02. 2014年5月16日 16:49:53
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http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304408504579565023659003350?mod=WSJJP_hp_LEFTWhatsNewsCollection カリフォルニアに愛想尽かしたトヨタBy HOLMAN W. JENKINS, JR. 原文(英語) 2014 年 5 月 16 日 14:02 JST トヨタのHV「プリウス」の横でポーズを取るコメディアンのラリー・デービッド氏(右)と当時の妻で環境活動家のローリー・デービッド氏(2000年代半ば) David Tsay/Corbis カリフォルニア州の一部メディアのだまされやすさは笑えるほどだ。米国本社を5000人分の雇用とともにテキサス州ダラス郊外に移転するというトヨタの決断は、カリフォルニアのビジネスや政治環境を反映したものでは決してないとする主張だ。 トヨタの北米事業を統括するジム・レンツ氏はロサンゼルス・タイムズ紙に「カリフォルにアに本社を置かない理由は地理的なものだ」と強調した。 もちろんカリフォルニアから立ち去る真意はトヨタにしか分からない。現在米国で販売されているトヨタ車のほとんどはミシシッピやテキサスなどの国内で生産されており、もはやロングビーチ港経由で輸入されているわけではない。しかし、トヨタの顧客はカリフォルニアに偏在している。その代表的なハイブリッド車(HV)「プリウス」については特にそうだ。それに、他の企業は人員をさまざまな場所に拡散させる方が有益だと判断している。ボーイングは1000人分の技術職をシアトルからロングビーチに移したばかりだ。 本社を置く場所としてはともかく、自動車生産地としてのカリフォルニアへのトヨタの態度は過去にもきっぱりと表れている。トヨタは2009年、フリーモントのGMとの合弁組立工場を維持することを拒否した。ビル・ロッキャー州財務官率いる特別委員会をはじめ、カリフォルニアの政治家から容赦ない圧力を受けたにもかかわらずだ。本社をテキサスのような共和党色の強い州に移転したことは象徴的な行為かどうかは分からない。しかし、トヨタがカリフォルニアの政治にほとほとうんざりする理由は他にもいくつかある。 1つはヘンリー・ワックスマン上院議員だ。09年、代車として使用していたレクサスの悲惨な事故で4人が死亡した。サンディエゴのディーラーは、その代車の前の使用者からフロアマットがアクセルペダルに引っかかることを警告されており、不運とも言える事故だった。ワックスマン議員はこの全米に報道された悲劇を下院公聴会のお膳立てに利用し、別の全く異なる欠陥について詰問した。電子システム上のバグで車が暴走する事態が生じていると主張したのだ。ワックスマン氏の公聴会は進行中だったが、米政府はトヨタ車の事故は「ペダルの設置ミス」が原因であることを示す証拠を積み上げていた。電子的欠陥は発見されなかった。バグ原因論は訴訟弁護士の間でだけ支持されており、ワックスマン議員の取り組みの背後にそれら弁護士の利害があったことは明白だ。 さらに、やはりカリフォルニアを地元とするロサンゼルス・タイムズ紙がサンディエゴの悲劇を独自の「調査」で追跡取材し、苦情データの短絡的な分析を基に電子的欠陥を主張した。トヨタは同社史上最も深刻で費用の高くついたスキャンダルで基本的にカリフォルニアの重要な指導者や組織の餌食にされたようなものだ。しかし、彼らは自分たちの過ちを認めるどころか、内省さえせず、当事者間でいまだにこの職業的な腕前をたたえ合っている。 そしてもう1つが、カリフォルニア大気資源委員会(CARB)だ。トヨタはガソリンと電気を利用したHVを成功させた草分け的存在。しかし、トヨタはカリフォルニア最大の自動車ブランドとして、州内でのゼロ排出車(ZEV)の一定比率の販売を義務づける空虚な規制によって、最も多額のコストを負担することにもなっている。つい先週、トヨタがテスラとの3年間の契約を静かに終わらせる計画であることが明らかになった。この契約はトヨタの小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「RAV4」の電気自動車(EV)版2600台の部品をテスラから調達するというもの。テスラの各種文書によると、部品の開発・供給のためにトヨタが負担する費用は1億6000万ドル(約160億円)と見込まれていた。1台当たり6万1000ドル以上だ。 RAV4のガソリン車の値段は2万5000ドル前後。EVモデルの1回の標準的な充電での走行距離はわずか92マイル。この実質ハンドメイドの「規制順守車」が、5万0610ドルというかなり譲歩した価格がつけられているにもかかわらず、売れ行きが芳しくないのも不思議ではない。2年たってもまだトヨタは来年9月までに義務を達成するために、多額の損失をのんで1000台をEVにシフトしなければならない。 RAV4のEVモデルは途方もなく高い。その一因は、豊田章男社長がここ20カ月でEV車開発プロジェクトを直接主導し、盛り上げてきたことにある。アクセルペダルの欠陥問題が突発するなか、テスラに有益な恩恵を与える見返りに、カリフォルニアの政治家が多少は愛情を示してくれることを豊田氏が期待していたのは明らかだ。その恩恵には、テスラへの直接出資や巨大なフリーモント工場の魅力的な条件でのテスラへの譲渡なども含まれていた。しかし、目立った形で愛情が示されることはなかった。一方、ZEV規制は見え透いたまねごとの温暖化対策にほかならない。 リチウムイオン電池パックの製造と継続的な充電コストを加味した場合、EVの排出抑制効果は誇張されている。液体水素燃料電池車については間違いなくそうだ。液体水素燃料電池車はカリフォルニアの規制でEV以上に大きな恩恵を受けている。また、トヨタは規制順守コストを引き下げようと液体水素燃料電池車に力を入れている。ZEV規制は排気管からの排出のみに配慮し、全体的な環境効果は無視している。なぜなら、そうすることで宣伝になるような自動車の導入が促され、政治家は環境に配慮するイノベーターとして振る舞うことができるからだ。 当然ながら、トヨタはカリフォルニアで車を売り続けるために、この皮肉に参加し続けるだろう。カリフォルニアの指導者たちは無思慮の権利意識をかざして業界資本を偽りのポーズに無駄に費やしている。しかし、そうした権利意識に自動車メーカーの経営者が嫌悪感を抱かずにいられるはずはない。少なくともトヨタとカリフォルニアが思い描くものは今や異なっている可能性がある。トヨタがテキサスにピックアップトラック工場を建設したのは米国の非都市部に近い場所に拠点を置きたかったからだ。全米自動車競争協会(NASCAR)に加盟したのも同じ理由だ。米国本社のカリフォルニアからの移転が何を象徴するかをトヨタが慎重に考慮しなかったと思い描いているのであれば、トヨタを分かっていないということだ。 関連記事 【社説】テキサス州に逃げるトヨタ トヨタ移転に困惑する米加州トーランス―ダラス郊外は好条件満たす トヨタ、テスラからの電池調達を年内打ち切りへ 【社説】テキサス州に逃げるトヨタ 原文(英語) 2014 年 5 月 5 日 14:48 JST Reuters 今年の施政方針演説で回復を高らかに宣言し、各地を遊説していた米カルフォルニア州のブラウン知事は、先週トヨタ自動車が北米販売の拠点を同州トーランスからテキサス州ダラス近郊のプレイノに移転させると発表したことで冷や水を浴びせられた。トヨタの決断は、米南部の州が商工業面でカリフォルニアを追い越しつつあることを物語っている。
トヨタは販売の拠点に加え、3000人分の専門職をダラス郊外に移転させ、業務の集約と効率化を図る計画だ。トヨタが1957年に最初の事務所をロサンゼルスに開設したのは、そこがカリフォルニア州南部の主要港に近かったからだ。だが現在、トヨタが米国で販売している車両のほとんどは北米、特に南部で生産されているため、港への距離はあまり重要ではなくなった。 関連記事 トヨタ移転に困惑する米加州トーランス―ダラス郊外は好条件満たす テキサス州、1人1万ドル助成金―トヨタ北米事業移転 トヨタ、米販売部門再編へ 日産自動車は2006年にトーランスの北にあるガーデナからテネシー州フランクリンへ拠点を移転した。カルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)はテネシー州のコストの安さをその理由に挙げている。テキサス州はトヨタに移転費用の補助として4000万ドル(約41億円)を約束しているが、北米事業を統括するジム・レンツ氏は補助金が動機になったわけではないと強調している。同氏はテキサス州を選んだ理由として、法人に優しいビジネス環境、トヨタの他の事業拠点から近いこと、2つの大きな空港、それに手頃な住宅価格や個人の所得税がかからないことなど生活面での利点を挙げている。 俯瞰(ふかん)的に見れば、テキサスの経済的な競争力が高まった一方で、カリフォルニアの競争力が落ちてきた構図が浮かび上がる。とりわけエネルギー関連や労働集約型の産業でその傾向が強い。 まず、米南部の州では労働組合の組成が法律により制限されてきたため、労働コストが安い。テキサスでは労働者のわずか4.8%、テネシーでは6.1%しか労働組合に加入していない。一方、カリフォルニアでは16.4%だ。また南部の不動産価格は安い。土地の開発や利用が制限された規制区域や環境規定が少なく、税率も低い。シンクタンクのタックス・ファンデーションによると、カリフォルニアで課せられる税金は、個人所得税を課さないテネシーやテキサスより50%強多い。カリフォルニアの累進課税の最高税率13.3%は米国で最も高い。 電気料金も再生可能エネルギーの買い取りを義務化しているカリフォルニアの方が南部よりも約50%高い。ガスについてもガロン当たり70〜80セント、カリフォルニアの方が高い。税率と調合要件が異なるためだ。 化石燃料への抵抗感を背景に、カリフォルニアの石油生産高は1985年につけたピーク時の半分に落ちた。一方、テキサスの石油生産高はこの3年で2倍になり、収入が増えた。米商務省経済分析局(BEA)によると、最も個人所得の伸びが大きい都市圏のランキングで、テキサス州ミッドランドが3年連続で首位となっている。隣接するオデッサは2年連続で次点だ。2008年から12年の間の個人所得の伸びは、ミッドランドが8.05%、オデッサが6.98%だった。一方、カリフォルニア州サンノゼは4.48%で、ロサンゼルスは1.81%だ。オデッサの3月の失業率は3.2%だったが、サンノゼは6.8%、ロサンゼルスは9.7%だった。 カリフォルニアの停滞が最も典型的に表れている都市はロサンゼルスだ。冷戦後に航空産業が段階的に縮小されてきた同市はいまだにその落ち込みから回復していない。1990年代以降、労働人口は3.1%減少したが、これはミシガン州デトロイトの2.8%減を上回る。一方でテキサスのダラスやヒューストン、サンアントニオでは同じ期間に50%を上回る伸びを記録した。 ロサンゼルスの独立系のシンクタンク「ロサンゼルス2020委員会」が昨年発表した報告書によると、1980年から2010年の間に住民数は100万人増えたが、雇用は16万5000件減少した。同委員会はミッキー・カンター氏やグレイ・デービス氏、ヒルダ・ソリス氏など、民主党の重鎮たちが名を連ねている。同市の貧困率は17.6%で、米国のどの主要都市よりも高い。報告書は、同市では「(ブラジルの)サンパウロのような典型的な発展途上の街」でみられる「バーベル」経済が発展したと指摘した。つまり、「所得階層の一番上と一番下が成長し、中間層が年々縮小する」状況だ。 これは中間層の雇用を生み続ける産業基盤が崩壊したことによる結果だ。2011年に防衛大手ノースロップ・グラマンは同市のセンチュリーシティからバージニア州ウエストフォールズチャーチへ拠点を移転した。軍需大手レイセオンもエルセグンドからテキサス州マッキニーへ宇宙航空事業を移転したばかりだ。 2011年以降、タイタン・ラボラトリーズやゼリス・ファーマシューティカルズ、スーパーコンダクター・テクノロジーズ、パシフィック・ユニオン・フィナンシャル、メドロジックスを含む二十数社がテキサス州へ移転した。ロクやパンドラ、オラクルといった十数社はテキサス州で事業を拡大した。テクノロジー関連の業界団体が運営する非営利のテクアメリカ・ファンデーションによると、2012年にテキサスから輸出されたハイテク関連製品の輸出高はカリフォルニアのそれを上回った。パナマ運河の拡張が来年完了すれば、カリフォルニアにまだ残っている競争力が一段と低下することになろう。 シリコンバレーは活況を呈していると指摘する人もいるだろう。確かにその通りだが、成長に沸き立っているわけではない。セントラルバレーでは失業率が13%を超え、南カリフォルニアのインランド・エンパイアでは9.4%、さらにウエストサイドの粋な地区とオレンジ郡を含むロサンゼルス大都市圏では8%だ。一方、テネシー州ナッシュビルの失業率は5.4%で、ダラスは5.3%だ。 再選を狙っているカリフォルニアのブラウン知事は、同州の中間層の雇用を生み出す企業が逃げ出していることをさほど気にしていないように見える。知事は4月28日、「(同州には)いくつか問題があり、ちょっとした負担や規則、税金が多い」とした上で、「だが、賢明な人間はうまくやっている」と述べた。カリフォルニアの問題はその賢明な人間が、よそに出た方がもっと、うまくやれると判断しているところにある。 |