http://www.asyura2.com/14/hasan87/msg/533.html
Tweet |
アジア金融、日中綱引き 開発銀総会が閉幕
日本、増資棚上げで権限維持 中国、新投資銀で揺さぶり
【アスタナ(カザフスタン北部)=中村亮】5日閉幕したアジア開発銀行(ADB)年次総会で、アジアの新興国向けの開発金融で日本と中国が綱引きする構図が浮かび上がってきた。日米が主導してきたADBは総会で中国の議決権拡大につながる増資を事実上棚上げした。これに対し中国はADBとは別にインフラ投資銀行を設立する構想まで打ち出し、勢力拡大を狙う姿勢を鮮明にしている。
「たくさんのサポートが得られた」。5日記者会見した中尾武彦総裁は改革への手応えをこう語った。ADBはアジアの発展途上国に開発資金を貸し出す国際金融機関。1966年の創設以降、総裁は日本の旧大蔵省、財務省、日銀のOBが9代連続で務めてきた。
出資比率を批判
今回の総会では2017年までにADBの融資枠を2割増の150億ドルとする一方、加盟国に増資は仰がず、財源は債券発行を増やして賄う方針を表明。低所得国の融資にあてるアジア開発基金も17年からはADB債の受け皿となる財源に統合する。1973年にできた基金の再編は融資政策の大改革になる。
麻生太郎財務相は4日の講演で改革案を「革新的なアイデア」と指摘。真っ先に賛成を表明した。財務相は昨年の年次総会で増資に否定的な見方を示しており、最大の出資国の日本にとっては思惑通りの結果。一方、中国は不満をぶちまけた。
「ADBが資本の不公平問題に取り組むことを期待する」。中国の楼継偉財政相は講演で現在の出資比率を批判し、追加出資に積極的な姿勢を強調した。比率はADB内の議決権に直結する。中国は6.4%で、最大の日米(ともに15.6%)との差は大きい。増資で議決権が増えれば、ADBの融資に中国の意図を反映しやすくなり、他のアジア新興国への影響力を強めることにもなる。
だが「中国の発言権が拡大する増資に先進国が同意するのは難しい」(ADB幹部)。先進国は厳しい財政事情をかかえ新たな負担には後ろ向きだ。加盟国が議決権を変えないような追加出資の配分で足並みをそろえるのも難しい。
総裁ポスト狙う
中国は今秋、アジア向けのインフラ投資銀行を立ち上げ、ADBに揺さぶりをかける。年間融資額が500億ドル級の巨大銀行が誕生する可能性があり、新興国からは「大歓迎」(スリランカ財政計画省)と早くも支持が集まる。
「良い銀行にはいろんな要素が必要だ」。中尾総裁は中国のインフラ銀の取り組みを歓迎しつつも、ADBの「豊富な実績」を強調するのも忘れない。たとえば債券の格付け。先進国が出資するADBの格付けは最高のトリプルAだが、中国のインフラ銀は新興国の出資が大半になる見通し。格付けが低ければ資金調達コストが上がり、借り手のメリットは下がる。
中国がADB総裁のポストを狙っているとの見方も根強い。麻生財務相は中尾氏が総裁に立候補した時、日本以外の候補者がいなかったことについて「中国は対応ができていなかった」と指摘。中尾氏の任期末は16年11月。日本の「指定席」を巡っても、駆け引きは激化しそうだ。
[日経新聞5月6日朝刊P.3]
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。