマンションなどの共同住宅とに分けられるが、その区別は廊下や階段などの共用部分があるかどうかだけで、共用部分がなければ長屋となる。
そもそも建築の憲法ともいうべき建築基準法には、長屋の定義すら存在しない。ただ、東京都建築安全条例第10条には、「特殊建築物は、路地状部分のみによって道路に接する敷地に建築してはならない」と明記されており、この特殊建築物にマンションなどの共同住宅は含まれるが、長屋は含まれないという解釈になっている。高さ制限を除けば、理屈の上では50階建てであっても問題なしとして扱われる。長屋は共同住宅とは異なり、それぞれ独立した1階の玄関から直接避難できるために、建設を許されている。
共用の廊下や階段、エレベーターがなく、すべての住戸が1階にあり、縦に連なる長屋のことを「重層長屋」と呼んでいる。2〜3階建ての長屋が都内各地に建設されている。
本来建つはずがない共同住宅と同等の建物を敷地面積いっぱいに建てることができるわけであるから、重層長屋を建てる事業者が飛びつくのもうなずける。数年前からアパート投資に関する手引き書がいくつか販売され、しかも世田谷区が狙い目の土地であると紹介されたことで、重層長屋が世田谷区に集中している。
●重層長屋は、火災時に被害拡大の危険
だが、そういった状況の中で、近隣住民との摩擦も目立ってきている。
世田谷区にある重層長屋の近隣住民は「初めて見た人は誰でもマンションだと思いますよ。それを共用の廊下や階段を有しないだけでマンション同等の建物が建設されるなんて、納得ができません」と憤る。
近隣住民が何よりも心配しているのは、重層長屋で火災が起きたらどうなるのかということだ。そもそも路地状敷地に共同住宅が建てられないのは、火災などで入居者や周辺住民の安全が確保できないからだ。それは構造が同じである重層長屋も変わらないはずだ。むしろ長屋は、避難口を2カ所設けなければならない共同住宅と違い、一方にしか通路がないため、避難するのが困難になり、災害時はパニック状態になることが考えられる。むしろ共同住宅よりも火災時は危険が付きまとうのだ。また避難通路の幅が狭く、消防車も中まで入れないことで、当然、消防活動も不十分になり、火災が周辺に拡大する恐れもある。
路地状敷地において重層長屋の建設で近隣住民とのトラブルが頻繁に起こっていることを受けて、東京都都市整備局が調査したところによると、09年4月から12年3月末に建築確認を取得した延床面積300平米以上の路地状敷地における長屋は、東京都全体では毎年20%増の勢いで急増し、その数は368件に及ぶ。中でも世田谷区は51件と、ほかと比べて突出していることが明らかになっている。練馬区20件、足立区19件、江戸川区17件、八王子市16件、中野区16件、杉並区15件と比べても世田谷区は群を抜いている。
●法整備等の対策が急務
東京都は、路地状敷地に建設された重層長屋に問題があることは認識している。12年2月6日には特定行政庁に向けて、建築確認時に通路の有効な幅の確保やロフトで居室転用がないかなどを確認し、建物が違反している場合は是正指導を行うことを文書で通達している。
しかし、東京都は「現在のところ安全条例の改正はない」とのことだ。
東京都はいずれ来るであろう直下型地震とそれに伴う大火災に備え、「木密地域不燃化10年プロジェクト」を動きださせている。路地状敷地の重層長屋を放置することは、東京都が推し進める災害対策に逆行している。路地状敷地で共同住宅を規制しているのは、火災があった時に危険だからであり、建物構造がなんら変わりない重層長屋も規制されるべきという近隣住民の声は至極当然といえる。
しかし、すでに問題は各地に拡散している。世田谷区や文京区などで建築確認取り消しの採決が下され、新築工事がストップしているケースがあるという。例えば、新宿区下落合のタヌキの森と呼ばれる屋敷跡に建設された重層長屋について、09年12月に最高裁で「災害や火災時の安全性が不十分」として、建築確認の取り消しの判決が下され、完成間際の建物がそのままの状態になっている。
法整備をするなど、早急に手を打たなければ、このままでは各地の路地状敷地に重層長屋が拡散する恐れもある。
藤池周正/ジャーナリスト
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